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(私……私、とってない)
しおりを挟む大雪が降ったり、合間に晴天になったり。
とにかく安定しないこの頃の天気 。
そんな中でも。マミは、拓眞との メールのやり取りをして。 気持ちを聞いてもらう事で。 すごく、心穏やかな気分で、毎日過ごせてるな。って。 「楽しいな」 って思ってた。
その日、デイサービスの送りのため、送迎バスにて お年寄り等の補助をしていたマミ。
認知症を煩い、 昔の出来事はよく覚えているのに、 今この時の記憶を中々止めておくことの難しい、 利用者。お客様の、山際糸《やまぎわいと》さん。を 自宅に送り届けた時だった。
玄関先で 、これから出かけるという、糸さんの 孫で、 高校三年生の 男の子と、かち合って……
『アンタ、〇✕□◇……っ!』
マミの顔を見た途端、かなりな早口で 。マミに向かって怒鳴ってきた少年。
マスクをしているためか 『アンタ』しか聞き取れなくて……
(すごく怒ってる?)
とにかく。聞き取れなかったと、伝えるしかないと 。
逃げ出すなんてできなくて。
マミが、 勇気を振り絞って 口を開こうとした瞬間。
「神咲、 あんた何してくれたの? 下駄箱の上に置いておいた財布あんたが取ったんでしょって、おっしゃってるよ。会社に……いえ、山際さんに迷惑……謝っても 許されない事してさ! ふざけんじゃないわよ!」
同僚が 。一緒にデイサービスの送迎に回っていた、先輩の種橋《たねはし》が。
マミの、 背後から。左耳に口元を近づけて叫んできた言葉は……
サイフ? 下駄箱? アンタガトッタンデショ……?
種橋の言葉がぐるぐる回ってる ……
(私……私、とってない)
あまりのショックに。怖さに 言葉が出なくて……
種橋が。 会社に連絡を入れるために携帯電話を取り出して……
「ありがとね」
それまで、一連の会話を聞いていたのか。聞いてなかったのか。糸さんが車椅子から立ち上がると。
遠出の時は、車椅子は使用するが。普段は杖を使えば、一人で歩ける糸さんが玄関先に置いてあった杖を取り、 自室に歩いて行って……
頭が真っ白だったマミは。
その時、糸さんが少年に何かを話しかけているのを、見ていなくて。
逃げだすなんて卑怯だって、思ったけれど。
(……たすけて……!)
気づいたら、マミは山際家から駆け出し、逃げ出していたのだった。
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