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「セイ様。もしや、お待たせしてしまいましたか?」
視線に気付いて、訊いてくるが、待たせる前に今のような反応を示してくる。
常に同じ反応を返してくれる相手に、首を振って否定した。
「今来たところだが、相変わらず器用な使いっぷりだな」
視線で、魔道具を指しているのに気付いたようだ。
「恐れ入ります。しかし、見学されるほど、待たせてしまい申し訳ありません」
謝罪の言葉が、終わるのと同時に、全ての処理が完了した。
思わず拍手を送りそうになったが、寸前で止めれて良かった。
間違って、拍手をしようものなら、後々まで嫌味を言われただろう。
「謝罪は不要だよ。部屋からここに向かう時に観ただけで、一切待ってないし、アルフレッドの、魔道具を操っている様は、曲芸を鑑賞するようで面白いのに、滅多に見れないから、逆に感謝したいくらいだ」
褒めたのだが、恐縮されながら苦情を言われた。
偶々目にした光景は、裏方の仕事で主人が、観るべきものではないと言うのだ。
ましてや、曲芸と同類に見なされるのは、甚だ遺憾だと憤慨された。
言い方が悪かったのも、せっせと働いてる姿を余興の如く扱ったのも、自分の不徳の致すところで、甘んじて非難を受け入れた。
素直に、対応を詫びていると、下の詰所に伝令に行っていたグレンが、戻って来て目を丸くし、逸らしている。見てみぬ振りをするには、無理がある態度だった。
元々、さほど怒っている訳ではなく、時間潰し的な要素を、多分に含んでいただけに、終結もあっさりと着いた。
あまりにも、呆気なく終わったので、グレンは自分が揶揄われたのかと勘違いしかけたが、察して呆れたようにみてくる。
時間潰しにしては、悪趣味な行為だとは思うが、狙ってやっている訳でもない。
お互いの、ノリと雰囲気で深刻にならない程度の、寸劇をしてみただけだ。
半分本音が混じっていたが、相手の神経を逆撫でするような言い回しを、態々するほど性格は歪んでない。
言葉遊びだと判った上で、応酬を半ば楽しんでいたが、傍目にはそうは見えないのを、忘れていたのが不味かったと、変な反省をする状況に陥った。
アルフレッドと顔を見合わせ、この状態に苦笑しあった。
「グレン、巻き込んで悪かったが、観客を考慮にいれてなかったんだよ。言葉遊びで、気分転換をしていたのを、本気にとるとは思わなかったんだよ」
いくぶん拗ねているグレンに、詫びつつコートに袖を通している。
基本的には自分で着替えるのだが、仕上げや装飾品はアルフレッドが担当している。
今も、詫びている私の前で、ボタンを留め形を整えている。
「解りました。もう良いです。しかし、結局は融通が効かないと責めているのでは?」
嘆息して、納得した様に言いながらも、嫌味を混ぜてくる。
「責めてないよ。グレン、それは被害妄想だ。四角四面な対応も、生真面目な仕事振りも気に入っている。謹厳実直で融通が効かないのも、此処では美点で問題ない」
先回りして、補足すれば珍妙な表情になり、アルフレッドは笑いを噛みころし損ねて、吹き出している。
「セイ様。幾ら何でも、それは褒め言葉ではありません。淡々平然と述べられないで下さい」
「私にとっては、最良だと褒めているつもりなんだが?何か不味かったかな」
大真面目に返せば、アルフレッドは最早隠しもせずに、爆笑している。ツボにハマった様で、息切れしても治らない。
当のグレンは、逆に意気消沈してしまった。
私としては、本気で褒めたが、表現を誤った事だけは判った。
だが、護衛騎士に柔軟な対応をされるのは、助かる反面、騎士の負担と責任が増す。
不要な重責を負わせて、自分だけ気楽に過ごすのは性に合わない。
故に、四角四面で実直なグレンは、行動を制限されて不便に感じても、いい騎士だと判定を下しているのだ。
言葉で伝えれば、誤解を招くと知ったが、この状況をどうしようかと、肩を落としているグレンと、未だに肩を震わせているアルフレッドをぼんやり見ていた。
