傍観者を希望

静流

文字の大きさ
131 / 292

131

しおりを挟む
「…だが、自己防衛は誰しもするだろう?アリサは、当たり前な主張をしているだけだよ」

取り敢えず、一般論で説き伏せようとするが、ギッと睨まれる。
やはり駄目なようだ…。

「セイ様がそれを言いますか。説得力に欠けますね」

「そういうがな、私は物心ついた頃から領主だ。他の考え方を知らないのは、仕方がないだろう。領主は、言い訳を許されない。後悔する前に改善案を練るのが仕事だ」

溜息混じりに溢せば、眉根を寄せている。
反論が浮かばないのだろうが、納得にも至っていない。

「まあ、それが理由で「自分は悪くない」という思考に至らない。別に大人という訳でもない。だから、アリサが子供だと卑下するのも違う。そう思わないか?」

「何だか、丸め込まれてる気もするんだけど…。否定するのも難しいわ」

むむっとなっているが、上手く言葉が出てこない。

「まあ、いいじゃないか。アリサは大人だよ。子供は、自分を大人だと主張するだろう?逆なら、もう子供ではないよ」

苦笑しながら、そろそろ失礼するよと辞去を告げる。
これ以上いれば、更に何を言われるかと急ぐフリをしたのだが、相手は思わせ振りな言葉を漏らしてくれる。

「あら、もう帰られるのですか?学園について…、いえ。また今度にしましょうか」

「今…学園っと言わなかったか?その話を聞かせてくれないか」

中腰だったのを、改めて座り直し促した。

「お時間は宜しいのですか?では…、今度入学予定の子たちが、辞退を申し出て来ているんです。理由を訊いても応えてくれなくて、少し困っているんです」

「先ず教えて欲しい。薬草園で面倒をみている子か?それとも、親戚筋の方か」

「親戚筋は、最初から留学予定です。私が面倒をみている子の方です」

何を当たり前な事を訊くのだと、苛立ったような態度だ。

「その子は平民だよね。特待生の予定だったのか?」

「ええ、そうです。今まで特待生を断る子はいなかっただけに、どうしたものか相談に乗って欲しいのですが、駄目でしょうか?」

困惑しているのがよく分かるが、半ば計算尽くの行動にもみえる。
自分を子供だと嘆くわりに、昔からかなりの策士なのだ。

「アリサの情報網に、何か引っ掛からないのか?後は、何か前兆はなかったのか…かな。子供だけに、断る前に何か引き金がある筈だよ」

何か伏せているカードが有るだろうと、開示を求めれば、あきれ顔だ。

「セイ様…。私もぜひ聞きたいものです。どこかで偵察でもしてませんかと。なんで分かるんですか?」

「偵察はしてないから。ほら、情報を惜しまない」

「はあ、その勘は凄いですね。断る少し前に、夏季休暇で学園から里帰りしていた子に会っていたんですが…変に明るかったと思えば、暗くなったりと気分にムラが出ていたんです。日頃は大人しくて、いい子なんです。でも今は…」

「黙りで暗くなったか、部屋に閉じこもって出てこないのかな?」

目を丸くするが、無言で頷いている。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。  発端は彼女の父親が行方不明となり、叔父である父の弟が公爵邸に乗り込んで来たこと。  何故か叔父一家が公爵家の資産に手を付け散財するが、祖父に相談してもコロネに任せると言って、手を貸してくれないのだ。  そもそも父の行方不明の原因は、出奔中の母を探す為だった。その母には出奔の理由があって…………。  残された次期後継者のコロネは、借金返済の為に事業を始めるのだ。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

処理中です...