LIFE ~にじいろのうた~

左藤 友大

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第六話 バズりの嵐

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目覚ましが鳴り出した頃、布団を蹴っていたぼくは目覚めた。
寝起きした顔をしながら体を起こしカーテンを開けると外はとても明るかった。
ぼくは口を大きく開けてあくびをした後、机の方へ向かった。昨夜、スマホにアラームを設定したのだ。
アラームを止めた後、ぼくはスマホのロック画面を開こうとした時、ERH(アース)からの通知が着ていた。ぼくは届いた通知をスワイプしロック画面のパスワードを打ち開いた。通知をスワイプしたので、ホーム画面ではなく、ERH(アース)の画面に切り替わった。音楽を聴いたり動画などを観る以外はデバイスを装着しなくてもERH(アース)の中を見られる。NameとPasswordを入力すると通知一覧が映った。通知一覧には縦一列に並んでいる知らない人のアカウントが届いていた。よく見ると通知一覧に届いたアカウントは、ぼくをフォローしてくれた人達だった。ほとんどが英語の名前やニックネームで顔写真には外国人の素顔や外人風のアバター画像が映っていた。日本人より外国人の方が多い気がした。それもそうだ。澄んでる国によっては時差が違うから。日本が夜であればヨーロッパとかアメリカは朝だからERH(アース)を使う人もたくさんいるはず。しかも、知らない人達がぼくをフォローした理由は、昨日アカペラで歌った録音音声を聴いたからだ。通知一覧の中にはアカペラで歌ったGReeeNの曲についてのコメントが着ている。

イギリス人:女性 45歳《Very nice!!(とても素敵!!)》

アメリカ人:女性 39歳《Singing voice that does not seem to be 10 years old. I was impressed(10歳とは思えない歌声。感動したわ)》

フランス:男性 12歳《Agréable avec délicatesse et force. Cet enfant a-t-il vraiment 10 ans ?(繊細さと力強さがあって素敵。この子、本当に10歳なの?)》

イタリア人:男性 20歳《Stai usando un cambia voce?(ボイスチェンジャー使ってないの?)》

中には、ぼくの歌声はボイスチェンジャーを使って出しているのではないか疑っているコメントがしばしばある。でも、ここではっきり述べさせてもらう。ぼくはボイスチェンジャーを使っていない。正真正銘の地声だ。
コメントだけではなく録音音声の映像に「いいね」や「ひどいね」を押してもらったという通知も着ていた。実際、録音音声の映像を観てみると「いいね」の数が一番多い。「ひどいね」の方は、5人ぐらいだった。でも、ぼくの歌を称賛している人が多くてよかった。
そして。気になるのはフォロワーの数。ホーム画面を見るとぼくのアバター画像の下に「1Follow」と「25Follower」と表示されていた。
25人ものアカウントがフォローしてくれたのだ。初めてにしては上々な数字だ。ぼくには25人ものフォロワーがいると分かったら嬉しかった。数千や数万人までいきたいとは正直思っていない。最高200人以上の人にフォローしてもらえたらいいのだ。ぼくはあまり欲が深くない男なのだから。200人ぐらいいれば十分だとぼくは思った。実際、ぼくのTwitterのフォロワー数は146人なのでもっと数を増やしたいとは思っていない。

「たった一日で25人はまあまあいい数じゃん」
一緒に通学路を歩いている神馬くんは言った。
「今後もフォロワーが増えるといいな。数千とかいけるんじゃない?」
「さすがにそれはないよ。ぼく以外、歌がうまい人なんて多いし」
ぼく以外にも歌が上手い人がいる。きっと、ERH(アース)にはぼくよりとてもすごい歌声を持つ人がいると思う。
「ぼくなんてERH(アース)を始めてまもない新米で普通のド素人だよ?さすがに、プロと渡り合うつもりはないし」
遠慮しながらもぼくはプロになりたくて始めたわけではない。好きな歌をいろんな人に聴いてほしいのと新しい人生を歩む為にERH(アース)を始めたのだから。一見、変哲もないド素人なぼくがプロになるわけない。そういえば、夢の中で兄ちゃんが言っていた。ぼくは、歌手になれるとか音楽に愛されているとか。正直、音楽に愛されているのかは自覚していないが、歌手になるつもりもない。でも、時々思うのだ。もしかすると、本当にぼくは歌手になれるんじゃないのかって。兄ちゃんが嘘をついているとは思えないが、もしかすると思い過ごしかもしれない。
とにかく、ぼくはERH(アース)で歌を歌ってみんなに聴かせる。それが、ぼくの唯一の楽しみでもあって目標でもある。
別にぼくは競っている訳ではない。好きで歌っているだけだから。
「神馬くんは、500人ぐらいフォロワーいるんだっけ?」
神馬くんは頷いた。
「ああ。今はフォロワー1000人を目指してる」
「ぼく、あまり知らないけどERH(アース)でフォロワーが1000人ぐらいになると有名人になれるの?」
その質問に神馬くんはう~ん、と唸りながら考えた。
「いや、なれないな。ていうか、ERH(アース)にも認証バッジがあるからそれがあれば有名人の仲間入り・・・かな?」
認証バッジというのは、チェックマークが付いたやつだ。Twitterにも有名人のアカウントには必ず認証バッジが付いている。きっと、ERH(アース)もTwitterと同じ原理でバッジを付けているんだ。
「でも、おれはいつか認証バッジを貰うつもりだ。なんてったって、作曲家とライブパフォーマーになるのが夢だからな」
夢か・・・・。ぼくは将来の夢を見つけていない。兄ちゃんは、歌手になれるなんて言っていたけど、まだ正直、歌手になりたいとは思っていない。ただ好きな歌を歌ってERH(アース)で出会った人達と仲良くなりたい。将来の夢なんてまだ見当もついていない。
神馬くんと話していると与那覇バス停が見えてきた。
バス停が見えた時、ぼくは将来の夢を探すのはまた今度でいいかと後回しにした。

