41 / 106
第七話 前編
臼井と亀田と栗原の作戦 5
しおりを挟む翌日、また犬神絵美は白いジープに乗って現れた
そして、臼井誠は停車中の白いジープの助手席に乗せられ、犬神絵美と亀田留衣は公園のベンチに座って話をしている
エンジンを切った車内は静かで、何を話したら良いか分からない臼井誠は、小さくなった状態で景色を見つめる
運転席の男はベンチの二人を眺めながら口を開いた
「臼井さんって名前でしょ?」
「あ、はい、臼井です。よろしくお願いします」
「いや、年下なんで敬語は辞めてくださいよ」
男は笑いながら答え、犬神絵美も年下なのか?と初めて気にした
「俺、栗原優(くりはら すぐる)って言います」
サングラスで視線が分からなかったが、微笑みながら握手を求められたため、臼井誠は素直に応じた
「あの、犬神さんとは付き合ってるの?」
「まさか、そんな関係にはなれないっすよ」
「そうなんだ。よく送迎してるみたいだから、なんなら同棲してるのかと思って」
栗原優は手を叩いて笑い「一服して良いっすか?」と言って、キーを軽くまわした後、窓を開ける
煙草に火をつけて、大きく吸い込み吐き出す
「俺は絵美っちの足みたいな存在で、送迎は勿論、ストレス発散の為にドライブへ連れて行くこともありますよ。けど、恋愛関係には発展しないっすね。そういう感情で友人として付き合ってるわけじゃないんで」
「僕にはよく分からないな。恋愛感情もないのに、いつも世話してあげようなんて」
「あるんすよ、恋愛以外で動く感情。俺は絵美っちを妹のように見てます。同い年ですけど、凄くワガママで放っておけないじゃないっすか、あの子。だから悪い男に引っかかってないか、とか悩んでないか、とか色々気になってて。だから送迎は自分が絵美っちを守れる最大の方法です。車しかないで。まあ、絵美っちは俺を他の男のように、何か下心があると思ってるかもしれないっすけど、全く無いです。俺、好きな子がいるんで絵美っちは論外!」
栗原優はまた笑った
話を聞いた後だと立派な男に見えて、自分の年上のようだ
「絵美っちの恋愛面とか男女関係については、俺の入る範囲じゃないんで、相談されたらって感じっすね。一応、絵美っちは借りたものは必ず返すタイプなんで、ガソリン代は毎月貰ってます。これで俺らは貸し借り無しの関係ってことにしてます。あとは気持ちの問題です」
犬神絵美と亀田留衣を見る
2人はまだ真剣そうに話をしていた
「臼井さん、俺は一人っ子なんで兄弟に憧れてきました。妹は絵美っち、なんで、臼井さん、俺の兄貴になってくれません?」
「兄貴!?今日話したばかりなのに?」
「はい、時間なんて関係ないっすよ。頼りなさそうな兄貴の方が、弟は活躍の場が増えるんで」
冗談なのか本気なのか、浅い関係すぎて分からない
臼井誠も一人っ子だが、こんな弟がいたらどんな感じだろうか、とちょっと想像してしまう
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
竜華族の愛に囚われて
澤谷弥(さわたに わたる)
キャラ文芸
近代化が進む中、竜華族が竜結界を築き魑魅魍魎から守る世界。
五芒星の中心に朝廷を据え、木竜、火竜、土竜、金竜、水竜という五柱が結界を維持し続けている。
これらの竜を世話する役割を担う一族が竜華族である。
赤沼泉美は、異能を持たない竜華族であるため、赤沼伯爵家で虐げられ、女中以下の生活を送っていた。
新月の夜、異能の暴走で苦しむ姉、百合を助けるため、母、雅代の命令で月光草を求めて竜尾山に入ったが、魔魅に襲われ絶体絶命。しかし、火宮公爵子息の臣哉に救われた。
そんな泉美が気になる臣哉は、彼女の出自について調べ始めるのだが――。
※某サイトの短編コン用に書いたやつ。
【完結】『左遷女官は風花の離宮で自分らしく咲く』 〜田舎育ちのおっとり女官は、氷の貴公子の心を溶かす〜
天音蝶子(あまねちょうこ)
キャラ文芸
宮中の桜が散るころ、梓乃は“帝に媚びた”という濡れ衣を着せられ、都を追われた。
行き先は、誰も訪れぬ〈風花の離宮〉。
けれど梓乃は、静かな時間の中で花を愛で、香を焚き、己の心を見つめなおしていく。
そんなある日、離宮の監察(監視)を命じられた、冷徹な青年・宗雅が現れる。
氷のように無表情な彼に、梓乃はいつも通りの微笑みを向けた。
「茶をお持ちいたしましょう」
それは、春の陽だまりのように柔らかい誘いだった——。
冷たい孤独を抱く男と、誰よりも穏やかに生きる女。
遠ざけられた地で、ふたりの心は少しずつ寄り添いはじめる。
そして、帝をめぐる陰謀の影がふたたび都から伸びてきたとき、
梓乃は自分の選んだ“幸せの形”を見つけることになる——。
香と花が彩る、しっとりとした雅な恋愛譚。
濡れ衣で左遷された女官の、静かで強い再生の物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる