Change the world 〜全員の縁を切った理由〜

香椎 猫福

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第十話 後編

立花と犬神 5

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まさかの事態が起きた
猿渡慎吾の事務所が見え、車を事務所前に止めようとハザードを灯して減速した時、事務所から猿渡慎吾が出てきた
そのまま事務所前へ車をつければ接触できるタイミングだったが、ここでアクシデントが発生する
まず、猿渡慎吾の靴紐がほどけた
しゃがみ込んで靴紐を結ぼうとした時に立花桃の車が真横に到着する
しかし、猿渡慎吾の側を、どこにスタンバイしていたのか、外国人観光客の集団が横切り姿が見えなくなった
そして次の瞬間、罵声が聞こえる
観光客と猿渡慎吾が言い合いを始め、どこに隠れていたのか、すぐに二人の警察官がかけつけてきた
猿渡慎吾と観光客と警察官達がもめてる光景を、助手席側の窓を通して注視していた立花桃に対して運転席側の窓が叩かれる
これまたどこに隠れていたのか、一人の警察官が立っていた
窓を開けると、車を動かすように告げられる
渋々退く羽目になり、とりあえず区画を一周してすぐに猿渡慎吾の居場所まで戻ろうとしたが、車のタイヤがパンクする


「…何これ」


思わず、愚痴が溢れる
エキストラで無理矢理に掻き乱させたコメディ映画のようなだった
大通りの路肩に再びハザードを灯して止める
片側だけパンクした後輪を見つめながら立花桃は立ち尽くした
これが能力?馬鹿みたい
ただツキを奪われただけとしか考えられない
風宮神楽が貧乏神のように思える
溜息を吐いて、とりあえずJAFを呼ぼうと助手席のダッシュボードを探っていると「大丈夫ですか?」と声を掛けられた
潜っていた体を車から出して顔を上げて見る
若い男が心配そうに、立花桃とパンクした後輪を見比べていた
この時、立花桃は胸の辺りが締め付けられるような感覚に陥り、自分の顔が熱くなっていくのが分かった
やばい、タイプだ
すぐに自分の身だしなみやメイクを気にして、前髪を整えるように触りながら「パンクしちゃって」と答えてみたが、声が浮ついていた
駄目だ、緊張がバレてしまう
若い男は同情するように視線を向けてくるが、立花桃はすぐに視線を逸らした
逸らす直前、男の二の腕や太もも辺りをさり気なく確認していた
やはり、タイプだ
ただ、普通に応対すればいいところを、まるで意識しているような態度に恥ずかしくなり、変な汗をかき始める
近くにいたらバレるかも、この離れた距離を保とう
大通りで人や車は多いが、立花桃は周囲の雑音が気にならなくなっていた
視界のピントは限定され、他がボヤけている
ハッキリ見えているのは、自分の車と目の前の若い男、そして、その男の車と思われる白いジープ


「救援は呼びましたか?」


「これから、呼ぼうと思って」


「大通りだから追突される危険があるので、救援が来るまで俺の車で後ろを守っておきますよ」


「そんな、申し訳ないです。そちらの予定に迷惑かけてしまうので」


「今は予定も無いので大丈夫です」


「今は?」


「まあ、急に呼ばれる事があるので…それまでは」


「お仕事ですか?」


「あ、いや。俺はまだ学生です」


年下!?
立花桃は、自分が男の恋愛対象の範囲に入るか心配になる
学生っぽさは確かに見受けられるが、乗っている車に学生らしさが無かったせいだ
まあ、何はともあれ、女子トークの相手を見つける前に、早くもトークネタが出来た
誰かに話したくてたまらない
とりあえず、立花桃はパンクを直すまでの間、側にいてもらうことをお願いする
こんな機会を早々と過ごすわけにはいかない
区画の反対側でコメディ映画のように能力のせいで騒いでいる猿渡慎吾のことを忘れ、立花桃は恋愛映画のような本物の偶然を楽しんでいた
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