朝のホームルーム終わり1時間目と2時間目の授業が終わった後、3時間目は道徳の授業だった。
みんなは黒板前に立つ福原先生の話を聞いていた。
黒板には福原先生が書いた「ぼくとわたしの夢」という字が書いてあった。
「みんなが大人になると社会に出ていろんな仕事をするようになる。会社で書類を作ったりお客さんの相談に乗ってサポートしたり、乗り物を扱う運転手になって人達を運んだりなどいろいろな仕事がある。自分は将来、何なりどんな仕事をしたいのか、今日はこのプリントに書いて後で発表してもらう」
先生が「将来の夢を語ろう」と書かれたプリントを配ると受け取った前列の子は後ろの子へと回した。
プリントを受け取って後ろの席にいる子に回した後、ぼくはその内容を見た。プリントに書いてあるのは至って単純。
将来、何になりたいのかそして、何をしたいのか。それだけだ。周りのみんなはプリントを回した後、すぐ書き始めた。しかし、ぼくだけは違う。なんてったって、将来の夢はないからだ。今朝、自分の将来の夢を探すのは後回しにしたのにまさか、授業で将来の夢について書かなくちゃいけないとは思ってもみなかった。もうプリントが来てからシャーペンを持ったまま手をつけられなくなってしまった。将来の夢がないのに書いても仕方がなかった。でも、無理してでも何かないか考えながらも時間は刻々と過ぎていった。
遂に発表する時が来てしまった。廊下窓がある右側の一番前の席にいる子から順番に将来の夢を発表し始めた。
みんなは、サッカー選手やパン屋さん、歌手に電車の運転士など子供らしい夢を持っていた。それに引き換え、ぼくは何もなかった。プリントは空欄のままで結果、自分の将来の夢を書かないまま時間切れになってしまった。一人一人、プリントに書いた将来の夢を読み上げながらみんなから関心を持たせたり時には笑わせたり自分の明るい未来を想像していた。でも、ぼくと同じく彼らはまだ小学生。中学生、高校生になれば将来の夢が自然に変わる。小学生の頃に憧れていた将来の夢なんか時間が経てばとうに忘れてしまう。
ぼくはみんなの将来の夢を聞き流しながら机に肘をつけて手を顔に乗せながら何も書かなかったプリントとにらめっこしていた。ぼくは一体、何になりたいんだと自問自答しながらも考えたが一つだけ思ったことがあった。
(やっぱり・・・歌手なのかな?)
そう心の中で呟いた。何もないなら「歌手になる」って書けば簡単で済む。でも、歌手になりたいという概念を持っていないぼくは書く気はしなかった。歌を歌っているのは、ERH(アース)を利用している人達に聴いてほしいだけだから、有名人になりたいなんて思っていない。むしろ、趣味と言ったほうが正しい。趣味なら将来の夢の枠には入らない。でも、歌と音楽以外に趣味はない。
やっぱり、歌手と書くべきだろうか書かないべきだろうか迷っていると
「次、羽藤くん。羽藤くん」
福原先生がぼくを呼んでいた。でも、声が届いていないのかぼくは悩みながらも自分が呼ばれていることすら全く気づかなかった。
「羽藤くん!」
ぼくは気づき顔を見上げた。教卓に立っている福原先生の顔が見えクラスのみんなが注目しているかのようにこちらを見ていた。福原先生はちょっと心配そうに大丈夫か?と訊ねられた。
「あっ、はい。すみません」
ぼくは席に立ち余所見していたことを謝ると福原先生が話を続けた。
「次は羽藤くんの番だぞ」
みんなはジッと自分の将来の夢を発表するぼくを見ている。ぼくはチラチラとみんなの顔を見て控えめな声で言った。
「えっと・・・。ありません」
将来の夢がないと答えると福原先生は将来、何になりたいとか考えたり思ったことはないのかな?と問われるぼくはないです、だけの一言だけ答えた。それを知った福原先生は軽く頷き席に座るよう言われた。ぼくの発表が終わると次は後ろの席にいる子の出番になった。
後ろの子が発表している時もぼくは再びプリントを見た。
道徳の授業と四時間目の授業、そして給食の時間が終えるとみんなは昼休みに入りそれぞれ好きなことをしていた。道徳の授業に出された「将来の夢を語ろう」と書いてあるプリントは明日までの宿題となってしまい参っていた。将来の夢がないのに明日までに書かなくちゃいけないなんて鬼畜すぎるだろと文句を言いたいが、相手が先生では逆うことはできない。
どうしようと思いながらもせっかくの昼休みを無駄にしたくなかったので考えるのは後にして引き出しからスマホを取り出した。
今、ERH(アース)でのフォロワーは何人ぐらいになったのかちょっと気になっていたのだ。電源を入れるとロック画面に多くのコメントとフォローが着ている通知がたくさん出ていた。しかも、滝のように次から次へと新しい通知が来る。その光景にぼくは目を疑った。もしかして、ぼくのアカウントがバグられたのかと思いロック画面を解除しすぐERH(アース)のアプリを開いた。
開いた途端、とても信じられない光景を目の当たりした。

『NIJI Follower14667891』

なんと、フォロワー数が1400万人以上を達していたのだ。その数を見てぼくは大きく目を見開き驚愕した。
フォロワーの数はまだまだ増え続けた。

『NIJI Follower15476345』

さっきまで1400万人以上だったのがこの短時間で1500万人以上達した。
あまりにも多すぎるフォロワー数でぼくは驚愕しながらも言葉が見つからなかった。次第に冷や汗が流れてきた。
しかし、フォロワーの数は増え続け止む気配が全くなかった。

