【完結】后狩り

音羽夏生

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侍童

10

 ユングリングの者としての立場を思い出し、そのような晴れがましいお役目は辞退すべきと我に返る。束の間の喜びを、痛みとともにそっと脇に押し遣りながら、シェルは控えめに答えた。
 しかし、皇太子はにべもない。

「侍従、大公の名代、学友。三役も務まるじゃないか。父上が目覚められたら、そのことを願い出るつもりだ」
「ですが、私には陛下の侍童のお役目がございます」
「だから、巡察の褒美を願い出るつもりだと言っている。父上のお許しがあれば、今日からお前は俺の侍従だ。もう二度と、装飾品のようにゴテゴテした、身に合わぬ衣装は着なくていい」

 皮肉気に付け足された言葉には蔑みが感じられたが、突然転がり込んだ幸運に胸を詰まらせるシェルを傷付けることはできなかった。
 皇太子付き侍従の務めがどれほど重かろうとも、ミレニオで学ぶ皇太子に随行できるなら耐えられる。──憧れ続けた母の故国に行けるなら。
 その日、王の許しの下、シェルは華美な侍童服を脱いだ。
 代わりに与えられた皇太子の侍従服は、活動的で無駄を嫌う皇太子の意向を反映し、機能的でありつつも細部まで上品な意匠が凝らされている。緊張しながら袖を通すと、自然と背筋が伸びた。
 皇太子が、ユングリング家の嗣子を侍従――専属の使用人としたことに、皇宮では様々な憶測が囁かれたが、それは概ね、このようなものだった。
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