后狩り

音羽夏生

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入宮

21

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「……エーヴェルト様……」
「やさしくするから、案ずるな。――うつ伏せになって、猫のように這え」

 こくりと喉を鳴らし、シェルは覚悟を決めた。
 光り輝く新帝の未来のために、取るべき道は一つしかない。

「どうか、お聞き届けくださいませ。――すべて仰せのままに従います。この身を男妾としてお望みなら、お召しがあればいつなりと参上いたします。ですから、男を皇后に立てることだけは、どうぞお考え直しを……!」

 身を捧げての、心からの忠言――懇願だった。
 しかし皇帝は顔色も変えず、駄々っ子をあやす声音で、后と定めた者に言い渡した。

「お前の忠誠はいつも俺を甘やかし、敬愛の眼差しを一途に注がれるのは心地好かったが、それだけでは足りない。忠誠や敬愛では満たされない。――それ以上のものを所望する」

 心を込めて仕えた主に所望されるなら、何なりと捧げたい。しかし皇帝が望むものを、シェルは持たなかった。
 皇帝の御名を貶める、男の皇后となる覚悟など。

「それに、もう二度とシェルを苦しませないと誓った。后として側に置き、お前の苦しみの元は俺が取り除く」
「エーヴェルト様の御名に瑕がつけば、私は永遠に苦しみます」
「その苦しみは、シェルの執着が生み出すものだ。俺を愛していなければ、お前は苦しまないはずだ」
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