『NIJI Follower23846599』

2300万人以上になった。今朝までは25人だったのに一方、増え続けるフォロワーの数と全く止まない通知の着信にぼくはみるみる冷や汗が流れてきて一体、何が起きているのかさっぱり分からなかった。でも、一つだけ心当たりがあった。昨日ERH(アース)にアップロードしたアカペラ録音音声だ。でも、ただ普通に歌った録音音声でここまでバズるはずがない。
今、頭の中はパニック状態だ。2500万・・・・2600万・・・・2700万・・・・自分が思っていた以上にどんどんフォロワーの数が増えていく。ここまでフォロワーが増えるとは思ってもみなかったし完全に予想外で生れて初めてだ。Twitterよりかなり数倍は行ってる。増え続けるフォロワーの数に震えが止まらなかった。アカペラの録音音声を上げてからまだ一日なのに。すると、クラスの男の子から耳を疑う話が聞こえた。
「なぁ、NIJIって知ってる?」
男の子の友達が誰それ?っと訊くと
「ERH(アース)に出ているアバターらしいよ。Twitterでトレンド入りしてる」
それを聞いたぼくは素早く指を動かしERH(アース)からTwitterに切り替えた。そして、クラスメイトが言っていたようにTwitterのトレンドを見てみると本当にぼくのアバター「NIJI」がトレンド入りをしている。しかも、トレンド1位だ。開いてみるとNIJIに関する様々なネットニュース記事が書かれていた。

〈今、大人気ネットワークアプリ「Edens Recreation heaven」で突如現れた謎のアバター「NIJI」が日本だけではなく世界中で話題沸騰になっている〉

〈GReeeNのカバー曲でたった一日で再生率第1位!!Edens Recreation heavenのミュージック・チャート・ランキングでも1位を取得!〉

〈10歳とは思えない歌唱力に世界中が圧巻〉

〈たった一日でワールド・ソング・チャート カバーソング部門1位とERH・ワールド・ミュージック・チャート ルーキー部門1位、ミュージック・チャートランキング1位取得するアーティストは今回が初めて。史上最年少10歳で三冠取得するのも史上初!〉

〈たった一日でNIJIが歌ったGReeeN「アカリ」のカバー曲でストリーミング累計467万3908再生回数という異例を起こす。楽曲なしのアカペラで大快進撃を果たす〉

他にもいろいろなネット記事が書き込まれておりぼくは血の気が引いた。
ただのカバー曲をアカペラで歌っただけなのにここまで話題になるなんて想像もしなかった。でも、どうすればいいのか分からなく頭の中がパニくってて整理がつかない。
「10歳で2冠取るとかバケモンすぎでしょ」
「一体、どんな歌声をしてるんだ?」
「NIJIって、時間の二時のことなのかな?それとも、七色の虹のことかな?」
「朝、登校する時に聴いてみたんだけどすごかったよ」
クラス中がNIJI(ぼく)のことで話題が広まっていた。まさか、このクラスにERH(アース)を知っていたりやったりしている人がこんなに多くいたとは全く知らなかった。話題が話題を呼びクラスだけではなく学校中にも広まった。
今、世界はNIJI(ぼく)のことで大きな話題を呼んでいる。NIJIはぼくで、ぼくはNIJI。まさか、NIJIの正体がこのクラスにいるなんて誰も思っていない。クラス中がぼくの話題になっていた時、バイブ音が鳴った。
神馬くんからメッセージが着たのだ。
『虹くん。すごいじゃんか!!たった一日できみのフォロワー2800万以上いってるぞ!このままいけば、3000万を軽く超えるだろう!おれより数千倍いるなんて羨ましい!』
羨ましいだなんてとんでもない。今、こっちは頭の中がパニックになってめちゃくちゃドキドキしてるんだ。
メッセージを返信するより直接電話した方が手っ取り早いと思い勢いよく席を立った。慌ててたので足が椅子にぶつかり躓いたが、そんなの気にもしなく廊下へ走り出した。
突然、慌てて教室を出たぼくを見てクラスメイトの男の子が「羽藤?」と声をかけた。

