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「朝か……」
枕元でピピピと鳴る目覚まし時計を慣れた手つきで手早く掴んで止め、頭上を仰ぎ見ると穏やかな寝息を立てている直人の寝顔がある。
国重邸に来て一週間、毎朝直人の腕の中で目覚めている。
毎晩母親と眠っていた直人は、母親と離れて眠る寂しさを、その代役の俺で満たそうとしているのだ。
一晩中俺を抱いて離さないのは、ぬいぐるみの代わりなのだろう。
施設にも、決まったぬいぐるみを抱かないと安心して眠れない子がいたしな。
毎朝そう思い、母親のいない寂しさに耐えている幼児を微笑ましく思う先生の俺。
だが、雄の俺は直人の温もりに何かを期待して鼓動を早めて、朝の生理現象にそれだけが理由とは言えないくらいの硬さと熱さを持たせてしまう。
直人の腕の中からそっと抜け出し、顔を洗って雄の俺を洗い流す。
先生の象徴である仕事着に着替えて、今日も先生としての俺だけで直人に接するんだ、と鏡の中の自分に言い聞かせる。
そんな毎朝の儀式が済んで部屋に戻ると、直人がベッドの上でごそごそ身を捩りながら覚醒をする。
「先生、おはよう」
「あぁ、おはよう」
ベッドから降りてきた直人を浴室まで連れていき、洗顔を見守る。
初日はパジャマの前面の色を全て変えるほど水で濡らしていたが、一週間で襟の周りを少し濡らすだけで済ませられるようになった。
タオルを渡すと、顔を埋めて左右に小刻みに振りだした直人。
初日から変わらない小動物のようなその姿を見て庇護欲が沸き上がってきて、先生としての自分を確認でき、今日も大丈夫だと安心する。
「今日はどれにする?」
部屋に戻り、着替えを取り出す為にクローゼットを開けて直人に問う。
「これと、これにする」
俺を包み込むように背後に立った直人が指差した、薄いピンク色のシャツとベージュのズボンを取り出す。
自分で着る服なのだからと直人に選ばせるようにしたのだが、何故だか直人は俺の背中にくっつき肩に顎を乗せた格好で服を選ぶ。
背中に当たる逞しい胸板に雄の俺が歓喜して体温を上げていくが、これは母親に甘えているのと変わらないのだと先生の俺が制する。
取り出した服を渡すと、すうっと離れていった温もりに安堵と寂しさを覚えるのは毎度のことなので、その気持ちについては深く考えないようにしている。
まだボタンを嵌めるのに多少手こずるが、一人で着替えが出来るようになった直人は、日に日にやれることが増え、その質も日を重ねる毎にあがっていっている。
用意を済ませて一階に降りていき、直人と一緒に洗濯物を洗濯機の中に入れて回してから、夫人の待つキッチンに向かう。
「おはようございます」
「お母さま、おはよう」
「先生、ナオくん、おはよう」
朝食の並んだテーブルについて紅茶を飲んでいた夫人が、慈愛に満ちた顔で俺達を迎えてくれる。
毎回そんな穏やかなひとコマに、国重家の温かな家族の一員になれたような錯覚に陥りそうになるが、俺は部外者なんだという自覚を促すように、国重親子との間に見えない線を引いていく。
「先生、見て」
トーストを囓っていると、直人が俺の前に得意気に皿を差し出してきた。
皿の上のオムレツには、ケチャップで『先生』と書いてある。
以前オムライスを作った時に、好きな字を書きな、とケチャップを渡した時のことが脳裏を過る。
トクンと高鳴った胸が甘く締め付けられるが、無垢な瞳を細めてニコニコと微笑む直人を見て、浮かれている雄の俺を先生の俺が押さえ込む。
「じゃあ先生は、こう書こうかな」
