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「本当に、盲目的になると、視野が狭くなるようですね」
アルフレッドは、目を眇めて呟いている。
声音も冷たければ、纏う空気も冷気を帯びていた。
「アルフが怒るほどの価値もないよ」
「セイ様と違い、私はそれほど寛容になれません。随分と、軽く観られていますから、余計に腹立たしいのですが?」
「そういうが…馬脚を露わにしては、早晩失脚すると思わないか?」
アルフレッドの静かな激怒を嗜めれば、ジロっと見据えられてしまう。
敢えて怒らない訳を教えれば、眉根を寄せて思案しだしている。
何かブツブツと言っているが、流石に聴こえるほどの音量ではなく、小分かりしない。
仕方なく傍観し、のんびりとお茶をすることにした。
茶器や、お湯は鎮座したままだけに、丁度いい状態だ。
ただ、流石にお湯は冷めているし、茶葉も入れ替えが必要だった。
アルフレッドの意識が逸れているのをいい事に、お湯を温め直した上に、茶葉は仮想空間から取り出していた。
さあ、入れようとした時に、ライトがやって来た。
「遅くなりました…あ、そういう事は私がやりますよ」
「セイ様。その様なことは、ご自分でなされないで下さい。それに、お湯も冷めて…いませんね。茶葉も替え…たようですが、何処からお出しに?」
「そう目を尖らせなくても、姉さんに貰った物だから問題ないよ。何なら、毒見を兼ねて一杯飲むか?」
アルフレッドは、駄目ですね…とお湯を確認した後から、複雑そうな表情になっている。
冷めきったお湯は、沸かしたての状態だった上に、出涸らしの茶葉も差し替え済み。
きっちり整えられては、手を出す余地がない上、自分が居る意味がない、と思っていそうな雰囲気だ。
「セイ様。そういう問題ではありません!」
「あまり怒ると体に悪いぞ?まあ、偶には良いではないか。はい、どうぞ」
アルフレッドが、身体を戦慄かせて怒るのに対し、サッとお茶を押し付けた。
流石に、振り払う訳にもいかないので、大人しく受け取るが、手の中の茶器を持て余している。
「セイ様。私までご相伴するのですか?」
ライトも序での様に渡され、どうしたものかという風情だ。
ただし、此方は幾分ながら嬉々としてもいるのが、アルフレッドとの差だった。
「今日は客人だから、構わないと思うよ。単に、挨拶に来ただけだろ?」
「建前を踏襲してで良いのなら、有り難く頂戴します。こんな機会は、そうないでしょうから、得した気分です」
現金な反応に、アルフレッドが眉根を寄せる。
だが、勤務が明日からなのも確かならば、急場しのぎに助勢している現状では、叱責もできない。
苛立ち紛れに渡されたお茶を飲み、目を見開いた。
熱湯の筈が、適温になっている上に、専門家が入れたような味だったのだ。
思わずポットを目で確認しているが、相変わらず微かに湯気が出ている。
「セイ様…いったい、何をなさっているんですか」
呆れが混ざった感想に、ライトが吹き出し、即座に頭を下げ詫びている。
アルフレッドは、目を眇めて呟いている。
声音も冷たければ、纏う空気も冷気を帯びていた。
「アルフが怒るほどの価値もないよ」
「セイ様と違い、私はそれほど寛容になれません。随分と、軽く観られていますから、余計に腹立たしいのですが?」
「そういうが…馬脚を露わにしては、早晩失脚すると思わないか?」
アルフレッドの静かな激怒を嗜めれば、ジロっと見据えられてしまう。
敢えて怒らない訳を教えれば、眉根を寄せて思案しだしている。
何かブツブツと言っているが、流石に聴こえるほどの音量ではなく、小分かりしない。
仕方なく傍観し、のんびりとお茶をすることにした。
茶器や、お湯は鎮座したままだけに、丁度いい状態だ。
ただ、流石にお湯は冷めているし、茶葉も入れ替えが必要だった。
アルフレッドの意識が逸れているのをいい事に、お湯を温め直した上に、茶葉は仮想空間から取り出していた。
さあ、入れようとした時に、ライトがやって来た。
「遅くなりました…あ、そういう事は私がやりますよ」
「セイ様。その様なことは、ご自分でなされないで下さい。それに、お湯も冷めて…いませんね。茶葉も替え…たようですが、何処からお出しに?」
「そう目を尖らせなくても、姉さんに貰った物だから問題ないよ。何なら、毒見を兼ねて一杯飲むか?」
アルフレッドは、駄目ですね…とお湯を確認した後から、複雑そうな表情になっている。
冷めきったお湯は、沸かしたての状態だった上に、出涸らしの茶葉も差し替え済み。
きっちり整えられては、手を出す余地がない上、自分が居る意味がない、と思っていそうな雰囲気だ。
「セイ様。そういう問題ではありません!」
「あまり怒ると体に悪いぞ?まあ、偶には良いではないか。はい、どうぞ」
アルフレッドが、身体を戦慄かせて怒るのに対し、サッとお茶を押し付けた。
流石に、振り払う訳にもいかないので、大人しく受け取るが、手の中の茶器を持て余している。
「セイ様。私までご相伴するのですか?」
ライトも序での様に渡され、どうしたものかという風情だ。
ただし、此方は幾分ながら嬉々としてもいるのが、アルフレッドとの差だった。
「今日は客人だから、構わないと思うよ。単に、挨拶に来ただけだろ?」
「建前を踏襲してで良いのなら、有り難く頂戴します。こんな機会は、そうないでしょうから、得した気分です」
現金な反応に、アルフレッドが眉根を寄せる。
だが、勤務が明日からなのも確かならば、急場しのぎに助勢している現状では、叱責もできない。
苛立ち紛れに渡されたお茶を飲み、目を見開いた。
熱湯の筈が、適温になっている上に、専門家が入れたような味だったのだ。
思わずポットを目で確認しているが、相変わらず微かに湯気が出ている。
「セイ様…いったい、何をなさっているんですか」
呆れが混ざった感想に、ライトが吹き出し、即座に頭を下げ詫びている。
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