Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石~Ⅵ

桜花(sakura)

文字の大きさ
35 / 96

お茶の誘い

しおりを挟む
 楓菜の方の部屋-


「失礼致します。楓菜の方様。今よろしいですか?」



 湖紗若をあやしていた楓菜の方は。

「 ええ大丈夫よ」

 障子戸の外から声を掛けて来た 、乳母の早月に答えると。

「凛実の方様付きの侍女のこずえが、お伝えしたき事があると参っております」

「こずえが? 分かりました。部屋に入ってもらってちょうだい」 


 楓菜の方は少し訝りながら、 返事を返した。

 楓菜の方も、こずえの事は知っていて、庭師の基史の娘で。気立ても良いので。出来れば私付持女にしたかったくらいだわ。そう思い、残念がっているのであった。

 緊張した面持ちで部屋に入り、障子戸の近くに座ったこずえに。

「 そんなに緊張しなくても良いのよ。こずえ? どうしました? 凛実の方に何かあったのですか?」

 わざわざ、 自分の所来たのは……

( 凛実の方に何かあったんじゃ?)

 そう考えるに至り、慌ててこずえに問い返すと。

「いえ。凛実のお方様におかれましては、体調崩されてるという事はございません。『湖紗若君様と共にお菓子など頂きながらお茶を致しましませんか? と お誘いしたい』と申されまして。楓菜のお方様の返事を。都合を聞きに参ったのでございます」 

 珍しい事があるものだ……と楓菜の方は正直思った。 正室である自分から、お茶の誘いをした事はあるが……凛実の方からは初めてだ。それに、湖紗若と一緒にと…… 


 しかし、楓菜の方はすぐに思い直した。凛実の方。いつも自分の立場を誇示たりせず控えめなの方。 幼き頃からの関係せいの為であろうか? 時に爽に対して、遠慮なく物を言ってしまう自分。凛実の方の柔らかい雰囲気に、爽は癒されているのではないか? と思うのだ。 

(そうね。ゆっくり 話をしてみたいわ)

 楓菜の方は、そう思い至ると。

「 こずえ、支度が出来次第、凛実の方様の部屋に参りますのでと。先に戻ってお伝えてして下さい」

「かしこまりました」 

 こずえはそう返事をすると部屋を出て行った。

「 楓菜の方様、 大丈夫でしょうか? 私も付いて参ります」 

 警戒心をにじませている早月。 

 少し、顔色も悪い。けど……

「早月。悪いけど、剣術の稽古に出掛けてしまって帰ってくる気配のない楓禾姫を、ここで待っていてちょうだい。帰って来たら『次はお花の稽古です』と。 逃がさないでね(笑)」

「ほほほ。 かしこまりました。楓菜の方様。(笑)」

 途端に表情を崩して笑った早月に、 ホっとし。後を託すと。

 楓菜の方は凛実の方の部屋に、湖紗若と共にむかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?

3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。 相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。 あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。 それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。 だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。 その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。 その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。 だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

神楽坂gimmick

涼寺みすゞ
恋愛
明治26年、欧州視察を終え帰国した司法官僚 近衛惟前の耳に飛び込んできたのは、学友でもあり親戚にあたる久我侯爵家の跡取り 久我光雅負傷の連絡。 侯爵家のスキャンダルを収めるべく、奔走する羽目になり…… 若者が広げた夢の大風呂敷と、初恋の行方は?

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】 私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。 そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、 死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。 「でも、子供たちの心だけは、 必ず取り戻す」 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。 それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。 これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

処理中です...