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ちゃぼ茶のショートショート 「帰省」
しおりを挟むおれは見た目よりも重くないキャリーケースを引いていた
幾度も通った駅の改札を抜け、シャッターが目立つ商店街を歩く
「久しぶり」
聞こえた方を見ると、そこには見覚えのある顔があった
が…名前が思い出せない
「帰ってきたんだな、里帰りか?」
あーそうだ、こいつは中学校の時の同級生
おれよりはるかにバカで、運動もできないやつ
名前だってすぐに思い出せないほどに
「まぁな」
「東京の大きな会社なんて俺たちの誇りだよ、お前は」
「今回は弟くんに会いにきたのか?」
心の中で当たり前だろ、お前らとは違うんだよ…そう思いながら適当に返事をする
「まぁな」
「久しぶりの帰省楽しめよ」
そしてまた飲みにでも行こうと社交辞令のような挨拶で別れた
弟と会うのは母親の葬式以来だ
母は1人で俺たちを育ててくれた
しかし、弟とは仲が悪いのだ
昔から何か合わない
性格も、行動も、周りからの信頼も
全て俺より劣ってると思っていたのに
そんなことを考えていると着いてしまった、弟の家に
緊張を隠すように無理して笑顔を作りチャイムを押す
「はーい」
返事とともに出てきたのは久しぶりの弟
しかし弟から出たのはきつい言葉だった
「何しにきたんだよ」
「いや、久しぶりに弟のお前に会いたくなってな」
「ふざけんな、帰れよ」
「少しの間でいいんだ」
「また、仕事辞めたのか、どうしようもない奴め」
「あそこは俺に合わなかったんだよ、頼む泊めてくれ」
「母親がいなくなったら今度は俺か」
「すぐ寄生しやがって」
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