ケチャップを手に取り、まだ口をつけていないオムレツに『ナオくん』と書いていく。
「先生、ぼくが好き?」
「あぁ、好きだよ」
直人の顔が、ニカァと綻んでいく。
大人だって人から好意を向けられると、それは本心なのかと疑いながらも嬉しく思ってしまうのだから、素直な子供なら尚更だ。
直人が嬉しそうに『先生』と書かれたオムレツを食べるのを眺めながら、俺も『ナオくん』と書いたオムレツを食べていく。
朝食が終わり、直人が食洗機に食器を並べる仕事を済ますと、後は夫人に任せて洗い上がった洗濯物を取りに浴室へ向かう。
「先生、トイレ」
「あぁ、分かった」
廊下を歩いていると直人が催すのはいつものことなので、今日も健康な証拠だなと先生としての俺が微笑みながら、トイレを目指す。
「自分で出来るか?」
「うん」
直人は自分でズボンを脱ぐだけの余裕を持ってトイレに行けるようになったので、排泄補助はせずに静かに見守るだけになった。
シャツの裾からチラチラ覗く立派な男の象徴に目を奪われるのは相変わらずだが、直人のモノに夢の中のあの男のモノを重ねて見ているだけで無垢な直人を汚しているわけではない、と抱いてしまう劣情の言い訳をして穢れた血の暴走を抑えている。
「先生、一人でできたよ」
「あぁ、今日も上手だったな」
「じゃあ、今日はけっこんできる?」
「まだ洗濯物を上手く干せないから駄目だ」
俺の返事を聞き、期待に胸を膨らませていた様子の直人の顔が剥れていく。
何かを一人で出来ると、必ず結婚出来るかと聞いていくようになった直人。
直人の言う結婚を了承すれば、キスを許すことになる。
夢の中の男の感触にそっくりな唇を持つ直人とキスをしたら、穢れた血が暴れて、あの男の代わりに直人の唇を奪い続けてしまう可能性がある。
だから何かと理由をつけて、まだ結婚は無理だと言い続けている。
枕元でピピピと鳴る目覚まし時計を慣れた手つきで手早く掴んで止め、頭上を仰ぎ見ると穏やかな寝息を立てている直人の寝顔がある。
国重邸に来て一週間、毎朝直人の腕の中で目覚めている。
毎晩母親と眠っていた直人は、母親と離れて眠る寂しさを、その代役の俺で満たそうとしているのだ。
一晩中俺を抱いて離さないのは、ぬいぐるみの代わりなのだろう。
施設にも、決まったぬいぐるみを抱かないと安心して眠れない子がいたしな。
毎朝そう思い、母親のいない寂しさに耐えている幼児を微笑ましく思う先生の俺。
だが、雄の俺は直人の温もりに何かを期待して鼓動を早めて、朝の生理現象にそれだけが理由とは言えないくらいの硬さと熱さを持たせてしまう。
直人の腕の中からそっと抜け出し、顔を洗って雄の俺を洗い流す。
先生の象徴である仕事着に着替えて、今日も先生としての俺だけで直人に接するんだ、と鏡の中の自分に言い聞かせる。
そんな毎朝の儀式が済んで部屋に戻ると、直人がベッドの上でごそごそ身を捩りながら覚醒をする。
「先生、おはよう」
「あぁ、おはよう」
ベッドから降りてきた直人を浴室まで連れていき、洗顔を見守る。
初日はパジャマの前面の色を全て変えるほど水で濡らしていたが、一週間で襟の周りを少し濡らすだけで済ませられるようになった。
タオルを渡すと、顔を埋めて左右に小刻みに振りだした直人。
初日から変わらない小動物のようなその姿を見て庇護欲が沸き上がってきて、先生としての自分を確認でき、今日も大丈夫だと安心する。
「今日はどれにする?」
部屋に戻り、着替えを取り出す為にクローゼットを開けて直人に問う。
「これと、これにする」
俺を包み込むように背後に立った直人が指差した、薄いピンク色のシャツとベージュのズボンを取り出す。
