傍観者を希望

静流

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何事もないように、淡々とお茶を配り、茶請けを真中にトンと置き、一礼して壁際に下がる。

これで場つなぎが出来る。お茶とお菓子を勧め、先にお茶に口を付けた。

爽やかな風味に気分も上昇する。茶請けがナッツの飴がけでよく合っている。

思わず顔が綻んだお蔭で、場の雰囲気も和んできた。

ライ達もぎこちない動きが、だいぶん緩和してきた。
お茶を味わえる位には回復したようだ。

ただ、緊張のあまりに作法の方はど忘れされている。
アルフレッドの、少々剣のある目付きも流せる鈍さは、羨ましい性分に見える。

だが、ライトは苦労する羽目になるなと予想もできる。

身分の高い者ほど、礼儀に煩い。特に、他人の従者への評価が厳しい。
要は、粗探しをして、難癖を付けたがるのだ。

暇人が多いのだと解釈していたが、そこにつけ込んで攻撃するのが狙いだという。
何とも、貴族らしい思考だ。

最も、品格や体面を重んじる人種だけに、どの家も礼儀作法を徹底させている。

ライトも緑雲宮で働く以上は、無意識にできる位に叩き込まれるのは必定だが、多少緩和できるかと、お茶に呼んだのは失策だったようだ。

憐れみ混じりの視線に、ライは状況を理解し、ハッとライトを見遣り顔を顰める。

姿勢や茶器の状態から、不作法な行いが読み取れたのだ。

釈明しようがなくライは、溜息を漏らすが、当のライトは解らず妙な顔をしている。


嫉妬しても、良い上司振りが垣間見える。

未だにキョトンとしているライトに、呆れ混じりに目で茶器を示している。

最初は、困惑していたものの、理解は早かった。
サッと音がしそうな勢いで青ざめ、此方を窺い肩を落とす。

まあ、やってしまったものは仕方がないと腹を括ってもらおう。


「一応確認だけど、礼儀作法は何処まで教えたんだ?」

「一通りは教えましたが…。お茶席に呼ばれる想定はなかったです」

肩を竦め、従者の立場で必要とされる範囲内と注釈がつくと告げてきた。


確かに、主人とお茶をする従者はいない。同席することが先ずないのだ。
アルフレッド達も、泣き落としで一度だけ付き合ってくれただけだ。


「最低限のマナーがあるのは、把握していないのか?それは、従者も含まれるが」

「悪い、礼儀作法を教え込むのが精一杯で、そこまで手が回っていない」

「ライカも同じ状態だと捉えていいか?」

首肯される。

二人ともライカが料理上手な為に、ほぼ家で食事を取るのも、災いした。

マナーを知る機会もなかったのだから、指摘されても何が正しいか判断できなくて当たり前だ。

知らない事を知って良かったと、逆に喜んだ方がいい。
まだ、若い内に知った方が今後、恥をかかずに済むのだから。


「知らない事は学べばいい。食事やお茶以外のマナーも、一通りアルフレッドが仕込むから問題はない。他に学びたいことがあれば、それも対応可能だから。遠慮なく言ってくれて構わない」

ライトが叱られると首を竦めていたが、驚いて目を丸くしている。

横でライは、嬉しさと羨ましさが入り混じって微妙な笑みになっていた。
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