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第二十三話 天魔浄玉の場所とボス拝見
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「名前は何?」
僕はライオンのアバター装備を着たプレイヤーに問いかける。
「名はライオンだ!」
まさかとは思ったが、名前もライオンにするなんて……。(どれだけライオンが好きなんだよ!)僕は耐えようにも耐えきれず、笑みが口角に浮かぶ。
「なんで笑ってるんだ!」
ライオンは不機嫌そうな表情で僕に言葉を発してくる。
どうやらライオンのことで人にからかわれたり、笑われたりすると怒るみたいだ。ライオンのことを言われるのが嫌なら格好と名前を変えればいいのにと正直に思う。
「どうしてプレイヤーを攻撃してるんだ?」
奪い合いありと言うルールがあるけど、どうしてここまで積極的にプレイヤーを攻撃できるのかが気になったので質問してみた。
「俺もクエストを受けたからだ!」
「クエスト?」
「天魔浄玉を奪われるのを阻止するクエストを!」
天魔浄玉を獲得するのと別にそんな依頼があるとは知らなかったので、驚きのあまりすぐには言葉が出なかった。
このクエストはもともと攻撃陣営と守備陣営が存在する難易度高めのクエストだということが分かった。そうなるとライオンが守備している天魔浄玉は何だろうという疑問が浮かぶ。
「ちなみにライオンが守っている天魔浄玉が眠る洞窟の難易度は?」
十人もの人を相手にして無傷だったライオンが守る天魔浄玉なら最高難度のものに違いないと思ったので、期待に胸を躍らせながら聞いてみた。
「もちろん! 最高難易度だ!」
この情報を聞き出すのにもう少し時間がかかると思ったのにあっさりと聞き出せてしまった。
「あっ! しまった! 今の情報は忘れて……」
守備側の陣営なのにあさりと攻撃側のプレイヤーに天魔浄玉のある場所を教えてしまうという失態に気づいたらしく、僕にお願いをしてきた。
このプレイヤー馬鹿だ。貴重な情報を手に入れたのに「今の情報は忘れて」と言われて忘れるプレイヤーはいない。
「情報ありがと!」
僕はそう言い残し、ライオンの頭に四、五回大剣を振り落とした。ライオンのHPはゼロになって消滅した。第三者から見たらまずい倒し方だったかなと思ったので、男性プレイヤーたちの方を見て見たが、そんなこと微塵も思っていなかったようで褒められてしまう。
「お前、強いな!」
「どうも!」
「で、そこにある洞窟に一人で行くのか?」
男性プレイヤーは洞窟の入り口を指さしてそんなことを言ってくる。どうやら僕が一人でこの島に来たと思っているらしい。
「仲間がいるから、一人ではいかないよ」
僕はそう言いながらツキナたちに終わったぞと言う合図を送る。その合図を見たツキナたちは木の陰から出てきて近づいてくる。
「ツ、ツキナさん! 何でここに!」
男性プレイヤーはトップランカーのツキナを見るや否やそんなことを言う。生き残っているプレイヤーも突然、ざわざわしだした。
「ツキナ、知り合い?」
「知らないわよ」
ツキナは本当に知らなそうに言うので、知り合いではないようだ。そうなるとトップランカーであることが、このゲームをプレイしているプレイヤーにばれているということになる。
「有名人だな!」
「余計なお世話よ! ところで君たち、今からこの洞窟のボスを私たちが倒したいんだけどいいかな?」
「どうぞ、どうぞ」
男性プレイヤーたちはそう言い残し何かを話しながらこの場を去って行った。おそらくツキナの話をしているのだろう。
「しまった……」
「どうしたのよ……?」
僕が急にこんなことを言うので、ツキナが反応してくる。リリとトモも僕の方を見てくる。
「あのプレイヤーから貫通攻撃を手に入れる方法を聞くのを忘れてた」
「あのプレイヤー?」
そう言えばツキナたちはライオンと言う名前のプレイヤーのことをライオンの特徴を持った獣人族のモンスターだと思っていたんだった。
「獣人族のモンスターだと思っていた奴がプレイヤーだったんだよ!」
「それ本当なの?」
「本当、本当。それにこのクエスト攻撃陣営と守備陣営に分れているクエストだと知っていたか?」
