異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊

文字の大きさ
122 / 183

魔法の板切れっぽいモノ

しおりを挟む
 結局なんやかんやアラクネの国のお泊まりを楽しんでしまった。
 死ぬほど気持ちよく寝れたので、とてもスッキリしたお目覚め。前日の寝不足や疲れなどは全く残っていなかった。

 朝ごはんにお呼ばれしているのでもう少ししたら準備をし始めないとダメなんだけど、ちょっと布団ちゃんが濃厚な絡みをしようと誘ってきていて、レジストする事が出来ない。無敵とも思える俺の耐性を突破してくるとは......メイドインアラクネ恐るべし。
 これはアレだね、これだけ誘われているなら誘いに乗るしかないよね。据え膳食わぬは漢の恥と言う格言があるし。

 全てはこの吸い付くような肌触りと、包み込むようなフィット感を生み出してしまったアラクネたちの罪深さの所為だ。俺は悪くない。

 夢の中へ逝ってみたいと思うよね。ふふっふー。



 心地よい微睡みに身体を任せ、瞼を閉じたその瞬間、静かな室内に鳴り響くノックの音。さながら死刑囚を刑の執行へと誘う刑務官の如く......無慈悲な音が聞こえてきてしまった。

「失礼致します。もうすぐ朝食のお時間となりますので、ご用意をお願いします。寝具に不慣れなお客様は高確率で二度寝をしてしまいますので、僭越ながらお迎えにあがりました」

 二度寝阻止されたのは悔しいが、来賓の皆さんは布団ちゃんのお誘いから逃れられなかったらしいな!

「あー、ありがとう。用意するからもう少し待ってて」

 起きたくないけど、迎えが来てしまったので仕方なく起きて着替え始める。フォーマルの方がいいかなと思い、夜スーツを着用。

 あんこを起こしにかかるも眠そうなので、半分以上寝ているお嬢様の身体をブラッシングをして、身だしなみを整えてからお気に入りのリボンを付けてあげる。おねむなあんこがおしゃれさんに変貌してとってもラブリー。

 続いてピノちゃん、そしてダイフクとツキミも同様に可愛いリボンを付けあげた。皆オシャレさんで可愛いよ!

 意識が覚醒して、装飾されて可愛くなっている事にテンションの上がったウチの子たちを体中に纏いながら食堂へと向かった。メイドたちの嫉妬の目線が気持ちいい。

 案内してくれているメイドさんと無駄話をしながら歩いていると、とんでもない情報を得た。
 城内での一番人気はあんこ、二位からは大接戦でピノちゃん、ダイフク、ツキミの順らしい。

 順位付けなんかしてんのかと思ったけど、まぁあんこ以外はほぼ均等に人気があるらしいから黙っておく。
 あんこの一番人気は揺るぎないそうで、参考にと撮った写真のインパクトがヤバいらしい。

 俺の中での順位と似てるからなんも言えない。付き合いが長い程、それに比例して愛が深くなっている。まぁこれは仕方のない事だろう。だが皆大好き。これは嘘じゃない。

「俺は皆が大好きだよ」

 なんとなく口に出して言ってみる。口に出して言うことは大事。
 私もー!とあんこが乗ってきてくれて、そこからは皆が入り乱れてきて天国だった。朝飯には遅れてしまったが、悔いはない。
 報告が行っていたらしく、王族の方々からは冷たい視線を向けられた。待たせてごめんなさい。



 ◇◇◇



 食後、部屋に戻ろうとする俺を呼び止める王様たち。
 アラクネ国を出る前に、国の中を案内してあげると提案されたので、この誘いに乗ってみる。
 この国の通貨を持っていなかったので、持っている物を換金してもらおうと思い、換金場所を聞くも突っぱねられてしまった。

 王様が言うに、「この国での金銭のやり取りを永久に免除したとしても恩を返しきれない」って文句を言われた後、何やら家紋みたいなのが彫られた豪華な小剣を、王様から直接手渡された。

 説明を求めると、買い物の時にソレを提示すれば王家支払いで買い物ができると説明があった。アラクネ国内限定の無制限の魔法の板切れver小剣をゲット。やったね(棒)

 変なとこで小市民な俺は、きっとコレを有効活用できない。これを貰うくらいなら普通に金銭貰った方がよかった......と、内心ガクブルしている。余裕ぶっこいて翌月無事死亡って現象が何度かあったからね......ハハハ。

