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第十三話 後編
それぞれの決着 6
しおりを挟む病院を出た後、駐車場へ向かいながら犬神絵美と栗原優は辺りを警戒していた
猿渡慎吾たちがまだ近くにいるかもしれない
「俺らが臼井さんの病室へ戻ってる最中、猿渡たちに遭遇しなかったよな」
「そうね。退院の手続きをしてたからロビーは通ってるみたいだけど…もしかしたら、私たちの姿を見て隠れたのかもね」
「たださ、腑に落ちない点があるんだよ」
「何が?」
「立花さんの能力。限定されてるって言ってただろ?二人だけ。その内の一人は猿渡らしいじゃないか。それなのに、立花さんと猿渡は接触してしまったことになる」
しばらく、二人は黙ってしまった
この不可解な謎に頭を悩ませていた
駐車場に停めていた白いジープに乗り込む
エンジンをかけたところで、犬神絵美が口を開く
「私たちが勘違いをしてるって可能性は?」
「それは…立花さんが連れ去られてないってこと?」
「うん…八峰さんが今日、退院手続きをしたことは間違いない。で、その周りにいた男たちと女性って、まだハッキリしてないでしょ?」
「確かに、俺らが勝手に立花さんと猿渡が一緒だと決めつけてるのかもな…」
「八峰さんの行動の意味は分からないけど、ここを離れる前に確認するべきかも。私、病院に戻る」
そう言って、犬神絵美は車から飛び出し、走って病院へ戻って行った
栗原優は追いかけることなく、待機する
犬神絵美の姿が見えなくなり、表通りに視線を向ける
あれだけ渋滞していた車列は無くなり、とてもスムーズに車が走っている
ふと、病室内で八峰華澄と会話したことを思い出した
その時に、猿渡慎吾には知られたくない話を持ちかけていたことに気が付く
「しまったなあ…」
思わず片手で頭を掻きむしってしまう
ただ、犬神絵美の確認で、一緒に退院した人物の中に猿渡慎吾が居なければ問題はない
そう考えてみても、次々に不安要素がやってくる
厄介なパズルだ、と栗原優が深いため息を吐いていると、犬神絵美が戻ってくる姿があった
そして、それとすれ違うように、スーツを着た男が二人、病院内へと入っていく
警察だろうか、と察した
臼井誠の意識が戻ったことを病院側が伝えて、事情聴取に来たのかもしれない
犬神絵美が戻ってきた
すぐに乗り込み、呼吸を整える
「どうだった?」
「猿渡は一緒じゃなかった。けど、立花は一緒だったみたいね」
「立花さんは一緒に行動してたのか…」
「ただ、立花と八峰さんは今日初めて会ったはず…てことは、急な誘いに乗ったかもしれないよね?」
「急な誘い…他に男たちが同行していたんだろ?そいつらが脅して連れ去ったんじゃないかな」
「八峰さんって胴メダリストだよ?怪我をしていたって言っても、普通に歩けるぐらいには治ってるって看護士さんが言ってたから」
「八峰さんには、男数人がかりでも脅せなかったってこと?」
「そう」
「だったら、八峰さんと男たちは仲間ってことになる」
「それに、退院手続きをしている時に受付には病院関係者が数人いたのよ?助けを求めることは十分にできた。だから、立花は自分から一緒に行動したことになるの」
「…そもそも、八峰さんは、立花さんに用事があったわけじゃないんだよなあ」
「どういうこと?」
「臼井さんが運ばれてきた後に、あの病室に忍び込んでるんだよ。そして俺が見舞いに来て、立花さんが来た。だから八峰さんが忍び込んだ狙いは、立花さんじゃなくて、臼井さん」
「じゃあ、なんで立花を連れ出したの?」
「それは分からないけど…ただ、話を整理したおかげで、俺らが居ない間に何かが起きたことは間違いないな。八峰さんは能力で繋がってるから、立花さんを重要人物だと意識しているはずなんだ。俺らが話した仮定が全て合っているとしたら、八峰さんと男たちは、立花さんを守る為に連れ出したことになる」
「なるほど……ん~」
犬神絵美は腕を組んで正面を睨みつける
「まあ、腑に落ちないのはリアルじゃないからさ。さっきも言ったけど、これは仮定の話だから。確認が必要だよ、確認が」
「どうやって確認するのよ。二人共に連絡先も家も知らない…確認したくてもできないでしょ」
すると、ゆっくりと車が動き出した
栗原優は駐車場内を走り出したのだ
「どこかへ向かうつもり?」
「いや…なんか、今日は疲れたから、明日考えようと思って」
「まあ、言われてみれば、色々あった日だよね…」
精算機のゲートが上がり、駐車場を抜け出す
表通りへすんなりと合流する
「さて、ご飯食べに行こう!今日は付き合い出した記念日だし」
「やったあ!じゃあ、食べ放題へ行こう!」
「いいね!…焼肉?」
「肉はいいかな…昼にホットドッグ食べたし」
「あれ、肉カウントされるかなあ。じゃあバイキング形式を探すか」
「ケーキ食べたいなあ」
「ケーキバイキング!?」
「いいね!」
「いやだよ~飯を食いたい」
「記念日なんだからケーキ食べたいじゃん!」
「わかったよ、じゃあケーキバイキングに行こうか!とはならないだろ~」
付き合い始めて浮かれている二人を乗せた車は、週末の夜で賑わう明るい街中へ吸い込まれて行く
その遥か後方では、一発の銃声が鳴り響いていた
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