ツキナたちに事実を教えるのとともに、このクエストの下調べをしっかりとしていたリリにこんな質問を投げかけてみる。
「知らなかった……」
「ダメじゃないか、リリ」
リリが少し落ち込んでいるところに火に油を注ぐようにトモがそう告げるので、リリはニヤニヤしながらトモの顔面に正拳突きをお見舞いする。
「うっ!」
トモはまともに正拳突きを受けてしまったので、後方に倒れる。
(トモ、ドンマイ! そして空気、読もうな!)と心の中で投げかけトモが倒れるのをじっと見ていた。やっぱり、リリを怒らせるのはやめようと改めて心に誓った出来事だった。トモの装備は初期の時よりはかなり強化されているので、初ログインの時みたいに攻撃でHPがゼロになることはなかったが、復活するまでに五分ほど時間を要した。
「いてて……」
トモはゲームの中では痛みを感じないはずなのだが、痛そうに体を起こしている。あまりの衝撃で痛みを本当に感じてしまう感覚になってしまったのか。あの正拳突きはクリーンヒットだったので僕も受けたときには痛みを感じるかもしれない……。
「さっきはごめん……トモ」
リリはきまり悪そうに謝罪する。そして右手に出現させた【回復薬】をトモにそっと差し出す。リリの正拳突きでトモのHPは少し削られていたので渡したのだろう。リリにも優しいとこがあるじゃないか。
「こちらこそ、ごめん……」
トモは謝罪をしてリリが渡してくれた回復薬を受け取り、ふたを開けて口の中に含む。減っていたHPは全回復して、トモの表情も少し明るくなった。僕は二人が仲良くなったことに胸をなでおろした。ツキナも僕と同じ表情をしている。
「天魔浄玉を取りに行こう!」
僕がそう提案すると、ツキナたちは気持ちを切り替えたみたいだ。
僕たちは洞窟の中に入っていくと広い空間が顔を出す。僕たちが空間の中央に到達した時、空間がいきなり明るくなって全貌を見ることができた。そして目の前には天使の翼を四つはやし、顔には魔王みたいな立派な角をつけた天使と悪魔のハーフのボスモンスターが現れ、モンスターの名前とHPゲージが表示される。
ボスモンスターの名前は天魔《てんま》、HPは十万と表示されていた。見ただけでも逃げたくなるくらいの威圧感を放っている。僕たちは武器を一斉に構えた。
僕はライオンのアバター装備を着たプレイヤーに問いかける。
「名はライオンだ!」
まさかとは思ったが、名前もライオンにするなんて……。(どれだけライオンが好きなんだよ!)僕は耐えようにも耐えきれず、笑みが口角に浮かぶ。
「なんで笑ってるんだ!」
ライオンは不機嫌そうな表情で僕に言葉を発してくる。
どうやらライオンのことで人にからかわれたり、笑われたりすると怒るみたいだ。ライオンのことを言われるのが嫌なら格好と名前を変えればいいのにと正直に思う。
「どうしてプレイヤーを攻撃してるんだ?」
奪い合いありと言うルールがあるけど、どうしてここまで積極的にプレイヤーを攻撃できるのかが気になったので質問してみた。
「俺もクエストを受けたからだ!」
「クエスト?」
「天魔浄玉を奪われるのを阻止するクエストを!」
天魔浄玉を獲得するのと別にそんな依頼があるとは知らなかったので、驚きのあまりすぐには言葉が出なかった。
このクエストはもともと攻撃陣営と守備陣営が存在する難易度高めのクエストだということが分かった。そうなるとライオンが守備している天魔浄玉は何だろうという疑問が浮かぶ。
「ちなみにライオンが守っている天魔浄玉が眠る洞窟の難易度は?」
十人もの人を相手にして無傷だったライオンが守る天魔浄玉なら最高難度のものに違いないと思ったので、期待に胸を躍らせながら聞いてみた。
「もちろん! 最高難易度だ!」
この情報を聞き出すのにもう少し時間がかかると思ったのにあっさりと聞き出せてしまった。
「あっ! しまった! 今の情報は忘れて……」
守備側の陣営なのにあさりと攻撃側のプレイヤーに天魔浄玉のある場所を教えてしまうという失態に気づいたらしく、僕にお願いをしてきた。
このプレイヤー馬鹿だ。貴重な情報を手に入れたのに「今の情報は忘れて」と言われて忘れるプレイヤーはいない。
「情報ありがと!」
僕はそう言い残し、ライオンの頭に四、五回大剣を振り落とした。ライオンのHPはゼロになって消滅した。第三者から見たらまずい倒し方だったかなと思ったので、男性プレイヤーたちの方を見て見たが、そんなこと微塵も思っていなかったようで褒められてしまう。
