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第七話 リリィとの交わり②★

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「淫魔族にとってはそれが食事だからね。ねえ、やっぱりアリシアは嫌なのかしら?」
 リリィはベッドに仰向けになって、悪戯っ子のような微笑みを浮かべながら訊ねる。

 高ぶった自分の下半身が快楽を求めていることははっきりとしていた。
 それを求めてしまえば、先ほどのようにリリィに弄ばれることもわかっていた。
 さっきは天国みたいに気持ちよかった。
 それは事実だ。
 でも、それを求めてはいけない。

(わたしは人族で、リリィは魔族なのだから)

 アリシアは立ち上がって部屋から出ようかと思った。 
 でも部屋から出たところで、行くあてもなければ、この熱が解消されることもない。
 それに耐えられるほどに自分が強くないこともわかっていた。
 なら取るべき行動は違うのかも知れない。
 これまでは何も分からないまま、リリィやエイラに主導権を握られてきた。
 それで弄ばれて、恥ずかしい目に合ってきた。
 だとしたら、今度は自分から……。

 そんな思考回路はどこかずれていると思った。
 そんなことをしたらリリィに利することになるのもわかっていた。
 でも目の前に美しい白いものがあって、女神のような存在がいる。
 リリィはベッドの脇にグラスを置くと、仰向けになって両手を広げた。
 アリシアの心を拐かすような、笑みを浮かべている。
 露出した肩が愛おしい曲線を描いている。
 胸の膨らみが、リリィの呼吸に合わせて形を変える。

(こんなの……我慢なんてできるわけない)

 アリシアはリリィが広げる腕の中にゆったりと吸い込まれていく。
 リリィの身体を自らの身体全体で覆うように抱きつく。
 リリィの深紅の瞳に、自分が映る。
 その自分の表情が、はしたなく映る。
 けれど、衝動を抑えきれずにアリシアはリリィの背中に自分の腕を回して強く抱きしめる。リリィがすぐに抱きしめ返してくる。
 そう思ってはいけないはずなのに、アリシアは幸福感で満たされる。

 リリィの柔らかそうな唇が濡れたように光ってみえる。
 アリシアは我慢ができずにその唇に自らの唇を重ねた。
 性的なことに明るくない、アリシアもその行為だけは知っていた。
 キス。
 物語ではいつも幸福な恋人同士がしていた特別な行為。

(なんでわたしは、魔族と?)

 自分でもわからなくなりながら、衝動的にしていた。

「ふふっ。キスされちゃった」
「これは、あなたのお酒のせいですからね」

 アリシアはそんな言い訳をする。
 黙っていたらさらにからかってきそうなその唇にもう一度口づけを落とす。
 思っていた以上に柔らかくて、気持ちがいい。
 手と手が触れるのとは違う、特別な感触。
 自分の気持ちよさが相手にも伝わるような、逆に相手の気持ちよさが自分にも伝わってくるようなそんな気にさえなった。

 リリィが抱きしめる強さがさらに強くなるのと同時に、リリィの舌がアリシアの中に入ってきた。
 驚きのあまり声を上げようとしたが、リリィの舌に自らの舌を絡め取られてしまい、声は音にならなかった。

 それは先ほどまでのキスとはまったく違った。
 先ほどのまでのキスでは精神的なつながりを感じていたが、そのキスは肉欲的な快感が得られる。
 リリィの動きを真似て、アリシアも恐る恐る舌を動かしてみる。
 それが気持ち良さを倍増させる。
 どれぐらいそうしていたのかわからなくなるぐらい、お互いを味わい尽くすと、アリシアは急に恥ずかしくなった。
 唇を外して、回していた腕を引っ込めて身体を起こす。

「違いますからね。これは違うんですからね」
「ふふっ。わかってるわよ」

 リリィがおかしそうに笑みを浮かべる。
 その笑みを食べてしまいたくなるほどに、アリシアの欲望は高ぶっていた。
 身体を起こしてみるとリリィの上半身がよく見える。
 二つの丘が光って見える。
抱きしめて乱れた服がさらに劣情をかき立てる。

「いいわよ。アリシア、脱がして」
「それは、えっち過ぎませんか?」
「あら、触りたくないの?」

 アリシアは答える代わりにリリィの肩にかかる紐のような布をずらしていく。
 リリィの服はそれだけでずるりと落ちていく。
 露わになったドレス用のブラは前止めになっていて、アリシアはそれも剥ぎ取ってしまう。
 現れた二つの丘は美を讃えている。

「そのリリィ……」
「どうしたの触りたくないの」
「違います。その逆で……」

 触れたくて触れたくてたまらなくなった。
 アリシアは恐る恐るリリィの白い丘へと手を伸ばす。
 やわらかくて、弾力があって、まるで甘いお菓子のようにふわふわとしている。
 弾力を確かめるように揉んでみると、自分の手が幸福の中に埋まっていく。
 手のひら全体で包み込むと、手の中に幸福が収まっているのを感じる。

「あっ。あっ。いいわよ。アリシア。気持ちいい。ぁあ」

 リリィが色っぽい声を上げる。
 鈴の音のような、その声がさらにアリシアを高ぶらせる。
 両手で揉みしだく。
 リリィの胸はアリシアの思うがままに形を変える。

「うっ。あっ。はぁぁ。ぁあぁん」

 リリィが悦んでいるのが、嬉しそうに乱れていくのがたまらない。
 先端だけを指で弾いてみたり、先端を五本の指でいじってみる。
 こりっとした感触の先端がぷくっと浮かび上がってくる。
 
それがなぜかあまりに愛おしく思えて、アリシアはふと思いつく。
 そして思いついてしまうとそうせざるを得なかった。
 アリシアは手のひらでリリィの胸を持ち上げながら、自らの唇をその先端に含ませた。

「あっ。ぁああ。教えてもいないのに、口でするなんて。聖女様はえっちなことの才能もあるのかしら」
 
そんなリリィの煽りに応えるのが馬鹿らしくなるぐらい、それはアリシア自身を満たした。
 手のひらで味わうのとはまったく違う。
 チロチロと舌で乳首を転がすと、リリィは小刻みに身体を震わせながら切なそうな顔になった。
 その顔があまりにも美しくて、今度は乳首に口づけを落とす。
 リリィは今度は身体をぎゅっと縮めて反応する。
 そんなリリィに反応が、自分の行為が報われているような気になった。

 自分のしていることが間違っているのはわかっていた。
 結局は魔族を利することをしようとしているのだ。
 そもそも魔族に対してそのような感情を抱くことが誤っている。
 けれど感情が理性を抑え付けることはできなかった。
 理性がアリシアの身体を抑制することはもうできなかった。

 こんなに美しいものが自分の手のひらの中に収まっているなんて。
 こんなに美味しいものが口の中に収まっているなんて。
 アリシアは手と唇で刺激し続けた。
 刺激する度に奏でるリリィの喘ぎ声も心地よくって余計にやめれなかった。
 リリィの身体が一度大きく震えたのをきっかけに、ようやくアリシアは手と口を離した。

 リリィを見下ろすと満足げな微笑で、アリシアを見上げる。
 深紅の瞳がとろんとしている。

「ふふっ。だいぶいじめられちゃったわね。でも、アリシア。そろそろアリシアのも気持ちよくなりたいんじゃない?」
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