 少額のお買い物や、飲み食い限定で使おう。
 でも、人間相手にコレを渡されたら、破産させるまで使ってやろうと思えている俺は何なんだろうね。

 ......どっかで換金出来そうな場所を見つけたら、そこで溜まってる素材を捌こう。



 ◇◇◇



 はい、やってきました大通り。お供はいつものメンツ+俺専属のメイド兼小間使いに決まっていたらしい敏感メイドちゃん。
 王女が気楽に出歩いていいのかよと思ったけど、いつも気軽に拉致っている俺が言える事じゃないなと思ってスルーした。ダメならストップがかかるだろ。


 大通りを歩きながら店を観察していく。
 人間の国の王都で見るよりもよっぽどわかりやすい店構え、そして商品は高品質そうな物が揃っている。
 王城にペット連れの人間が招かれているらしいと噂になっていたみたいで、結構観察するような視線が飛んでくる。
 悪感情はないっぽいからただの好奇心。何故か王女よりも視線を集めているウチの子たち。

 あんこたちに目を奪われた後に、「あ、あれ?王女様、ようこそいらっしゃいました」と急に慌てだす店員が面白い。王女さんよぉ......もっと威厳を出そうな。


 大通りに並ぶ店を見ていって感じた疑問点がいくつかあった。
 店の看板にハンマーの絵やスナ〇キンの帽子みたいな絵が描いてある店がチラホラ。商品は金属製の品や陶器など。

 王女さんに質問をしてみると、陶器類や鍛治製品は輸入に頼っているらしい。ハンマーの絵はドワーフ製、帽子マークはホビット製だって。

 自分らで作るよりも本職のドワーフ(鍛治)やら、コロポックル小人族(陶器)やらに頼んだ方が質が段違いなんだと。
 ホビットってなんか木工が得意そうなイメージを持っていたけど、陶器類作成がヤバいらしい。

 ・鍛治=ドワーフ
 ・陶芸、ガラス=コロポックル
 ・木工、彫金=エルフ
 ・布製品=アラクネ
 ・建築=ギガント巨人族
 ・美容=フェアリー妖精さん

 詳しい説明を求めると、こんな感じですよって教えてくれた。
 他種族とはほとんど交流の無い亜人種だが、交易の類いは魔族としているらしい。十数年に一度、大規模な交換交流とかもしているとの事。

 知れば知るほど、人間共の見栄っ張り外交って無駄な努力なんだなぁと思う。
 もう魔族と亜人が連合して人間の国を支配しちまえばいいのに。今よりもよっぽどいい未来が待ってそう......と思ったけどダメだな、魔族や亜人がストマックペインになりそうだわ。


 王女さんの「何も買わないんですか?」って目線と、メイドたちの「せっかく無料剣をもらったんだから、ちゃんと使用したという事実を作ってください」っていうお小言に負けて、品物をある程度の数購入。
 ちなみに値段は一切見ずに購入していった。値札を見てしまったら尻込みしそうだったんだもの。



 ある程度買い物を済ませ、アラクネ国散策の後半は、アラクネ王女とメイド三人がウチの子たちをそれぞれ担当して歩いていた。時間経過で担当する子をローテーションしていくシステム。いつのまにか出来上がっていたんだよソレ。

 めっちゃいい笑顔のアラクネ女衆......いいなぁ、俺だけソロで寂しい......
 骨喰さんが自分が居るぞとアピールしてきているんだけど、君は癒し系の枠じゃないねん。気持ちだけ有難く受け取っておくよ。


 この日俺が購入した品は、今後ありがたく使わせてもらいます。
 召喚した品を使ってもいいんだけど、それだけだと味気ない気がしている。ご当地商品やその道のエキスパートが作った品は実にいい物である。

 その中でも保温効果の付いた深皿や丼、魔力を流せば洗浄される皿とかには心躍った。

 ・保温深皿、丼
 ・自動洗浄皿、小皿
 ・魔導ル〇バ
 ・魔導マッサージチェア
 ・シーツ、枕カバー、枕
 ・櫛
 ・バスタオル
 ・スパイス類

 結局この日はこれらを購入した。
 実にいい買い物でしたよ。王様よ、支払いはお願いします。


 帰り道はツキミちゃんが俺に抱っこをせがんできたので寂しくない帰り道だった。あんこは敏感メイドちゃんが気に入ってるみたいで悔しい......

 メイドだけソロで不満そうにしていたけど、戦中にいい思いをしていたらしいから今回は我慢しとけと言って黙らせる。



 それでもブーブーうるさかったので、骨喰さんを手渡そうとしたら今度はガチで黙った。
 震えながら、「わがまま言ってごめんなさい......それだけは勘弁してください」だってさ。

 俺以外が持つのは許さない感じらしく。プレッシャーが凄くて怖かったと教えてくれた。
しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...