異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊

文字の大きさ
73 / 183

謎空間2

しおりを挟む
 隠し部屋もギミックも、そして謎解きや宝箱も無い。

 何かお楽しみ要素をください。

 ただただ続いていく道を進んでいく。

 いつもなら特に何も無いこんな空間にイライラしそうな所だけど、全く退屈と思わないし飽きも来ない。
 俺も変なんだけど、ウチの子たちも妙にテンションが高い。

 何か特別な空間なのかな?

 結構な時間を使ってしまったけれど、円が小さくなってきているので三階層目もそろそろ終わりが近いっぽい。

 あと一、二周で中央へ到着ってなった時、急にお嬢様がピノちゃんを口に咥えて走り出してしまった。

 急にそんな事をするから、噛み付いたのかと思ってびっくりしちゃったじゃないか!

 俺も急いで後を追って走りだす。


 中央に到着すると、綺麗な泉?

 砂漠のオアシスみたいな場所があり、その泉に浸かっているお嬢様と、浅瀬でパシャパシャしているピノちゃん。

 すっごい可愛くてハートフルな光景だけど、急にどうしちゃったのさ。

 こんなに自分を見失ったこの子たちは今まで無かったから、どうしたのか聞いてみる。

 お嬢様は......無理そうだから、ピノちゃんに。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 この泉に呼ばれたから......らしい。

 ピノちゃんも急に咥えられて、その上走り出されてびっくりしたんだって。
 呼ばれた!行かなきゃ!って状態にお嬢様がなっていたらしい。

 あー、うん。なるほどー。

 この泉は水属性の子か、精霊的な子ホイホイの場所なんだろうね。
 お嬢様が落ち着いたら、そこらへんの事を詳しく聞いてみよう。

 俺もようやく落ち着けたので、周囲を見渡してみる。
 空気も澄んでいてキレイな場所だ。

 今日はここで一泊する事になるっぽい。

 ウチの子たちはどちらも気を緩めまくりで、既にここから移動するって雰囲気ではなくなっているし。
 お嬢様は泉でプカーッと浮かんでいるだけ。全く動こうとしていない。

 ......寂しいけど放っておくしかなさそう。

 泉の近くにジャーキーとお餅を置いて、俺は夕飯にペ〇ングを食べる。普通の焼きそばのストックはあるけど、この何とも言えない不思議な味を無性に食べたくなる時がある。

 この日は俺が寝ようとする前にピノちゃんが戻ってきてくれたので、真っ白な寝袋を召喚で用意した。

 その寝袋に入って、白蛇のなんちゃってコスプレをする。
 ピノちゃんと一緒に地面をうねうねしたりして遊んでから寝た。
 途中で冷静になり、俺は何してるんだろう......ってなったのは内緒だ。



 ◇◇◇



 目が覚める。多分いつも通りの時間だ。

 起き上がろうとしたけど、上手く行かなくて転がってしまう。
 体がうまく動かせなくて、寝てる間に拘束された?とか思った。

 実際は、寝袋に入っていたのを忘れていただけだったのに。
 そのアホな場面を、誰にも目撃されていなくてよかった。

 それはさておき、俺の入っていた寝袋に侵入してきていたピノちゃんが胸元にいる。
 昨日の白蛇ごっこの後は別々に寝ていたのに......可愛いなちくしょう!
 頭から潜り込んだんだろう。しっぽがちょっとだけ出てるのがやばい。

 ありがとうございます。朝から嬉しさが限界突破しました。

 お嬢様の方を見てみると、未だにプカーッと浮かんでいる。
 一晩中プカプカしていたみたい。
 ふやけたり、風邪ひいたりはしないのか?

 置いておいたご飯は、お餅だけが無くなっていた。
 あんこはご飯すら食べなかったの。
 ちょっとマジで何をしてるの?どうしちゃったのさ。

 ピノちゃんにどうすればいいのかを相談してみたけど、何やってるかわからないからソッとしておけばいいって言われてしまった。

 そっかぁ。
 ......まぁそれしかないみたいだね。俺の体がモフみを求めて絶叫しているけど我慢します。

 今日はすべすべお肌だけを触ってから朝ごはん。

 ピノちゃんに煮卵を献上。
 食べ始めたのを確認してから、俺も自分の分を食べ始める。
 普通の白飯に、半熟の目玉焼き、ちょい焼き明太、きゅうりと白菜の漬物、そして味噌汁。

