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第四十六話 暴風鳥ガムシガラ

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 僕とトモは緑色の門の前に立っていた。門の扉はプレイヤーが中に入ってくるのを拒むかのように風で固く閉ざされていた。

「さっそく空門の鍵の出番だな」

 トモはそう言うとストレージから空門の鍵を出現させる。その鍵を右手に持ち門の鍵を開ける。空門の鍵を使用すると風が消滅し、簡単に門を開けられる状態になった。

「準備はいいか? ヒビト!」
「いつでもいいよ!」
「オッケー! 三秒後に一緒に開けよう!」
「了解!」

 トモはカウントを始める。そしてカウントが零になった。

「せーのっ!」

 僕とトモはタイミングを合わせて、門を開ける。門は大きな音を立てながら開いていく。門を全て開き切ったので、僕とトモは奥に進んで行く。
 奥に進んでいくと前方からいきなり風の斬撃が飛んできた。当たっても【風無効】スキルを持っているのでダメージはないのだが、反射的に体を反らせて避けてしまう。

「ふぅ……危ねぇー!」
「危ないなぁ!」

 僕とトモは何の前触れもなく攻撃してきたボスモンスターに対して苦笑いを浮かべてしまう。プラグラムされているので、しょうがないのだが少しだけ苛立ちを覚えた。
 不意打ちをしてきたボスモンスターは全長は四メートルくらいで大鷲のような容姿。赤色に光る目が不気味さを引き立てている。

「どうやって倒す?」
「普通に武器を使って、部位破壊をしまくる!」
「賛成!」
「不意打ちをしてきた奴には制裁を加えないとな!」
「そうだな! 行くぞ!」
「おう!」

 僕の掛け声で戦闘がスタートする。ボスモンスターの名前は暴風鳥ガムシガラでHPは八万だ。飛んでいるので、今まで戦ったボスモンスターよりHPは少なめに設定されているようだ。
 ガムシガラは両羽を素早く降って複数の斬撃を飛ばしてくる。
 【風無効】スキルを持っているので、基本的には回避しないが目の前に飛んできたものだけは視界が悪くなるので斬り落とす。
 僕は速度を落とさずにガムシガラに接近をしていき、羽を斬りつける。スルトみたいに硬くは無いみたいなので、攻撃は普通に通った。しかし羽の破壊は簡単にはいかないようだ。

「ピルルッピルルッ!」

 ガムシガラは見た目にそぐわない可愛い泣き方をするようだ。ついつい唇をほころばせてしまった。
 ガムシガラは僕を体の近くから遠ざけるために強風を発生させ、僕を飛ばそうとする。この攻撃を見る限り、ガムシガラは近距離戦闘を好まないみたいだ。

「なんという風だ! 飛ばされそう!」

 再び接近するのは面倒くさいので、必死に耐える。

「氷結矢《アイスアローウ》!」

 トモの氷の矢がガムシガラの両羽に直撃する。風属性の弱点は氷属性なので、ガムシガラは大きくのけぞる。

「サンキュー! トモ!」

 僕はトモにお礼を言って、同じ箇所を十回攻撃する。

「フウラ! 僕と同じ場所に鬼文字!」
「フォッコォォ!」

 フウラにこの指示が伝わるか心配だったが、どうやら伝わったようだ。
 フウラは僕と同じくらいの大きさになって尻尾で火の玉を作り出す。そしてガムシガラの羽に撃ち込む。火の玉は羽に当たった後、鬼と言う文字になって爆発する。ガムシガラの羽に傷ができる。

「ピルルッピルルッ!」

 ガムシガラは可愛い声で悲鳴をあげる。片方の羽に傷ができたガムシガラは少しだけよろめく。
 ガムシガラは体勢を立て直すと羽を大きく広げる。僕は大技が来そうな気配がしたので、トモの隣に戻る。

「トモ! 大技が来る!」
「分かってる! クウガの力を借りて向かい打つぜ!」
「それは頼もしい! 頼んだ!」
「任せろ!」

 僕とトモの会話が終わったのと同時にガムシガラは大きく広げた羽を地面に向かって振る。すると巨大竜巻が三つ出現し、こちらに向かってくる。当たってもダメージはないと思うが、目が回りそうだ。

「クウガ! 壱文字《いちもんじ》!」
「グリフィィ!」

 トモの指示でクウガは僕と同じくらいの大きさになって空中に飛び急降下する。クウガが地面に手をつけると壱の文字が地面に現れ、僕とトモを囲むように障壁が出現する。巨大竜巻と障壁はすぐに衝突してお互いに打ち消しあった。

「ナイスだ! クウガ!」
「グリフィィ!」

 トモに褒め言葉を贈られたクウガは嬉しそうに鳴き声をあげた。

「接近するから援護を頼む!」
「任せろ!」

 僕はトモに背中を預けて、再びガムシガラに接近する。ガムシガラは僕を接近させまいと斬撃を飛ばしてくるが、そんなことはお構いなしに突っ込んでいき、斬りつける。
 その後、僕とトモはもう片方の羽やくちばしなどの部位破壊を行えるところを全て破壊していった。ガムシガラのHPは一割を下回る。

「ピルルッピルルッ!」

 ガムシガラは怒りもあらわに強力に大きな声をあげる。そして赤い目を一層濃く光らせ、羽を大きく広げる。ガムシガラが羽を広げると部屋全体に強風が吹き荒れる。僕とトモは踏ん張り切れず体が空中に浮いてしまう。

「トモ! 空門の鍵を使うんだ!」
「オッケー、やってみる!」

 トモは体勢が安定しない中で空門の鍵をストレージから取り出し、開ける動作を行う。すると僕とトモの周りの風が収まりガムシガラに向かっていく。僕とトモは高い位置にいたので、地面に体を強打してしまう。

「いってぇ! 僕たちの保護機能はないのかい!」
「俺たちも保護してくれよ! 空門の鍵!」

 僕とトモは文句を言いつつ、ガムシガラの方に顔を向ける。ガムシガラは自分が発生させた風に打たれて地面に叩きつけられていた。

「そういう結末かい!」

 僕は目の前で起きた現象についついツッコミをしてしまう。

「それはいいから、はやくとどめを刺さないと!」
「それもそうだな! この話は後で!」

 僕はそう言いながらガムシガラにとどめを刺すために近づいていく。そして頭に星斗天雷刃を突き刺し、消滅させた。

【暴風を獲得しました‼︎】

「よし! また強力なスキルを手に入れた!」

 僕は歓喜の声をあげる。

「今度は暴風か……! 早速、スキル内容を確認しようぜ!」
「オッケー! どんなスキルか、予想はつくけどな!」

 トモは期待に声を弾ませながら言う。僕もどんなスキルか気になるので、見たいと思っている。トモがリンクメニューを操作しているので覗き込む。

【暴風、半径三メートル以内にいるモンスターやプレイヤーを吹き飛ばす。一日一回のみ使用可能。 獲得条件、暴風鳥ガムシガラの部位破壊を全て行う】

「やっぱりこういうスキルだったか」
「無効を持っていないプレイヤーだと獲得するのは難しいスキルだな」

 僕とトモはスキルの内容を見て納得した。

「やっぱり変人じゃないと手に入れれないわ!」

 僕は笑いながら言う。

「俺を変人の仲間に連れ込むなよ!」
「トモも十分に変人だ!」
「否定はできない……が認めない!」

 トモも唇をほころばせている。僕とトモは笑い話をしながら、次の階層へと進んでいく。
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