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「今大会の優勝はライアンに決定だ。」
途端に沸き上がる観客の大合唱。全員がライアンの優勝を祝福する。だが、主役であるライアンは表情は変わらない。学園1の美少女と目が遭っても、学園1の美女の前を通り過ぎても彼は眉毛すら動かさない。
「ライアンおめでとう。」
そんな彼の行く手にはひとりの少女がいた。装飾品が散りばめられた綺麗なドレスに身を包んだ少女を見ると、ライアンの顔が綻ぶ。ライアンは少女の手を取ると、方膝を付きそっと手の甲に触れるか触れないか分からない接吻をした。
「私は姫様のナイトとして当然の結果を残したまでです。」
「ありがとう。」
ライアンに姫と呼ばれた少女は、リリア・ホップル。この国の第2王女である。イヤ、違う。そういう設定なのだ。
「私は命に変えて、姫様を守ると誓いましょう。」
ライアンの宣言に姫の口元が歪むが、扇で顔を隠したので周りの者は誰も気が付かない。周囲の女子達は姫に対して、嫉妬の視線を向ける。美形であり女子の憧れの的であるライアンは学園の人気者であった。
そして、姫である少女は身分を枷にライアンをいいなりに扱う嫌われ者であった。まあ、実際は只の噂であり、姫はライアンに対して命令をした事は1度もなかった。寧ろ、出来ないと言った方が正しかった。
(これでまた、嫌われたな。)
だが、姫は周囲の女達の視線を物ともしない。姫にとって女の視線は全然対したことはなかった。
「この炎天下の下にいて、姫様も疲れたことでしょう。部屋で休まれたらどうですか。」
「ありがとう。」
この後は表彰式だが、ライアンは姫の手を握り部屋までエスコートを開始した。彼等にとってこれは日常である。姫のすることに文句を言う教師はいない。彼等は誰にも邪魔されることなく悠々と歩いていった。
「今日のあの態度は何ですか。表彰式くらい出て下さい。また俺の評判が悪くなるじゃないですか。」
「だって、表彰式なんてお偉いさんから頑張りました、って言われてメダルを貰うだけでしょう。そんな面倒な物は出たくないわ。」
先程までの忠誠心はどこに消えたのか。部屋の中では、ライアンと姫の言い合いが始まっていた。そして、この言い合いは少し妙であった。
この部屋の中に他人が紛れ込んでいれば、確実に突っ込みや悲鳴が上がるほど妙であった。
「私は自分のやりたい事をする。その為にライアンがいるのよ。ライアンはこれからも私の身代わりとして、生活しなさい。よろしくね。に・せ・ひ・め・さ・ま。」
そう、姫と呼ばれた少女は本物の姫ではない。偽者の姫なのだ。この国の姫は幼い頃から、剣術が好きな男まさりな性格であった。国王達はそれも個性だと放置していたが年々悪化。何と幼馴染のライアンと立場を入れ替え、学園に入学するという奇行に走ったのだ。
しかも、国王も面白そうだとそれを許可。こうして護衛の格好をした姫と、姫の格好をした護衛(偽姫)が出来上がったのだ。
「余り迷惑を掛けないで下さいね。」
「はーい。」
姫の格好をしたライアンは、タメ息を吐きながら今日も本物の姫、リリアの護衛を続けるのだった。
途端に沸き上がる観客の大合唱。全員がライアンの優勝を祝福する。だが、主役であるライアンは表情は変わらない。学園1の美少女と目が遭っても、学園1の美女の前を通り過ぎても彼は眉毛すら動かさない。
「ライアンおめでとう。」
そんな彼の行く手にはひとりの少女がいた。装飾品が散りばめられた綺麗なドレスに身を包んだ少女を見ると、ライアンの顔が綻ぶ。ライアンは少女の手を取ると、方膝を付きそっと手の甲に触れるか触れないか分からない接吻をした。
「私は姫様のナイトとして当然の結果を残したまでです。」
「ありがとう。」
ライアンに姫と呼ばれた少女は、リリア・ホップル。この国の第2王女である。イヤ、違う。そういう設定なのだ。
「私は命に変えて、姫様を守ると誓いましょう。」
ライアンの宣言に姫の口元が歪むが、扇で顔を隠したので周りの者は誰も気が付かない。周囲の女子達は姫に対して、嫉妬の視線を向ける。美形であり女子の憧れの的であるライアンは学園の人気者であった。
そして、姫である少女は身分を枷にライアンをいいなりに扱う嫌われ者であった。まあ、実際は只の噂であり、姫はライアンに対して命令をした事は1度もなかった。寧ろ、出来ないと言った方が正しかった。
(これでまた、嫌われたな。)
だが、姫は周囲の女達の視線を物ともしない。姫にとって女の視線は全然対したことはなかった。
「この炎天下の下にいて、姫様も疲れたことでしょう。部屋で休まれたらどうですか。」
「ありがとう。」
この後は表彰式だが、ライアンは姫の手を握り部屋までエスコートを開始した。彼等にとってこれは日常である。姫のすることに文句を言う教師はいない。彼等は誰にも邪魔されることなく悠々と歩いていった。
「今日のあの態度は何ですか。表彰式くらい出て下さい。また俺の評判が悪くなるじゃないですか。」
「だって、表彰式なんてお偉いさんから頑張りました、って言われてメダルを貰うだけでしょう。そんな面倒な物は出たくないわ。」
先程までの忠誠心はどこに消えたのか。部屋の中では、ライアンと姫の言い合いが始まっていた。そして、この言い合いは少し妙であった。
この部屋の中に他人が紛れ込んでいれば、確実に突っ込みや悲鳴が上がるほど妙であった。
「私は自分のやりたい事をする。その為にライアンがいるのよ。ライアンはこれからも私の身代わりとして、生活しなさい。よろしくね。に・せ・ひ・め・さ・ま。」
そう、姫と呼ばれた少女は本物の姫ではない。偽者の姫なのだ。この国の姫は幼い頃から、剣術が好きな男まさりな性格であった。国王達はそれも個性だと放置していたが年々悪化。何と幼馴染のライアンと立場を入れ替え、学園に入学するという奇行に走ったのだ。
しかも、国王も面白そうだとそれを許可。こうして護衛の格好をした姫と、姫の格好をした護衛(偽姫)が出来上がったのだ。
「余り迷惑を掛けないで下さいね。」
「はーい。」
姫の格好をしたライアンは、タメ息を吐きながら今日も本物の姫、リリアの護衛を続けるのだった。
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