異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊

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ふしぎ発見

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 ハンモック......すごくよかったです。

 最初だけは不安定さが怖かったけど、案外動いても問題なかったので、安心できたらすぐに寝る事ができた。



 ググーッと伸びをしながら辺りを見渡し、大自然の空気を感じようと思ったんだけど......


 やはり山の中だからだろうね......罠にぶつかってバラバラに散らばってしまった、昆虫と思われるモノの死骸が多数散らかっていた......


 てか拳大くらいの網目に引っかかる昆虫とかデカすぎませんかね!?
 今後はもうちょっと細かい目の罠にしようと心に誓った。あの網目をすり抜けてきてるのも居たと思うと心がザワつく。

 あと何日かは、まだ山の中での寝泊まりになるだろうし。


 ヤツらの残骸はそのまま放置して自然に還元しよう。朝食は移動した先で食べようか。
 ここで宿泊した痕跡をしっかりと片付けて、虫の死骸は放置したまま撤収。


 ......ほら、ハンターがガサゴソして、それを持ち帰ったりして、調合したりする為の素材になるかもしれないじゃん?


 ......決して糸越しでも触りたくなかったとかじゃないよ。




 気を取り直して......

 移動した先で簡単なご飯を用意する。
 インスタントのほうれん草のポタージュとクロワッサンを食べて、コーヒーとタバコで食休み。


 さぁて、また今日も登山を楽しみましょう。あんこちゃん行こっか。



 険しくなってきた山道を進んでいく。

 鳥や虫は見る事ができるんだけど、相変わらず獣や魔物は見ないし出てこない、そして寄ってもこない。


 快適な登山って素晴らしいじゃないか。熊出没注意の場所を平然と歩ける人なんて狂人だってばよ。
 今の俺なら難なく撃退したり、退治することができるけど、なんとなく山道では出なくていいと思う。




 しばらく進むと環境がまた変わってきた。
 人の手があまり入っていないのだろう。ここまで来るのかなりしんどいからね。

 整備されていない自然はやはりキレイで、見ていて楽しい。
 森もまぁまぁよかったとは思うけど、今はもう見たくないという気持ちが強い。
 山は見慣れてない分新鮮に感じるのかな?今後嫌にならないといいな。



 多分嫌にならないな。山っていいよ、素晴らしいなぁ......

 そこそこの難易度で自然が手付かずで残っているとこ、それで水場はある程度しっかりとしていて釣りとか出来る所を見つけられたら嬉しいかも。



 そのまま山道を進んでいると何かを発見。

 ん?アレはなんだろう。なんか人工物みたいな......大自然の中にあるには不自然に思えるほどに綺麗な建物がある。

 大きさはそれほどでもない......だけどしっかりとした造りの綺麗な祠......みたいなものだ。


 ......ちょっと鑑定してみよう。建物とかでも情報は見れるのかな?



 ▼精霊の祠
 長い時間この山を守護していた上位精霊を崇め、建立された祠
 今はいなくなってしまったその精霊を慕っていた精霊達が綺麗に保っている▼



 おぉぉ......ここはなんか神聖な場所だったのか。


 今でもキレイなこの山の為に、精霊が頑張ってくれてたんだね......


 何かしてあげられる事はないだろうか?

 掃除とかはする必要は無さそうだし......お花でもお供えようかな。


 んー......いや、でも生花をお供えしても枯れちゃうと寂しいよなぁ......


 それなら風化するまではキレイなままでいられる造花をお供えするしようか。


 花立と造花を喚んで、花立に水を入れる。

 そこに造花を挿して、祠の邪魔にならなそうな所へお供えした。
 その後は、手を合わせて軽いお祈りをしてから立ち去り、登山を再開。




 なんか心が洗われるような気持ちになれる場所だった。

 こっちの参拝の作法はわからないし、あっちでの作法もしっかりとはわからないので無作法になってしまっただろうなぁ......
 だけど今後、また似たような場所があれば手を合わせるくらいの事はしようと思えた。


 宗教とかは全然信じていないけど、遺物や歴史的な建物、神社仏閣は嫌いじゃない。


 この子も元は浮遊精霊だったからなのか、なにか思う所があったらしい。
 俺が手を合わせてお祈りしている時に、霧雨を出して周囲を潤していた。どんな意味があったのかは俺にはわからない。





 あの祠の後からは、何故か凄く気持ちよく山を登れるようになった。
 パワースポットとか行く人の気持ちがわかったかもしれない。不思議な力ってあると思えてきた。


 あんこは腕で抱かれたい気分らしく、抱っこをせがんできたので、祠を後にしてからは抱きしめたままずっと登山をしている。
ㅤぎゅっとしがみつくように俺に抱きついてきていて興奮する。すっごい嬉しい。


 夕方頃には山頂付近まで行けそうなくらいのペースで進めている。

 とても順調だ。というか順調すぎるくらいでちょっと怖いぐらい。

 ステータスを確認してみても何も変化はなかったから、この順調さは精霊さんの気まぐれだと思っておくのが良さそう。




 かなり順調に進めているので、ここらへんで一旦休憩でも取ろうかと思う。急ぎすぎるのも勿体ない気がするし。



 俺はコーヒーを、あんこは練乳を混ぜたミルクを飲みながら一休み。
 この子はかき氷を食べた時に、練乳にハマったらしい。嬉しそうにぺろぺろとしている。


 だけど練乳を直飲みするようにはならないで欲しい。やったとしても問題はないけど、俺の気持ち的な問題でなんとなくやらないでいてほしい。


 ん、おかわり?たーんとお飲みなさい。
 今度はちみつ入りのミルクも作ってあげるからね。



 休憩をした後は、またお嬢様を抱っこして山道を進んでいく。



 途中で寝ちゃったあんこのもふもふを楽しみながら山道を登っていった。

 ここまで順調だった登山だけど、空が急に暗くなってきて、順調な山登りは終わりを迎えてしまった......


