異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊

文字の大きさ
178 / 183

アザラシ回

しおりを挟む
 ぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺち......

「キュキュキュキュウゥゥゥゥ!!」

 ぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺち......ぺちんっぺちんっペちんっ!

 なんだろう......ここは天国かな?

 もふっもふっもふっ......もふんっ。

 前足?  で、俺の顔をぺちぺちしていたと思われるアザラシが、今度は俺の顔面の上で跳ねていらっしゃる。
 次はどんなご褒美を俺にくれるんだろうと期待をしながら寝たフリを継続。

「「「キュウゥゥゥゥ」」」

 ......あっ......これらめぇぇ......!

 耳元で鳴いてるはずなのに、声を反響させているのか前方向から声がして、鼓膜と脳を揺さぶってくる。あ、だめ、これ以上やられたら滅びのキラキラストリームが出ちゃう......

「お、おはよう......早起きだね。どうしたのかな?」

「キュウキュウキュウ」てしてしてしてし......

 鳴きながら何かをアピールしているんだけど......ごめん、わけがわからないよ。
 何をアピールしているのかな?

「......飲み物?  トイレ? 暑い? ご飯?  ......あぁ、お腹が空いたんだね」

 それらしい事を挙げていたら、ご飯の所で反応が変わった。昨日よりも意思疎通ができる。この子結構頭がいいのかもしれない。

「キュムッ」

 うむ!  みたいな鳴き声を出した。何この子可愛い。

「じゃあ皆はまだ起きてないけど、先にご飯あげちゃうね。でも、今後起こす時は、脳を揺らすアレを使って起こそうとするのは止めてね。絶対だよ」

「キュッキュウ」

 ......頭がご飯でいっぱいになっているっぽいなぁ。

「次にアレを俺に向けて使ったら、その日のご飯はイワシ一匹になるからね」

「キュッキュ」

 本当にわかったんだろうか。まぁいいか。

 バケツ一杯のアジを与える。
 体積以上にご飯を収納できるファンタジーな胃袋だねー。どうなってるんだろう。
 バケツに頭を突っ込んでアジを貪り食うアザラシ子さん......もう少しお上品に食べてほしいものです。

 じゃあ俺も皆の分のご飯作りましょうかね。


 パン、ソーセージの盛り合わせ、オムレツ、コーンスープ、サラダ。朝は和食派だけど、やっぱり洋食もいいよね。



 食後、アザラシちゃんに名前を付けちゃおうと思っていたけど、アザラシはバケツに顔を突っ込んだまま寝ていた。起こすのも悪いから名付けは後回し。生臭くなった体を洗ってから、あんこの背中に固定して砂漠を進んだ。


 暑いのと強すぎる日射しにヤられたツキミちゃんとダイフクが俺のローブの中に避難してきたり、ワラビが流砂にハマってパニックになったりしたけど、海エリアみたいな理不尽な階段は無くてサクサク進んだ。

 そして特に語る部分も無く、55階層を攻略し終えてこの日の探索は終了となった。54階層からは昼夜が逆転したので、人を殺せる暑さからは解放。


 さて、ダンジョンは順調すぎて特筆すべき点が何も無いので、皆の妹であるアザラシ子ちゃんの話をしよう。

 アザラシ子ちゃんは朝にガッツリ食べて、それ以外の時間はほぼずっと寝ている。とっても可愛い。
 可愛いんだけど......懸念事項が二つあるんですよ。

 先ず一つ目、この生活サイクルのままスクスク育っていったら、何れあんこが背負えなくなりそうな雰囲気があるって事。

 アザラシって皮下脂肪溜め込むし、かなりデカくなるじゃない?
 まぁ、そこら辺は俺や天使たちの誰かがアザラシ子に注意すればいいんじゃないのだろうか......となる。

 だが、それは無理難題だ。
 そんな事を言ってしまった日には、天使たちから心だけをタコ殴りにされるしまうだろう。

 あんこもツキミちゃんもダイフクもワラビも、今か今かと心待ちにしていた初孫を見る老夫婦のような優しい目で、すやすや寝ているアザラシ子を眺めているんだもん。そりゃあもう、隙あらばアザラシ。

 あんこの背中でキュウキュウ言いながら寝ているのを眺めるのがマイブームになっているのよ。
 ピノちゃんがアザラシ子と邂逅したら、文句を言いながらも速攻で堕ちるんだろうなと思う。ヘカトンくんはめっちゃ世話焼きそう。


