傍観者を希望

静流

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「えっ、伯父上って。まさか…あの公爵家?では、セイ様はイトコだったのですか?」

今更過ぎることを驚くのは、やはりアスカルトだ。

陛下が、微妙に残念な子を見るような目をしている。

「だから、先程も言ったでしょう。本当に鳥頭ですね」

ブランディアが毒舌を発揮しているが、本調子ではないようでキレがない。

「公爵が急遽引退して、長男が継いだと聞きましたが…。その長男も問題が?」

ドミニクが意外そうに問うてくるが、応える気にもならず肩を竦めておく。

「そんな単純な話でもない。疲れてるセイ殿を責める気か?」

代わりに何故か陛下が、喧嘩腰で文句を言う。
助かるが、自分の子に八つ当たりしてどうするのだ。

「陛下、お気持ちは有り難いですが、ご子息に喧嘩を売ってどうする気ですか。ドミニクも、相手が陛下の弟一家だと分かっているなら、少しは察しなさい」

ドミニクの方が、素直なぶん扱い易いものの、指摘されるまで思い至らない点に頭痛がしてくる。

もっとも、ドミニクが直ぐに自分の失言を理解して青褪めているのを、不憫に感じる私は確かに甘いのだ。

「セイ殿が、博愛主義者なのに感謝することだ。私なら、そう笑って流せん」

拗ねたように言い置いて、退席していった。
だが、変に叱責された形で放置されたドミニクは、蒼白になっている。
面倒な置き土産を残していった陛下に、愚痴の一つもぶつけたくなった。

「ドミニク、別にそこまで怒っている訳ではないから大丈夫だ。2、3日もすれば忘れる程度だからな」

「…陛下はそうでも、セイ様は?内心、怒っているのではないのですか」

窺うように問いかけられて、目を瞬かせた。

「もしかしなくても、気に病んでいるのは、その点か?」

半ば唖然と聞き返したら、逡巡するまでもなく頷かれた。

「何か問題がありましたか?陛下の言い方だと、セイ様の方が怒っているように思えたのですが…」

首を傾げ、本気で心配している。
陛下の言葉を裏読みし過ぎていて、ここまでくると妄想の域だ。

「悪いが、裏読みし過ぎだとしか言いようがない。私は、そこまで家族思いでもないからな。気にすべきは陛下の方だ。色々と確執があった弟だけに、一筋縄ではいかないだろう」

「確執ですか?ですが兄弟仲は良好でしたし、これといった問題もありませんが…」

ブランディアが怪訝な顔をして、首を捻っている。

「仲は…それほど良くないと思うがな」

ドミニクが呆れたように異を唱える。
同調したのが意外にアスカルトだった。

「俺もそう思う。陛下の目、何時も笑ってないし、何だか監視している感じだった」

「内容が何処までも脳筋ですが、返って信用できますね」

苦笑いを浮かべるものの、目が優しいのが陛下との違いなのだろう。
割と酷い言われようなのに、妙に懐いている理由が窺えた。
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