自分で着る服なのだからと直人に選ばせるようにしたのだが、何故だか直人は俺の背中にくっつき肩に顎を乗せた格好で服を選ぶ。
背中に当たる逞しい胸板に雄の俺が歓喜して体温を上げていくが、これは母親に甘えているのと変わらないのだと先生の俺が制する。
取り出した服を渡すと、すうっと離れていった温もりに安堵と寂しさを覚えるのは毎度のことなので、その気持ちについては深く考えないようにしている。
まだボタンを嵌めるのに多少手こずるが、一人で着替えが出来るようになった直人は、日に日にやれることが増え、その質も日を重ねる毎にあがっていっている。
用意を済ませて一階に降りていき、直人と一緒に洗濯物を洗濯機の中に入れて回してから、夫人の待つキッチンに向かう。
「おはようございます」
「お母さま、おはよう」
「先生、ナオくん、おはよう」
朝食の並んだテーブルについて紅茶を飲んでいた夫人が、慈愛に満ちた顔で俺達を迎えてくれる。
毎回そんな穏やかなひとコマに、国重家の温かな家族の一員になれたような錯覚に陥りそうになるが、俺は部外者なんだという自覚を促すように、国重親子との間に見えない線を引いていく。
「先生、見て」
トーストを囓っていると、直人が俺の前に得意気に皿を差し出してきた。
皿の上のオムレツには、ケチャップで『先生』と書いてある。
以前オムライスを作った時に、好きな字を書きな、とケチャップを渡した時のことが脳裏を過る。
トクンと高鳴った胸が甘く締め付けられるが、無垢な瞳を細めてニコニコと微笑む直人を見て、浮かれている雄の俺を先生の俺が押さえ込む。
「じゃあ先生は、こう書こうかな」
ケチャップを手に取り、まだ口をつけていないオムレツに『ナオくん』と書いていく。
「先生、ぼくが好き?」
「あぁ、好きだよ」
直人の顔が、ニカァと綻んでいく。
大人だって人から好意を向けられると、それは本心なのかと疑いながらも嬉しく思ってしまうのだから、素直な子供なら尚更だ。
直人が嬉しそうに『先生』と書かれたオムレツを食べるのを眺めながら、俺も『ナオくん』と書いたオムレツを食べていく。
朝食が終わり、直人が食洗機に食器を並べる仕事を済ますと、後は夫人に任せて洗い上がった洗濯物を取りに浴室へ向かう。
「先生、トイレ」
「あぁ、分かった」
廊下を歩いていると直人が催すのはいつものことなので、今日も健康な証拠だなと先生としての俺が微笑みながら、トイレを目指す。
「自分で出来るか?」
「うん」
直人は自分でズボンを脱ぐだけの余裕を持ってトイレに行けるようになったので、排泄補助はせずに静かに見守るだけになった。
シャツの裾からチラチラ覗く立派な男の象徴に目を奪われるのは相変わらずだが、直人のモノに夢の中のあの男のモノを重ねて見ているだけで無垢な直人を汚しているわけではない、と抱いてしまう劣情の言い訳をして穢れた血の暴走を抑えている。
「先生、一人でできたよ」
「あぁ、今日も上手だったな」
「じゃあ、今日はけっこんできる?」
「まだ洗濯物を上手く干せないから駄目だ」
俺の返事を聞き、期待に胸を膨らませていた様子の直人の顔が剥れていく。
何かを一人で出来ると、必ず結婚出来るかと聞いていくようになった直人。
直人の言う結婚を了承すれば、キスを許すことになる。
夢の中の男の感触にそっくりな唇を持つ直人とキスをしたら、穢れた血が暴れて、あの男の代わりに直人の唇を奪い続けてしまう可能性がある。
だから何かと理由をつけて、まだ結婚は無理だと言い続けている。
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