 そして、そんな愛され末っ子アザラシちゃんに関する懸念事項二つ目......どのタイミングでテイムしようか......だ。

 多分テイムしたら、ワラビに今まで内緒にしていた事がバレる。俺のキメラ最終形態になるまでテイム状態にしない計画が白日の元に晒されてしまう。

 ここまで黙っていたのなら、もういつ暴露しても結末は一緒だよね......誰にも相談出来ないことも相俟って、バレるまではもうずっと黙っていたいと思っているが、アザラシ子の安全の為にはテイム状態にした方がいいから迷っている。誰か助けて。


 はぁ......考えても考えても、何もいい案が出てこない。とりあえず今日はここで休もう。この階層は夜の砂漠だから昼の砂漠よりも過ごしやすい。



 ◇◇◇



「キュキュキュウ」

 今日も昨日のように顔をぺちぺちされて起こされる。
 昨日寝る前に必死で考え抜いた結果、この子をテイムしてしまおうとなった。

 レベルが上がっても、月日が経っても......みんなあまり大きさが変わらないから、モンスターでも魔力の大きさ云々で成長具合も変わるんだと結論付けた。いつまでもちっこいままでいて欲しいという俺のわがままだ。

「ちょっと肌寒いから一緒に温泉入ろうか。お話したい事もあるし」

「キュウゥ......」

 はいはい、お腹空いてるんですね。わかりましたよ。

「お腹いっぱいになるまでは食べさせないよ。残りは話をした後でね」

 悲しそうな顔をしたアザラシに、バケツの四分の一くらいの量のアジを与えてから温泉へ向かった。



「キュッキュウ!!」

 温かいお湯も余裕なアザラシが湯船の中を泳いでいる。俺が湯船に入るとパシャパシャ泳いで寄ってきてくれた。

「これから何個か質問をするから、はいなら水面を一回、いいえなら水面を二回叩いてね」

「キュッ」パシャ

 可愛いお返事と共に水面が叩かれた。可愛い。

「じゃあ聞くね。このまま俺らと家族になってほしいんだけど、どうかな?」

「キュウ」パシャ

 おっしおっし!!  お許しが出てよかったにゃァァァ!!

「ありがとうね。あー、そうそう。体は大きくなった方が嬉しい?」

「キュキュ」パシャパシャ

 ノーと言えるアザラシ。大きくなりたい願望があれば、ここでのテイムは見送っていた。

「これから俺が君に名前を付けるけど、それは受け入れてくれる?」

「キュウキュウキュウキュウ!!」パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ......

 ............興奮してるのかな。イエスかノーかわかりにくい。

「俺が名前を付けてもいいってことかな?」

「キュ」パシャ

「キュッキュウ」パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ

 イエスの後に、はよ名前付けろやコラァ!!  って事でいいのね?

「ありがとう。じゃあこれからもよろしくね“ウイ”ちゃん。後は、俺の指から魔力を吸ってくれればお話は終わりだよ」

「キュキュキュゥ」

 俺の指に吸い付いて魔力をチューチューするウイちゃん。外郎ういろうからアイディアを貰ってウイちゃんになった。ウイローだと可愛さが皆無だし、毛の奥に隠された地肌がムチプニで気持ちよかったからこうなった。羊羹よりも外郎って感じの触感。

「キューゥ」

 お腹いっぱい!  って感じで指から口を離し、ラッコのように温泉に浮かんでいる。しっかりパスも繋がったので無事終了。

 あんなにグダグダと考えていたけど、やってよかったわ。ウイちゃん可愛いよ、ウイちゃん。



 ............あれ?ちょっとウイちゃん光ってる。

 まさか......進化......!?


「あ、終わったっぽい」

 数秒だけ発光したけど、直ぐに元に戻った。
 進化を果たしたウイちゃんは、目と毛の色に若干赤みが差した。大きさや愛らしさは変わらない。

 なんで進化したんだろう。不思議ダナー。

 ▼ウイ

 温泉フォーバスㅤ0歳ㅤ

 レベル32ㅤ魔力---/---

 スキル:【エコー】【水泳】【潜水】【気配遮断】【泉質吸収】【闇魔法】

 アザラシ型魔物の特殊進化個体
 温泉が大好きで温水も冷水も大好きだが、暑さには弱い
 温泉に入るとバフが掛かり、バフの内容は入った温泉の泉質で変わる
 特殊な音波を操る
 食べる事、寝る事、甘える事が大好き▼

「......おっふ」

 0歳児再び。名実共にウチの末っ子ですわ。
 それよりも、見た目変わっちゃった。言い訳......うまく出来るかな......ハハハ。
しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...