 空を見上げると雲が真っ黒になっていて、これはすぐに降り出しそう。


 山の天気は変わりやすいと言うけどさ、こんな一気に変わるもんなのか?
 この後にすぐ雨が降ってくるのは雲の色を見ればわかる。

 やばいな、このローブに耐水は付いてない。
 急いで雨宿りができそうな場所を探さなきゃ......



 視界に映る範囲だけに絞って感知を拡げていく。洞穴みたいに穴の空いた場所とかないかなぁ......




 都合よく探知に引っかかった。今はこのまま行くしかないよね。


 進んでいる途中で雨が降り出しやがった......まだ洞穴に行こうとしている途中でしょうがっ!



 濡れてしまったけれど、洞穴へとたどり着く。

 そこは雪山で遭難した人が逃げ込むようなちょうどいい感じの洞穴だった。

 中には余計な物がいないという奇跡もついていて、なにかがそこに居た形跡もない。


 先客がいたらさすがに気まずかったから、いなくて本当によかった。

 現在の時刻は16時くらいで、休むにはまだ早いけれど濡れながら山道を歩くよりはマシだ。

 という事で、山頂までは当初の予定より距離が残ってしまったけど、これは仕方のない事と思って素直に諦める。


 今日はこの洞穴から、雨の降る山の景色を楽しむ事にしましょう。


 大粒の雨がビッタンビッタン打ち付けるような豪雨はさすがに苦手だけど、普通に雨が降っているのを見るのは嫌じゃない。





 だけど俺がそんな事を思っていたから、いつの間にかフラグが建っていたんだろう。
 急にすげー勢いで降り出してきやがった......うるっせぇっ!!


 うちの子はこんな音の中でも寝れていて羨ましい。

 寝るのが大好きなんだねぇ......
 まだまだ生まれたばっかりだもんな。寝る子は育つって言うから、いっぱい食べて、いっぱい寝て、すくすく成長していってね。


 俺はもうやる事が無くなった。コーヒーでも飲んでゆっくりしようと思い、火を熾してお湯を沸かす。

 時間を持て余してるのでインスタントではなく、ドリップするタイプのモノを楽しもうと思っている。


 こちらは全然詳しくないので、これから上手く淹れられるようになればいいな。

 自分で淹れるよりも、店淹れを飲めばいいじゃないかと思っていた。自分で淹れる楽しみも覚えておけばよかったわ......

 少量のお湯でフワッとさせ、そのまま蒸らした後にゆっくり円を描きながらお湯を注ぐ......それくらいの事しか覚えてないし、それがほんとに合っているかはわからない。

 そんな雑な知識でもそれなりに美味しく淹れる事ができるので、その道の人の努力に感謝をしましょう。


 コーヒーのお供にはロールケーキを付けて楽しむ。生地は外側のみで、生クリームがたっぷり詰まっているタイプの美しいロールケーキを。

 生地とクリームの両方を楽しむタイプではない、クリームを楽しむ為のロールケーキ。


 あの頃じゃ考えられない贅沢ができる幸せ。

 そう......一本食いをするのだ。
 恵方巻きの文化を、ロールケーキで代用する恵方ロールという文化もあるらしいから問題はないだろ。

 ......誰も咎める人がいないのに、こんな風に言い訳がましい事を考えてるのは謎だけど。罪悪感なのかな?


 コーヒーが完成したので一口飲む。店淹れのコーヒーには及ばないけど、個人で楽しむには問題ない味にできていた。
 酸味が強いのよりも、コクと苦味が強い方が好みです。



 そしてロールケーキへと手を伸ばす。

 口に広がる優しい甘み、口内をしっとり保つ脂分、ふんわり香るミルクの味、それがクドくなり過ぎない絶妙な量のスポンジ。

 あぁ素晴らしい......

 個人的に思う事は、生クリームに貴賎なし。

 重いのも軽いのも、甘さの強弱も、固さも。
 香り付けに何か足そうが、ミルクの香り、味を引き出して単体で勝負しようが......個人の拘りすべてを認めよう。
 全く同じ味などない。全てが違うからこそ、我々はお気に入りに辿り着く事を求めるのであろう。


 何が言いたいかと言うと、生クリームはおいしい。

 和菓子の餡子、洋菓子の生クリーム。
 主役クラスがお互いに手を取り合うW主演も俺は大好きだ。
 和と洋......国際結婚して仲睦まじく暮らしいている夫婦みたいだね。


 登山で疲れた体に甘味をぶち込み、変なテンションになってしまった。


 一旦コーヒーとタバコでリセットしよう。

 雨の降る中、薄暗い洞穴でゆっくり過ごすのも悪くないなぁ。

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