先生、教えて。

オトバタケ

文字の大きさ
33 / 66

10

しおりを挟む
 ハッと目を覚ますと、真っ暗な空間が広がっていた。
 暫くして目が闇に慣れてくると、光沢のある布が見えた。
 ドクンドクンと煩い自分の鼓動しか聞こえなかった耳が頭上からの寝息も捉え、やっと脳がここは国重邸の寝室で、今は直人の腕の中にいるのだと理解した。

 状況が分かってほっとするが、混乱していた頭が落ち着くと脳裏に浮かび上がってきたのは、あの男との幸せな情事だ。
 あの男に逢いたいという願望が、あんな夢を見せてしまったのだろう。
 夢の続きを求めるように後ろは疼き、前は放出を願って勃ち上がっている。
 ただでさえ鎮めるのが大変な状態まで熱くなっているのに、あの男にそっくりな直人の腕の中にいては一生この状態が続きそうだ。
 朝までに先生の俺に戻るために、この熱を散らして雄の俺を吐き出してしまおう。

 直人を起こさないようにゆっくり体を離していき、そっとベッドを降りる。
 枕元の時計で時間を確認すると、一時を過ぎたところだった。
 この時間ならば、直人が目覚める心配はないだろう。
 歩く振動さえ快感に繋がってしまうような体で、鞄の奥から玩具とローションを取りだして浴室に向かう。

 引き裂くように服を脱ぎ捨てて、浴室に転がり込む。
 触れてもいないのに硬く勃ちあがった中心からは、体液がトロトロと止めどなく溢れている。
 つうっとローションを垂らした後ろに指を入れて確認すると、入浴時に解したままの柔らかさを保っていたので、軽く広げて玩具を挿し込んでいく。

 無機質なソレが熱を持ち、夢の中の男のモノと重なっていく。
 夢の中で男にされたように、全身に手を這わせてみる。
 目を瞑って男の姿を思い浮かべると、自分の手が男の骨張った大きな掌に変わり、腰が砕けるような快感が走った。
 浴槽に手をついて崩れ落ちそうな体を支え、男を少しでも長く感じていたくて、敢えて玩具を快楽のポイントからずらして電源を入れる。
 右手を全身に這わせながら、夢の中の男に合わせて腰を振る。
 緩やかに広がっていく快感で、体はドロドロに溶けていく。

『君は綺麗だ』

 男の甘いバリトンが脳内に響く。
 本当に? 獣みたいに腰を振っているのに?

『君は穢れてなどいない。君は綺麗なんだ』

 お前がそう言ってくれると、綺麗になれそうな気がする。
 お前を想像しただけで自己処理もこんなに気持ちよくなるのなら、抱かれたらどれほど気持ちよくて幸せな気分になれるんだろうな。

「先生、どうしたの?」

 強まる快感でぼうっとしていた俺の耳に、また男のバリトンが届いた。
 だが、甘さを含まない心配そうな声だ。
 それに、やけに口調も幼いし、先生なんて呼んでくるし。
 先生の俺が、雄の俺を窘めに現れたのだろうか?

 腰を振りながら声のした方に振り返ると、快感で浮かんだ涙でぼやける視線の先には、直人が立っていた。
 黒いパジャマ姿の直人を見た途端、ぼうっとしていた脳が晴れて、直人が起きてしまったのだと理解した。
 全裸で後ろに玩具を咥えさせて自己処理をしているところを見られ、パニックに陥って固まってしまった俺の、それでも放出を願って勃ち上がり続けている中心を直人が心配そうに見ている。