人気の少ない廊下に着いたぼくはLINEを開きコールを鳴らした。
「もしもし?神馬くん?」
電話越しから神馬くんの声が聞こえた。あっちも昼休み中らしい。
「どうした?もしかして、NIJIの話題のことか?」
彼は既に知っていた。ぼくが話題になっていることをSNSやネットニュースを見て知ったのだと思う。
「し、知ってたの?」
当然かのような声で神馬くんが言った。
「ああ。たまたまTwitter観てたらNIJIの話題は入ってきたんだ。でも、おれは分かってた。きみがボイスメモで送ってくれた『カイト』を聴いた時、絶対流行るって。あの歌声を聴きゃ誰だって聴き惚れてたくさんフォローするさ。でもさ、最初は25人だったのが数時間後で数千万人以上いくなんてスゲェよ。うちの中学校もきみの話題で持ち切ってるぞ」
ぼくは募った不安を神馬くんにぶつけた。
「何優著なこと言ってるんだ。何千万の人がフォローしてくれるなんて人生初めてだから今、パニくってるんだ!ぼくはどうしたらいいの?どうすればいいの?!」
不安になりながら興奮しているぼくはどうすればいいのか慌てながら訊いた。もう、顔が真っ青で冷や汗が止まらないしたくさんのフォロワーがいて怖くなってきた。ぼくは誰かに聞かれていないか目配りしながら確認し興奮しているとはいえ大声を出さず廊下中響かないよう声のボリュームを押さえながら背中を丸くした。
こんなにも困ってるのに神馬くんはすごく冷静だ。全く慌てる様子がないかのように淡々と話しかけてくる。
「落ち着け。数千万人の人がきみをフォローしたのは、きみの歌を認めている証拠だ。心配することなんてないよ。きみはいつもどおり好きな歌を歌ってERH(アース)に音声を出してみんなに聞かせりゃいいんだ。別に取って食おうとはしないよ。おれだって、いくつか自分が作った楽曲を出してみんなに聴かせてるぜ。それにきみの素顔はおれ以外誰も知らない。彼らが知っているのは、アバターの『NIJI』だ。NIJIの正体がきみだなんて誰も分からないって」
確かにそうだけど・・・そうだけど。
「でも、ぼくの歌を批判している人は─」
「そりゃあ、いるね」
あっさりと答えやがった。なんの躊躇もなくあっさりと。
でも、やっぱりぼくの歌を良くないと思っている人はいることぐらい知っていた。だって、通知の中にぼくの歌に対する批判のコメントが届いていたんだもの。きっと、録音音声の映像にも「よくない」ボタンがたくさん押されているはず。分かってはいるけど、いろんな悪口とか誹謗中傷的なコメントが書かれていると思うと怖くて見られないのだ。
「世の中には、音楽はそう甘くないと断言して自分より才能がある人を勝手に妬んでめっちゃ非難する奴らなんて普通にいるよ。おれだって最初はそうだった。でも、そういう奴って最初は嫉妬と怨嗟を武器にしていろいろ好き放題にボロクソ言って満足する自己肯定が低いクズ野郎だからあんまり気にするな。最初は風当たりがキツイかもしれないが時間が経てば治まって否定した奴らは認めざるを得なくなるから大丈夫だよ。まぁ、おれはともかく、きみをまだ否定して誹謗中傷をやるような奴は容赦なく世間に叩き出して晒し者にするけどね。ヒッヒッヒッヒ」
「コワッ・・・・!」
電話越しから聞こえる不気味な笑い声にぼくは引いた。でも、やっぱり否定の嵐が治まる唯一の手段は『時間』しかないだろう。しばらく、時間経てばほとぼりが冷める。ここは神馬くんを信じて待つしかない。でも、数千万以上のフォロワー数があるのはどうしても気になって心配になる。ぼくはこれから数千万以上のフォロワーの為に歌を歌わなければならないと思うとドキドキして落ち着かない。突然のことで荷が重すぎる。
すると、神馬くんがぼくにこう言ってくれた。
「でもまあ、引き続き気楽にやればいいよ。いつも通り歌って音声を投稿してみんなに聴かせる。そんなに不安がった心配する必要ないよ。いざという時は、おれも手伝うからさ」
ぼくはうん、と言ったが少しだけ不安だ。そう言ってもらえると助かるがこの先どうなるのか分からない。もしかすると、すごく否定するコメントが着て追い詰められたらどうしようと思うと末恐ろしくなる。でも、機械やネットに詳しい神馬くんがいれば大丈夫だろうと思ったりもする。すると、昼休み終了のチャイムが鳴り出した。電話越しからも昼休みが終わるチャイムの音が聞こえた。神馬くんの中学校もちょうど昼休みが終わったところらしい。
「そういうことだから。そんじゃ」
ツーツー。
通話が切れた。通話記録が残っているトーク画面を見て不安と心配で募っていた興奮が冷め落ち着いてきたが本当に大丈夫なのか少し疑ってしまうが、神馬くんが大丈夫と言ってくれているからここは彼の言葉を信じるしかないだろう。
ここで辞めたら次はフォロワーから疑問の嵐が来てまたニュースになってしまう。こんなに公になればもう後が引けない。こうなったら、覚悟を決めて歌い続けてやると思った。中には批判的なコメントがあるかもしれないが、時が経てばきっと認めてくれるだろうと信じぼくはERH(アース)を続けることを決心した。そして、ぼくが「NIJI」だということを誰かに知られないよう気をつけようと心掛け教室へ戻った。

