殺されるのは御免なので、逃げました

まめきち

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田舎暮らし

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王都から遠く離れた小さな村。
私たちはここで、仮初めの“夫婦”として身を寄せて暮らしていた。

朝は鶯の声で目を覚ます。窓から差し込む光と草の香りに、体も心も少し軽くなる。
ゼンはもう外に出て、井戸で水を汲み、薪を割り、朝食の準備をしている。
「ゼン、そんなに早く動かなくても…」
「リディ、村では手伝いが必要です。何もかも私一人でやるつもりではありません」
その言葉に、私は小さく笑った。頼れるけれど、どこか家庭的な彼の存在がここでは自然に馴染む。

朝食は、畑で採れた野菜や豆を使ったシンプルなスープとパン。
ゼンは私の分を取り分け、口元まで運んでくれる。
「自分で食べられるわ」と言うと、ゼンは真剣な目で首を振った。
「リディ、まだ体調は完全ではありません。じっとしていてください」
結局今日も、甘えさせてもらうままになった。恥ずかしさと安心感が入り混じる。

昼は村の近くの小道を散歩したり、薬草や野菜を収穫したり。
ゼンは私の手を取り、刈った草や果実を袋に入れるのを手伝ってくれる。
「リディ、この草はスープにすると香りが良くなるんです」
「なるほど…さすがね、ゼン」

夜になると、二人で小屋の暖炉の前に座る。
火の揺らめきに照らされる彼の横顔は美しく、どこか切なさも漂う。
「ゼン…こんな平和な暮らしも、悪くないわね」
「はい。でも、リディ、忘れないでください。これは仮の生活です」

仮初めの夫婦――
互いの距離感は近いけれど、心の中の本命は別にある。
ゼンは守るためにそばにいる。
私は自由と安全を手に入れるために彼に寄り添う。

そんな静かな日々の中で、私は少しずつ体と心を癒していった。
外の世界の喧騒から離れ、ただ穏やかに、二人で過ごす時間。
今の私にとってはかけがえのない日常だった。
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