視線に気付いて、訊いてくるが、待たせる前に今のような反応を示してくる。
常に同じ反応を返してくれる相手に、首を振って否定した。
「今来たところだが、相変わらず器用な使いっぷりだな」
視線で、魔道具を指しているのに気付いたようだ。
「恐れ入ります。しかし、見学されるほど、待たせてしまい申し訳ありません」
謝罪の言葉が、終わるのと同時に、全ての処理が完了した。
思わず拍手を送りそうになったが、寸前で止めれて良かった。
間違って、拍手をしようものなら、後々まで嫌味を言われただろう。
「謝罪は不要だよ。部屋からここに向かう時に観ただけで、一切待ってないし、アルフレッドの、魔道具を操っている様は、曲芸を鑑賞するようで面白いのに、滅多に見れないから、逆に感謝したいくらいだ」
褒めたのだが、恐縮されながら苦情を言われた。
偶々目にした光景は、裏方の仕事で主人が、観るべきものではないと言うのだ。
ましてや、曲芸と同類に見なされるのは、甚だ遺憾だと憤慨された。
言い方が悪かったのも、せっせと働いてる姿を余興の如く扱ったのも、自分の不徳の致すところで、甘んじて非難を受け入れた。
素直に、対応を詫びていると、下の詰所に伝令に行っていたグレンが、戻って来て目を丸くし、逸らしている。見てみぬ振りをするには、無理がある態度だった。
元々、さほど怒っている訳ではなく、時間潰し的な要素を、多分に含んでいただけに、終結もあっさりと着いた。
あまりにも、呆気なく終わったので、グレンは自分が揶揄われたのかと勘違いしかけたが、察して呆れたようにみてくる。
時間潰しにしては、悪趣味な行為だとは思うが、狙ってやっている訳でもない。
お互いの、ノリと雰囲気で深刻にならない程度の、寸劇をしてみただけだ。
半分本音が混じっていたが、相手の神経を逆撫でするような言い回しを、態々するほど性格は歪んでない。
言葉遊びだと判った上で、応酬を半ば楽しんでいたが、傍目にはそうは見えないのを、忘れていたのが不味かったと、変な反省をする状況に陥った。
アルフレッドと顔を見合わせ、この状態に苦笑しあった。
「グレン、巻き込んで悪かったが、観客を考慮にいれてなかったんだよ。言葉遊びで、気分転換をしていたのを、本気にとるとは思わなかったんだよ」
いくぶん拗ねているグレンに、詫びつつコートに袖を通している。
基本的には自分で着替えるのだが、仕上げや装飾品はアルフレッドが担当している。
今も、詫びている私の前で、ボタンを留め形を整えている。
「解りました。もう良いです。しかし、結局は融通が効かないと責めているのでは?」
嘆息して、納得した様に言いながらも、嫌味を混ぜてくる。
「責めてないよ。グレン、それは被害妄想だ。四角四面な対応も、生真面目な仕事振りも気に入っている。謹厳実直で融通が効かないのも、此処では美点で問題ない」
先回りして、補足すれば珍妙な表情になり、アルフレッドは笑いを噛みころし損ねて、吹き出している。
「セイ様。幾ら何でも、それは褒め言葉ではありません。淡々平然と述べられないで下さい」
「私にとっては、最良だと褒めているつもりなんだが?何か不味かったかな」
大真面目に返せば、アルフレッドは最早隠しもせずに、爆笑している。ツボにハマった様で、息切れしても治らない。
当のグレンは、逆に意気消沈してしまった。
私としては、本気で褒めたが、表現を誤った事だけは判った。
だが、護衛騎士に柔軟な対応をされるのは、助かる反面、騎士の負担と責任が増す。
不要な重責を負わせて、自分だけ気楽に過ごすのは性に合わない。
故に、四角四面で実直なグレンは、行動を制限されて不便に感じても、いい騎士だと判定を下しているのだ。
言葉で伝えれば、誤解を招くと知ったが、この状況をどうしようかと、肩を落としているグレンと、未だに肩を震わせているアルフレッドをぼんやり見ていた。
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