「先生のおチンコはれてるよ? お怪我しちゃったの?」

 声も出せず尚も固まっていると、浴室に入ってきた直人が俺の前に踞った。
 そして、あろうことか俺のモノに舌を這わせ始めたではないか。

「ナオ……」
「お怪我をすると、お母さまがなめてくれるの」

 なんとか出せた掠れた声に気付いた直人が顔を上げ、ニコリと笑ってそう言うと、またブツを舐め始めた。
 性的なことを何も知らない無垢な直人に、こんなことをさせてはいけない。
 それなのに、股間で揺れる鳶色の髪が夢の中の男に重なり、体中に甘い痺れが走ってしまい、後ろは動き続ける玩具を締め付けてしまう。
 そして元々放出が近かったソレは、遂に我慢の限界を迎えてしまった。

「あれ、先生のおしっこは白いの?」

 直人に掛けるのだけは避けたくて、咄嗟に体を回転させて浴槽に放ったモノを見て、直人が不思議そうに聞いてくる。
 何と答えていいのか分からず、浴槽の縁に手を乗せたまま俯いてしまうと、後ろに挿し込んだままの玩具をズボッと引き抜かれた。

「先生のおしり、どうしておチンコが入ってるの?」

 直人に後ろを弄んでいたことがバレてしまい、再びパニックに陥り言葉をなくす。
 俺の答えを待っているのか、直人も黙り込んでしまう。
 玩具のモーター音だけが、浴室内に響いている。

「先生、ぼくのおチンコ、なんかジンジンする」

 ガバッと俺の背中に覆い被さってきた直人が、耳元で熱い吐息を吐き、尻に硬くなったモノを押し当ててきた。
 性的な興奮をしないはずの直人を欲情させてしまった……。
 あれだけ護りたいと思っていた無垢な魂を、己の穢れた血で汚してしまったことに絶望する。

「ぼくも、先生のおしりにおチンコいれたい」

 雄の本能なのか、俺の穢れた血に触れたせいなのか、快感を求めたいと訴えてくる直人。
 それだけは、絶対に阻止しなければならない。
 体を捩って直人の腕の中から逃げようと藻掻くが、直人はもの凄い力で俺を押さえ付けてくる。

「っ!」

 そんな攻防を繰り広げていると、突然直人の立派モノが後ろに挿ってきてしまった。
 グイグイとソコを広げて侵入してくる太いソレは、力に任せて滅茶苦茶に進むわけではなく、痛みを与えない絶妙な力加減で進んでくる。
 直人のモノが擦れると、甘い痺れが広がり快感が生まれていく。

 多くの男と関係を持ってきたが、こんなに上手い奴は滅多にいなかった。
 どうして性的なことを知らなかった直人が、こんなに手練れているのだ?

「先生! 先生!」

 全てを収めきった直人が、俺の名を囁きながら腰を振り始めた。
 ひっきりなしに走る快感で、何も考えられなくなってくる。
 直人の動きに合わせて腰を振り、放出を願う前を扱いていく。
 俺の右手の動きに気付いた直人が、俺の手の上に大きな手を重ねて一緒に扱き始めた。

「先生! 先生!」

 俺を呼ぶ直人の声に余裕がなくなってきた。
 そして、最後の追い込みとばかりに激しく突いてきた。
 俺を扱く手のスピードも上がった。

「あぁぁっ!」

 我慢できずに放ってしまうと、締め付けてしまった直人のモノが爆ぜたのを体の奥底で感じた。
 あぁ、俺は墜ちるところまで墜ちてしまった……。
 熱を放って冷静さを取り戻した頭が、重罪を犯してしまったことを理解し、力が抜けた体はガクッと床に崩れ落ちる。

「先生っ!」

 遠くの方で焦る直人の声が聞こえたのを最後に、俺の意識は途切れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話

日向汐
BL
「好きです」 「…手離せよ」 「いやだ、」 じっと見つめてくる眼力に気圧される。 ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26) 閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、 一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨ 短期でサクッと読める完結作です♡ ぜひぜひ ゆるりとお楽しみください☻* ・───────────・ 🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧 ❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21 ・───────────・ 応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪) なにとぞ、よしなに♡ ・───────────・

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

処理中です...