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悪童の流儀(3)
(6)
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デュシュッド氏に、ケイリー伯爵邸での押し潰されそうな日々、悲しみと虚脱感に塗りつぶされた母の死の記憶を揺り動かされ、何年も蓋をして見ないことにしてきた傷がぱっくりと開いていた。常にはなく弱っていたところに、たまたますべり込んできたジェイムズの言葉に縋っただけかもしれない。今その腕に包まれ感じている温もりも、嵐が過ぎ去ってしまえば、熱に浮かされて見た幻になるのかもしれない。
(この温もりに安易に浸れば、わたしはジェイムズを裏切ることになる…?)
――では、ジェイムズを何とも思っていないのか?
いくら旧友でも、体の自由を奪われていても、唇を重ねて体を繋げ、お互いの熱を伝える行為に溺れることができるのだろうか――何とも思っていない相手に。決して認めたくはないが、もし自分の体が淫奔な性質を隠し持っていたのだとしても、本当に受け入れがたいことであれば、生理的嫌悪感から嘔吐してもおかしくはない。何一つ隠すことを許されない、原始的で生々しい行為だ。
それを結果的に、自分は、自分の体は悦んで受け入れた。
――答えはどこにも見当たらない。自分がわからない。
(この温もりに安易に浸れば、わたしはジェイムズを裏切ることになる…?)
――では、ジェイムズを何とも思っていないのか?
いくら旧友でも、体の自由を奪われていても、唇を重ねて体を繋げ、お互いの熱を伝える行為に溺れることができるのだろうか――何とも思っていない相手に。決して認めたくはないが、もし自分の体が淫奔な性質を隠し持っていたのだとしても、本当に受け入れがたいことであれば、生理的嫌悪感から嘔吐してもおかしくはない。何一つ隠すことを許されない、原始的で生々しい行為だ。
それを結果的に、自分は、自分の体は悦んで受け入れた。
――答えはどこにも見当たらない。自分がわからない。
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