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暗雲
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人は、夢を抱く。思い描いた未来を生きる人は稀《まれ》。いつしか人は夢に折り合いを付け、今置かれた場所で、もがきながら生きて行く……
(ふんっ、なんと愚かなっ姪だっ)
政岡外喜は、荒々しく凛実の方の部屋の障子戸を締めて、心の中で毒づいた。
『叔父上様、叔父上様の思い描いておられる事が政岡家の総意であるならば。鈴様の益になるのなら、協力も致します。しかし、桜家の統治にほとんどの家臣も。稜禾詠ノ国の民達も不満など抱いてはいないのですよ?』
「小娘が……こしゃくな……政岡家の統治で満足している兄の瑠喜など論外! 十年前、楓菜の方と爽に代替わりし。楓禾姫が誕生日した際に『機を逃すな!』と『桜家に替わり、政岡家で稜禾詠ノ国を治めるぞ!』声高に叫んでいた奴らも……桜家の家臣達と反目するので精一杯で役に立たぬし!」
楓希の方と陽の力と支え、家臣達の支えにより、若さゆえ統治能力を不安視されていた、楓菜の方と爽が成長して行き、桜家の安定が図られつつあるのに。外喜と、一部の家臣がそこに気付かない……
争い事など、力で勝った物こそが人を支配出来る。その価値観の中でしか生きられない……己の存在価値を見出だせない。それが外喜という人物であった。
──
-ドスドス-
荒々しく、足音をたてながら、場内の執務室に向かい歩き出していた外喜。
後ろから衣擦れの音……?
(曲者っ?)
勢い良く振り返った先。
使用済みのお茶道具を手にした持女……
(驚かせおって……ん? この娘。凛実の方の部屋にいた……)
持女は、持女で驚いていた。 目の前を歩いていた人物に急に立ち止まられ。それも眼光鋭く睨まれているのだから。
「そなた名は?」
「は、はい。忽那こずえと申します」
「忽那?」
その名前に、 引っかかりを覚えた外喜。
忽那という苗字で思い当たる人物はただ一人……
「忽那基史の娘か?」
「はい」
基史は、楓菜の方に近しい……朝比奈勇と懇意の人物。
「ふーん……父親に私を……凛実の方や、鈴若を見張るように言われたか?」
「え?」
こずえには、外喜の言葉の意味が分からなかった。
桜家に、奉公に出たいと夢を見た少女。確かに、父が庭師として仕えている縁もあって、奉公に上がる事を許された面もあるやも知れないけれど……
雇う際の、針仕事や、洗濯に炊事能力などの試験も受けているし。凛実の方より『持女として仕えて欲しい』と、打診されたのだ。
こずえには、父の基史がお庭番的な仕事をもしているなど、知らなかったのである。
「そ、そのような事はありません」
(父が疑われている?)
父を守りたくて。こずえは必死に否定して。
そんな、こずえを見つめながら。
「こずえと申したな。使いを頼まれてくれぬか
?」
外喜は、こずえにそう言うと……
(ふんっ、なんと愚かなっ姪だっ)
政岡外喜は、荒々しく凛実の方の部屋の障子戸を締めて、心の中で毒づいた。
『叔父上様、叔父上様の思い描いておられる事が政岡家の総意であるならば。鈴様の益になるのなら、協力も致します。しかし、桜家の統治にほとんどの家臣も。稜禾詠ノ国の民達も不満など抱いてはいないのですよ?』
「小娘が……こしゃくな……政岡家の統治で満足している兄の瑠喜など論外! 十年前、楓菜の方と爽に代替わりし。楓禾姫が誕生日した際に『機を逃すな!』と『桜家に替わり、政岡家で稜禾詠ノ国を治めるぞ!』声高に叫んでいた奴らも……桜家の家臣達と反目するので精一杯で役に立たぬし!」
楓希の方と陽の力と支え、家臣達の支えにより、若さゆえ統治能力を不安視されていた、楓菜の方と爽が成長して行き、桜家の安定が図られつつあるのに。外喜と、一部の家臣がそこに気付かない……
争い事など、力で勝った物こそが人を支配出来る。その価値観の中でしか生きられない……己の存在価値を見出だせない。それが外喜という人物であった。
──
-ドスドス-
荒々しく、足音をたてながら、場内の執務室に向かい歩き出していた外喜。
後ろから衣擦れの音……?
(曲者っ?)
勢い良く振り返った先。
使用済みのお茶道具を手にした持女……
(驚かせおって……ん? この娘。凛実の方の部屋にいた……)
持女は、持女で驚いていた。 目の前を歩いていた人物に急に立ち止まられ。それも眼光鋭く睨まれているのだから。
「そなた名は?」
「は、はい。忽那こずえと申します」
「忽那?」
その名前に、 引っかかりを覚えた外喜。
忽那という苗字で思い当たる人物はただ一人……
「忽那基史の娘か?」
「はい」
基史は、楓菜の方に近しい……朝比奈勇と懇意の人物。
「ふーん……父親に私を……凛実の方や、鈴若を見張るように言われたか?」
「え?」
こずえには、外喜の言葉の意味が分からなかった。
桜家に、奉公に出たいと夢を見た少女。確かに、父が庭師として仕えている縁もあって、奉公に上がる事を許された面もあるやも知れないけれど……
雇う際の、針仕事や、洗濯に炊事能力などの試験も受けているし。凛実の方より『持女として仕えて欲しい』と、打診されたのだ。
こずえには、父の基史がお庭番的な仕事をもしているなど、知らなかったのである。
「そ、そのような事はありません」
(父が疑われている?)
父を守りたくて。こずえは必死に否定して。
そんな、こずえを見つめながら。
「こずえと申したな。使いを頼まれてくれぬか
?」
外喜は、こずえにそう言うと……
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