先生、教えて。

オトバタケ

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「久しぶりだな」

 甘い香りと温もりに包まれ、大きな手で髪を梳かるのが気持ちよくてうつらうつらしていると、頭上から懐かしい声が届いた。
 パッと顔を上げると、ずっと求め続けていた男の顔があった。

「待たせすぎなんだよ。ヒーロー様は絶体絶命って時にならないと現れないってか?」

 やっと再会できて涙が出そうなほど嬉しいのに、大人の余裕に満ち溢れている男にガキだと思われるのが癪で、見下すように笑いながら厚い胸板を拳で叩く。

「俺はヒーローなんかではない。君がヒーローだ」
「は? 意味分かんねぇこと言うなよ。それより、約束叶えてくれよ」
「あぁ。頑張ったな」

 男の骨張った大きな掌が、労ってくれるように頬を包んでくる。
 そして、整った顔がゆっくり近付いてくる。
 髪と同じ鳶色の瞳に映る幸せそうな自分姿が目に入って、恥ずかしくなって瞼を閉じると、砂糖菓子のように甘くて柔らかいものが唇に触れた。

 角度を変えて何度も何度もそれを重ね合わせて、少し息苦しくなって開いてしまった唇の間から、熱い塊が侵入してきた。
 この熱く湿り気を帯び、ざらついた感触は、何人もの男が俺の肌に這わせたものと同じだ。
 快感を誘うだけの感覚だったそれが、今は快感だけでなく、甘さと温かさと幸福を感じさせる。
 ピリピリと走り続ける甘い痺れで体の力が抜けていき、男に抱きついて崩れ落ちないようにしながら、もっと幸せで気持ちいい感覚に包まれたくて、俺からも男に舌を絡める。
 口付けに夢中になっている俺の体を、男の掌が這っていく。

「っ……」

 敏感な腰を撫でられ、体が海老のように反ってしまう。
 それの衝撃で唇が離れた男がクスリと笑ったので、馬鹿にするなと睨み付けようとするも、首筋をきつく吸われて走った快感で体が震えてしまい、それは叶わなかった。

「君は綺麗だ」

 服を脱がせた俺をベッドに横たえた男が、俺を眺めながら目を細める。

「嘘つくな。俺ほど穢れた奴なんかいねぇんだよ」
「君は穢れてなどいない。君は綺麗なんだ」

 男の視線から逃れたくて顔を背けると、大きな掌に頬を包まれて上を向かされ、口付けをされた。
 男との濃厚な口付けで蕩けて力の抜けてしまった体を、男の舌が這っていく。
 男に触れられた場所全てから快感が生まれ、体が甘く痺れていく。
 五年越しの願いが叶い男が入ってきた時には、それだけで達してしまいそうなほどの満足感があった。

「はぁっ……あぁっ……」
「Ich liebe dich」

 ガンガンと俺を揺さぶる男が、熱い吐息と共に何かを囁いた。
 はっきりとは聞き取れなかったが、切なさを含む響きに胸がキュルンと締め付けられた。

「っ……あぁぁっ!」

 何て言ったのか聞きたかったのに、もう一度囁いて欲しかったのに、激しさを増す男の動きのせいでそれは叶わなかった。
 俺から穢れた血が噴き出すと、ぎゅっと締まった後ろに男が熱いものを吐き出した。

 男のものが体の深い所から全身に広がっていき、穢れた体が清められていく気がする。
 こんなに幸せで満たされた交わりは初めてだ。
 もっと繋がりたくて手を伸ばすと、微笑んだ男が了承するように優しいキスを落としてきた。
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