傍観者を希望

静流

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「私が、今まで耳にしていた義兄にしては、お粗末過ぎます。念の為に、周辺を探って下さい」

「確かに一理あるか。間違っても、この場で甥だと叫ぶようなタチではないな。まるで、発狂したようだった」

「…発狂?そういえば、そんな感じでした。それなら、薬物検査を求めます」

「薬物だと?正気には見えなかったが…そこまでする必要はないだろう」

「いえ、今しないと証拠が消えます。早急に手配を」

側にいた宰相殿に目配せをすれば、即座に部下に命じている。

「おい、私を無視する気か?」

「急を要しますから、議論している場合ではありません。それに、此処は緑雲宮です」

治外法権を前に出せば、渋面になるが反論はない。

「他に要求はあるのか?この際、気が変わらないうちに述べろ」

「では、医師の診察で、操られてないかを確認して下さい。加えて、ここ2、3日の動きと、接触者の有無を調査願います」

「だそうだ。手配を頼むが…序でに、周辺の調査も併せてさせておいてくれ」

陛下は、宰相殿に丸投げしたが、それは更に部下とアルフレッドに振られていた。

「一応訊くが、誰か目星がついているのか?」

調査する前から確認する陛下に、呆れてしまう。

「残念ながら不明です。だいたい、判明しているのなら、こんな回りくどい真似はしません」

文句があるのかと、ジロっと睨んでおいた。

「いや、毎回裏を取るために動くから、今回もそうかとだな…」

笑って誤魔化すが、数人から白い目で見られれば黙ってしまう。

とはいうものの、多少の目星は着いている。
手紙を受け取って、陛下から諭されるまでは真面だった。
おそらく、豹変したのは、ここへ来る直前だ。

故に、周辺を調査させたのだが…想定では何も引っかからない筈だ。
推理の結果が当たれば、義兄の罪は軽くはなるが、何処か外れる事を期待していた。

「セイ様。何か、他にも気になるところが御座いますか?」

黙り込んでいるのを、不審そうに宰相殿が確認してきた。

「いえ。それよりも、何か御用があったのでは?態々、押しかけて来られたのですよね」

本来の用件を尋ねれば、宰相殿は目を泳がせ、言葉に詰まっている。

「あの、ですね…。そう、約束通り休まれているかを拝見しに来たんです」

しどろもどろの言葉の後に、取って付けたような逃げ口上を言う。

「さようで。その割に大騒ぎを起こすとは、矛盾してませんか?」

「お休みされているだけなら、騒動は起きてません。結界を張って寝込まれれば、心配するのが普通でしょう?」

呆れたような嫌味に対して、逆に苦情で追撃してきた。
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