 日本の遺伝子に突き刺さる和食の美味しさ。贅沢を言えば和室で食べたくなる。
 急ぐ必要が無いのでゆっくりと朝食を楽しんだ。

 さて、今日はやる事がないぞ。
 お嬢様が何してるかわからない状態で動けない。

 よし。白玉を作ろう。
 完成品を出してもいいけど、これなら作り方もわかるし、ピノちゃんと一緒に作れそう。

 おっと、その前にピノちゃんの都合を確認しなきゃ。
 俺の膝で寛ぐピノちゃんに聞いてみる。

「今日なんかやりたい事あったりする?特に何もなかったら一緒におやつ作らない?」

 いいよーと、良いお返事を貰えたので、早速とりかかる。

 最初に手を洗って、ピノちゃんの体もキレイに拭く。

 それから白玉粉、水、ボウルとピノちゃん用作業スペースとして、シリコンマットを出す。
 滑りにくく、くっつかないのでこういった作業には向いている......と思う。


 先ずはボウルに白玉粉を投入。

 水を少しずつ入れて混ぜていく。

 耳たぶくらいの固さになったら準備終了。

 さぁここからがお楽しみのお時間でございます。
 ピノちゃんの前に一口大にした白玉をおいて、見本用の白玉を手で丸めていく。

 最後に窪みを作って完成です。

 手が無くても、ピノちゃんなら上手く作れそうな気がするから、白玉作りを一緒にやりたくなったんです。

 楽しそう!と乗り気なピノちゃん。頑張って作ってみて!
 自分で作ったりした物を食べてみて欲しい。食育ってヤツだね。

 しっぽと胴体を上手く使ってコネコネしている。そんな可愛い御姿を眺めながら、俺は俺でやりたいことを試す。

 食紅を取り出し、赤い白玉を作る。
 その後、多めの白玉を手に取り、細長く形作っていく。

 もうおわかりだろう。

 俺は今、白玉のピノちゃんを作成している。
 素のスペックだけでは難しいので秘奥義の指先の魔術師を発動させる。

 先程までとは比べ物にならないくらい、作成スピードとクオリティがあがる。
 本当にスキルってやべーモンだわ。

 人の手で作れる限界まで達したら、残りは糸で細かい所を調整する。

 最後に赤く色付けした白玉で、目と額の宝石を作って嵌め込めば完成。
 赤いのに白玉と呼んでいいのか?......いや、別にどうでもいいか。

 ......芸術品が完成してしまった。

 集中して作っていたから、かなり時間を使ってしまったけど。
 素晴らしい出来栄えすぎると自画自賛。

 ピノちゃんの方を見てみると、キレイな白玉が大量に作られていた。
 俺も手伝おうと思っていたけど、その必要がなかった。全部やらせちゃってごめんね。

 ......スキル発動無しで作った俺のよりも上手かもしれない。
 楽しかったか聞いてみると、またやらせて!と返ってきた。

 これから丸める系の物を作る時はお願いすることにしよう。
 上手に作れて偉いねーと褒めてから、仕上げにとりかかる。

 鍋に水を入れてお湯を沸かし、デカいボウルに水を入れてピノちゃんのスキルで冷やしてもらう。

 沸騰したお湯で白玉を茹で、浮いてきたら湯から上げて冷水で締める。
 出来たての白玉を口の前にまで持っていって、食べさせてあげる。

 白くて弾力のあるもの、それでいて甘さの少ないモノを好む......という今までのデータがある。
 多分気に入ってくれるはずだ。

 ......ドキドキしながら、結果発表を待つ。





 結果は大勝利!!

 自分の周囲にハート型の炎を浮かべてもぐもぐしている。
 初めて狙い通りの結果を叩きだせたぞ!
 ガッツポーズをした後に、記念撮影をして勝利の記録を残す。

 食べたいだけ食べてねーと、完成品を目の前に置いていく。
 そしてピノちゃんをなでなでしてから、俺は最後の仕事にとりかかった。

 白玉ピノちゃんをお湯に入れて茹でていく。模造品だから問題は無いんだけど、罪悪感がえげつない。
 リアリティを出しすぎた......もう少しデフォルメしておくべきでしたわ。

 茹で上がり冷水で締める。目が取れたり、型崩れしなくてよかった。
 完成した白玉ピノちゃんを収納。これのお披露目はまた今度で。

 俺も白玉を食べる。簡単にきな粉を振りかけただけのヤツだ。
 モチモチした食感と、きな粉の風味と甘さが丁度いい。白玉選手は餅に合うものなら大体合うユーティリティプレイヤーだ。

 ピノちゃんに味変する?と聞くも、いらないと即答。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ごめんなさい。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
 素の白玉を美味しそうに食べているのを見て、とても嬉しい気持ちになる。
 今度はあんこも一緒にやれるイベントを企画してみよう。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 食べ終わったピノちゃんは満腹で動きたくないらしいので、ロッキングチェアの上に寝かせてあげる。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
 お疲れ様。俺の道楽に付き合ってくれてありがとね。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 さーて、俺はもう少し頑張って、白玉を量産するとしましょうかね。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...