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遂に…対峙の時③

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 風音side

 風歌ちゃんとるなちゃんは、お年寄り達に尊敬の念 待って、心を込めて介護してきたのですものね

 本当に信じられないわ。施設側の介護に対する考え方。お年寄り達への態度

 風音「風歌ちゃん、るなちゃん。自分の想いの丈をぶちかましましょうか?」

 余りにショックが大き過ぎたのか
 空虚な瞳に涙を溜めて
 一点を見つめている
 風歌ちゃんとるなちゃん

 そう言うと
 潤んだ瞳に光を宿して……

 るな「 お年寄りは人生の先輩なんです。今は改善されましたけど、みんなで畳に寝かせて おむつを替える時だって、何の仕切りも無しに替えるなんてそんな可哀想な事ないじゃないですか!」

 倫「そうだよな。るな分かるよ」

 パパがちっちゃく頷きながらそうだよなって…… 心が涙でグチャグチャなココロノナカを、感情だけで話してるのに『分かるよ』って……

 風歌「お年寄りに対しての物言いが上から目線なのは間違ってと思いませんか? なるべくお年寄りの残された機能を大切にして出来る事をして頂く事が大切と言いながら『自分でさせて!』って……ご自分で服を着られる方には声かけのみ見守りで良いけど…… 麻痺の残る手でどの様にご自分で着て頂けば良いというんですか?」

 るな「 食事にお薬を乗せたりとか 、車椅子にベルトで…… 紐で手すりに結ぶとか、ベッド柵に紐を……手足をなんてありえないと思わないんですか?」

 風歌「何より許せなかったのは、お年寄り達への態度です。貴方方は長袖シャツを着て長袖の服を着た際に中に着ているシャツの袖がくしゃくしゃと捲られた状態であったらどう感じますか?」

 倫「不快で仕方ないよな。風歌、るな」

 パパが話に、一つ一つ答えてくれるのが嬉しくて…… 心が涙でグチャグチャなココロノナカを、感情だけで話してるのに『分かるよ』って……

 るな「脳梗塞とかで片側に麻痺が残っても、動く方の手でお年寄りは上手く服のボタンを止めたり、おしぼりだって巻く事が出来るんです。出来ない所を介護者が手伝うんです」

 倫「出来ない事を『一人でやらせろ』とかありえないよな」

 風歌「少しでも快適に過ごして 頂きたいと思いませんか? 不快感を感じない様に介助者が捲れた中のシャツを手首の所まで伸ばして差し上げる。それを介助というと思いませんか? 『そんな事しなくていいから』『自分でさせて』先程と同じ事。不自由な方の手のシャツは動かせる手で直せても……患側の手ではもう片方のシャツを下ろす事は出来無いんです。万事そんな感じで対応しましたよね?」

 るな「出来ない事をするという事は、時間が掛かるという事なんです。なのに『早くしなさいよ』とかお年寄りに 矛盾した事を言うなんてありえません!」

 風歌「食事も、靴を履くのも。ほんの少しだけお手伝いするのが介護です。貴方達のお年寄りに対して『まだ出来ないの?』『早く食べて』『早く服着て』『 何、おむつ外してんの?』心の無い人になぜ介護という仕事を選んだのですか? と問いたいです。お年寄りは人生の先輩なんですよ? 人権を無視した様な態度取る事は到底許されるものではないんです。自分のイライラを相手にぶつける事程、みっともなく愚かな事ないの!」

 倫「こんな矛盾に一番抵抗したかったのは……お年寄りだったんだよな?」

 るな「お年寄りは、何をしても何を言っても分からないだろうから。なんて。アナタ達の勝手な言い分なんです。 お年寄りが同じ事何回も言うのはその人にとって初めて言う事だから。脳の傷付いてしまった部分によって 一人一人 症状がちがうの!」

 倫「分かるよ」

 溢れる思いが止まらなくなっちゃって……

 るな「芳井 《よしい》さんは、 むやみやたらに怒ったりしてるんじゃありません。 介護する側の態度や言葉に怒ってらっしゃったんです。左側の脳が傷付いてしまって、右側の半身が麻痺して怒りっぽくなってしまったのは症状の一つなんですよ? 介助者が四つ折りまでしてお渡しすると動かせる左手で巻いて下さるおしぼりは本当に綺麗だったわ!」

 涼也『あの日も、種橋や市の職員に対す態度を怒ったんだもんね……』

 リョウくん……

 るな「上手に話ができないお年寄り達と 会話をしながら作業するのだってリハビリの一つなんです。『ぺちゃぺちゃと話しながら、仕事してんじゃないよ』『そんなに悠長に、おしぼり巻きをさせたりとかしてるんじゃない 』無駄話とかただ自分が楽をしたいが為にお手伝いしてもらってた訳じゃありません。だから気にしないって思ってました。でも芳井さんが庇って下さた時私は本当に嬉しかった……」

 涼也『ずっとずっと、るなちゃんや、ふうちゃんが理不尽な事で怒られたり、 何か言われたりするのを見ていて下さったんだよね』

 思わず感情的になってた……

 英士『風歌ちゃんは、ヴィント、ルーナ、ベルクの様に頑張ったんだもんね』

 風歌「あの日……曖昧なんです……入浴介助の時、お年寄りの洗髪や、身体の洗い方の介助を市の職員が二人。介護サービスの職員が一人。着替えの介助に市の職員が二人。介護サービスの職員が二人。そして湯船に浸かっているお年寄りの見守りをする市の職員が一人……居たんですよね?」

 何回もリョウくんが話してくれて、るなちゃんが日記にまとめていてくれた……

 風歌「市の職員は私語をしていましたよね? ……洗い方をしながらですよ? 見守りの職員は時にお年寄りから目を離して……るなちゃんは洗い方をしながら怖かったって……御厨さんは脱衣場で着せ方をしながら、市の職員が余り動かないから奮闘してた。私は着せ方をしながら『湯船から上がる』と合図があるとお年寄りを向かえに浴室に行く係を……嫌な予感がしてました……案の定来栖さんがバランスを崩して湯船に沈んでしまわれた……違いますか?」

 英士『風歌ちゃんは『危ない!』って叫んで助けたんだよ』

 風歌『るなちゃんが日記に残していてくれたんです。詳しくは読んで下さい。 私語ばかりして、お年寄りを見ていないアナタ達市の職員……バランスを崩された来栖さん……怖かったでしょうね……」

 るな「来栖さんはふうちゃんが助けて身体を支えたんです。怖くてバタバタとされてた来栖さんを……ふうちゃんは支え切れずに……着せ方をしていて動けずにいた御厨さんが手の空いたタイミングで浴室へ行きましたよね? ……『オイ! 何やってんだよ! ふざけんな! 』って叫んで……ふうちゃんと来栖さんを助けたのは御厨さんです……この日の事は記録に記しました。アナタ方は間違いなく覚えているはず……違いますか?」

 英士『風歌ちゃん頑張ったね』

 風歌「それでも《その様な事は無かった》と、貴方方はまだおっしゃるのですか?」

 英士さん……

 倫「風歌、るな。やっと自分の想いを言えたな……すいませんけどね。次は私から……」
















































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