「お前、強いな!」
「どうも!」
「で、そこにある洞窟に一人で行くのか?」
男性プレイヤーは洞窟の入り口を指さしてそんなことを言ってくる。どうやら僕が一人でこの島に来たと思っているらしい。
「仲間がいるから、一人ではいかないよ」
僕はそう言いながらツキナたちに終わったぞと言う合図を送る。その合図を見たツキナたちは木の陰から出てきて近づいてくる。
「ツ、ツキナさん! 何でここに!」
男性プレイヤーはトップランカーのツキナを見るや否やそんなことを言う。生き残っているプレイヤーも突然、ざわざわしだした。
「ツキナ、知り合い?」
「知らないわよ」
ツキナは本当に知らなそうに言うので、知り合いではないようだ。そうなるとトップランカーであることが、このゲームをプレイしているプレイヤーにばれているということになる。
「有名人だな!」
「余計なお世話よ! ところで君たち、今からこの洞窟のボスを私たちが倒したいんだけどいいかな?」
「どうぞ、どうぞ」
男性プレイヤーたちはそう言い残し何かを話しながらこの場を去って行った。おそらくツキナの話をしているのだろう。
「しまった……」
「どうしたのよ……?」
僕が急にこんなことを言うので、ツキナが反応してくる。リリとトモも僕の方を見てくる。
「あのプレイヤーから貫通攻撃を手に入れる方法を聞くのを忘れてた」
「あのプレイヤー?」
そう言えばツキナたちはライオンと言う名前のプレイヤーのことをライオンの特徴を持った獣人族のモンスターだと思っていたんだった。
「獣人族のモンスターだと思っていた奴がプレイヤーだったんだよ!」
「それ本当なの?」
「本当、本当。それにこのクエスト攻撃陣営と守備陣営に分れているクエストだと知っていたか?」
ツキナたちに事実を教えるのとともに、このクエストの下調べをしっかりとしていたリリにこんな質問を投げかけてみる。
「知らなかった……」
「ダメじゃないか、リリ」
リリが少し落ち込んでいるところに火に油を注ぐようにトモがそう告げるので、リリはニヤニヤしながらトモの顔面に正拳突きをお見舞いする。
「うっ!」
トモはまともに正拳突きを受けてしまったので、後方に倒れる。
(トモ、ドンマイ! そして空気、読もうな!)と心の中で投げかけトモが倒れるのをじっと見ていた。やっぱり、リリを怒らせるのはやめようと改めて心に誓った出来事だった。トモの装備は初期の時よりはかなり強化されているので、初ログインの時みたいに攻撃でHPがゼロになることはなかったが、復活するまでに五分ほど時間を要した。
「いてて……」
トモはゲームの中では痛みを感じないはずなのだが、痛そうに体を起こしている。あまりの衝撃で痛みを本当に感じてしまう感覚になってしまったのか。あの正拳突きはクリーンヒットだったので僕も受けたときには痛みを感じるかもしれない……。
「さっきはごめん……トモ」
リリはきまり悪そうに謝罪する。そして右手に出現させた【回復薬】をトモにそっと差し出す。リリの正拳突きでトモのHPは少し削られていたので渡したのだろう。リリにも優しいとこがあるじゃないか。
「こちらこそ、ごめん……」
トモは謝罪をしてリリが渡してくれた回復薬を受け取り、ふたを開けて口の中に含む。減っていたHPは全回復して、トモの表情も少し明るくなった。僕は二人が仲良くなったことに胸をなでおろした。ツキナも僕と同じ表情をしている。
「天魔浄玉を取りに行こう!」
僕がそう提案すると、ツキナたちは気持ちを切り替えたみたいだ。
僕たちは洞窟の中に入っていくと広い空間が顔を出す。僕たちが空間の中央に到達した時、空間がいきなり明るくなって全貌を見ることができた。そして目の前には天使の翼を四つはやし、顔には魔王みたいな立派な角をつけた天使と悪魔のハーフのボスモンスターが現れ、モンスターの名前とHPゲージが表示される。
ボスモンスターの名前は天魔《てんま》、HPは十万と表示されていた。見ただけでも逃げたくなるくらいの威圧感を放っている。僕たちは武器を一斉に構えた。
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