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第五十一話 土の間と穴掘り対決

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 休憩を終え、僕とトモは階段を登って次の階層に足を踏み入れていた。この階層は山とかも一切、存在せずに平地になっている。見える範囲の壁際には突起物が存在していた。おそらくは採掘を行うためのものだろう。

「全てが平地だとどっちに進めばいいか分からなくなるな……」

 僕は一通り周囲を見渡した後、困惑したような目つきで呟く。

「とりあえず、まっすぐ進めばいいだろ」

 トモは悩む様子は一切なく、堂々としている。確かにまっすぐ進んでいればいつかは目印になるものが出てくるのではないかと思う。それに迷路のように入り組んでいるとも考えにくい。僕とトモはまっすぐ進んでいく。

「今回は採掘対決やらないのか?」
「……あっ! 忘れてたわ~。今からやろう!」
「オッケー! 勝利はいただく!」
「いやいや、俺がいただく!」

 そう言うと僕とトモは採掘対決をスタートする。これで勝てば僕が勝ち越しする訳だから負けたくない。

 【土無効】のスキルも手に入れないと……。
 
 そんなことを考えながら僕は黙々と採掘を行っていく。採掘を行なっても、やっぱりログハウスの修理に使える素材は手に入らない。確実にリリに利用されている。

 ログハウスに帰ったら大穴が空いているところは直っているんだろうな……。

 そう予想をしつつ、採掘を行い始めてから十分が経った。トモは周辺の採掘が終わったので戻ってくる。僕も採掘を終え、トモに近づく。そしてすぐに結果の確認を行う。

「僕の勝ちだな!」
「クッソォォォ! ヒビトに勝ち越されたぁぁぁ!」

 トモの顔には悔恨の色が表れていた。

「へっへっへ、どうだ、トモよ! 僕の実力わ!」

 僕は腰に手を当てて、胸を張る。勝ち越したことがとても嬉しかったのだ。この階層でダンジョンが終わってくれると願っている。

「恐れ入ったよ!」

 トモは悔しさを通り越して、素直に負けを認めた。もっとトモの悔しがる姿を見たかったのに残念だ。
 採掘対決を終え、歩いているとまたしてもお手玉をしているモンスターが出てくる。やっぱりトモはこのモンスターを呼ぶ力があるらしい。

「俺のために現れてくれてありがとう!」

 トモはお手玉をしているモンスターに明るく弾んだ声でお礼を言うとすぐにスキルの習得の作業に入る。
 これでトモのお手玉を見るのは六回目になるが、いつみても素晴らしい出来である。そのため、何度見ても見入ってしまう。

「きた! コンプリートだ!」

 お手玉を終えたトモは息を弾ませて言う。僕も何かをコンプリートした時はトモみたいに喜ぶ気がする。

「おめでとう!」

 僕はトモにお祝いの言葉を述べる。それと同時にエンチャント系のスキルをコンプリートしたいと言う願望も出てきた。リリに鬼火が出てくる洞窟を教えてもらって暇な時に潜ろうと考えている。

「ありがとう! 攻略を再開しようぜ!」

 トモはコンプリートしたことが相当嬉しかったのか、ニヤニヤしている。トモの気持ちはよく分かるので、何も突っ込まないようにしておく。

「いいよ!」

 顔を微笑ませながら僕は答えた。攻略を進めていると何もないところから突然、大きな壁が出現する。突然現れたのでぶつかりそうになったが、ギリギリのところで止まることができた。

「危な! さっきまでこんな壁、無かったよな?」

 見落としたと思いだと思われたくないので、トモに質問する。
 何も踏んだ記憶はないのにどうしてこんなことが起きるのだろう。それにあと一歩遅かったら激突していた。

「確かに、さっきまで無かったな」

 トモがそう答えてくれたので、(僕の勘違いじゃなくて良かった)と安堵する。

「ヒビト、おそらくはあいつが犯人だ」
「どれどれ」

 トモの指差す方向に顔を向けると腹を抱えて爆笑しているモンスターの姿が目に入った。
 モンスターはプログラムされているのでしょうがないが、このダンジョンを製作した人の中に性格が悪い奴が紛れ込んでいるに違いない。

「とりあえず、奴に近づいてみよう」
「いいぜ」

 僕はこの状況を見て、何らかのイベントがあると確信していたので提案したのだ。トモも僕と同じことを考えていたらしく、すぐにオッケーを出してくれた。

 「穴を開けろ!」とか言われそうだ……。

 僕とトモがモンスターに近づくと驚きの表情を見せる。
 どうやらこのモンスターには僕とトモのHPが見えるらしく、一つもHPが減っていないことを確認した途端にこんな表情になったと思われる。
 (ちゃんと確認してから笑おうか!)と突っ込みたくなってしまう。心の中でモンスターに突っ込んでいると突然、穴を掘り出して前進を始めた。

「穴掘り対決でもしようと言うのか?」
「そうじゃないか」
「やっぱりそう言うことだよな……! 面倒くらいから一撃な穴を貫通させる!」
「どうやって?」
「こうやってだよ! フウラ! 壁に向かって爆炎!」

 僕はフウラを呼び出し、指示を出す。

「フォッコォ!」

 フウラは短く返事をすると壁に向かって【爆炎】を発動させた。

「なるほど、なるほど。そう言うことね! クウガ! 壁に向かって風波!」
「グリフィィ!」
 
 クウガもトモの指示に返事を返すと壁に向かって【風波】を発動させた。フウラとクウガの口から放たれたブレスは見事に壁を貫通させた。

「よし! これであとは歩いて進むだけだ」
「そうだな! 行こう」

 僕とトモは穴を開けて作った道をまっすぐ進んでいき、ゴールだと思われる場所に到着した。
 モンスターはまだゴールしていない様子だ。それもそのはずで、普通は苦労して穴を掘るのに一撃で開けてしまったのだから……。
 僕とトモがゴールしてから三十分後、モンスターがゴールに現れる。モンスターは僕とトモを見るや否や驚きのあまり消滅してしまった。

「呆気なくないか?」
「確かに、目が合った瞬間に消滅したな!」
「まぁ、どっちにせよ。そこに落ちているアイテムを拾うだけだけど……」

 僕は地面に転がっていたアイテムの方に顔を向けながら言う。流れ的にアイテムはボスと戦闘するときに役立つ、鍵なのだろう。

「だな! すぐに拾おうぜ!」
「りょーかい!」

 僕は落ちているアイテムに近づいて拾う。

【土門の鍵を獲得しました‼︎】

 やっぱり鍵だったか……どんな効果を発揮してくれるのかがすごく楽しみだ。

「準備オッケーだな! あそこに見える扉がきっとボス部屋だ! すぐに行こう!」
「了解!」

 トモが五十メートル先に見えている扉を指差して進むように促してきたので、足を進める。
 この階層のボスは何が出てくるのか全く見当がつかない。僕は期待に胸を躍らせながら扉の前に立った。
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