上 下
27 / 96

一抹の不安

しおりを挟む
    父も母も

 「爽に側室を迎えるのは時期尚早ではないのか?まだ一年ではないか?」

 そう、楓菜姫に説いて来た。

  楓菜姫 も、いずれは……と。授かりますように。と、心の中では祈っていた。

しかし。

 
「『あらゆる事を想定して、先々と物事をきめる事』と、言われたのは、母上様ではありませんか」


  そう言葉を返して来た娘に、楓希の方も陽も何も言えなくなってしまったのだ。


 「確かに申しました。『稜禾詠ノ国を治める者として……』と。陽……『こうより、私事を優先なさい』。と言ってあげたいと思うのは……」

 涙で、言葉を紡げなくなった、楓希の方に、陽は。

「間違えておりませぬ……私も同じ気持ちですから楓希姫」


楓希の方と、陽。『公』では、『楓希の方と、殿』から『楓希姫と陽』"ただの夫婦めおと"としての時を過ごす時。

 己にしか……己にだけには、心の中の物を全てさらけ出せるようにして差し上げたい……

涙する楓希の方を抱きしめながら。

 「爽は楓菜姫への想いを自らの想いを自らの口で告げた強く、優しき男です。楓菜姫の心に寄り添い続けてくれると信じて。親として、楓菜姫の幸せを祈りましょう」

 楓希の方へ告げながら。爽に対しては。楓菜姫を支え、守れるのは、爽以外いないのだから……頼む

 似た境遇の爽……己が出来なかった事を叶えた爽 ……

   楓菜姫は幸せになれると思っていたのに……楓菜姫が苦しみ、悲しむような出来事が起きねば良いが……


  陽は、一抹の不安……気持ちがざわめくの止められなかった……





 
 






 
しおりを挟む

処理中です...