神馬くんがいないバスの中、ぼくはERH(アース)を立ち上げ昼休みに届いた大量のコメントを読んでいた。
NIJIのフォロワー数は3200万以上で止まった。たった一日で3200万人以上の人達がぼくをフォローしてくれるなんて何と言えばいいんだろう。でも、感動して受け入れてくれたコメントがあれば批判し反対しているコメントもある。
例えば─

日本人:女性 15歳《好きな歌なのに汚された。ムカつく》

日本人:男性 23歳《まだ新米のくせに目立ちやがって。なんなんだよ?!》

アメリカ人:男性 33歳《10 years old is a lie. Are you really an adult?(10歳というのは嘘。本当は大人なんだろ?)》

韓国人:女性 27歳《거짓말까지 유명 싶은 것은?(嘘ついてまで有名になりたいわけ?)》

《Я aбавязкова выкарыстоўваю змены голасу. Я магу толькі так думаць!(絶対、ボイスチェンジャー使ってる。そうとしか考えられない!)》

などなど。日本人だけではなく世界の人達の中にもぼくの歌に納得いかないコメントが寄せられている。でも、ぼくはボイスチェンジャー使ってないし自分でも驚くぐらいの歌声を出せるなんて思ってもみなかったのだ。それに、ボイスチェンジャー自体はあまり知らない。どんな物なのかも知らない。後で検索してみようと思った。でも、中には批判するコメントにぼくの歌声に嘘ではないと助けてくれる人もいた。ボイスチェンジャー疑惑と10歳と装った詐欺者疑惑はしばらく続きそうだ。でも、ぼくのアバターは自分と同じ年頃の男の子でAdamが作ってくれたぼくの「分身」なのだ。もしかすると、分かっていながら批判しているのか?心の中はモヤモヤしているが、考えても仕方がなかった。
とりあえず、次は何を歌おうか考えながら「ミュージック・コンテンツ」に載っているアーティス達の一覧を見て探した。できれば、最近のではなくGReeeNみたいに昔流行っていた音楽にしようと思いながら次のカバー曲を選んだ。
一方、神馬くんは昨日、中学校の友達とバンドを組んだとのことで今日は一緒に帰らなかったのだ。今日の学校はNIJI(ぼく)のことで話題になっていたのでドキドキしたが正直嬉しかった。こんなに嬉しく思ったのは生まれて初めてだった。
すると、一件のメッセージが着た。ERH(アース)ではない。LINEだ。
宛先は神馬くんだ。自撮り写真が添えられたメッセージが届いたのだ。写真には神馬くんと明るい笑顔が絶やさない三人の男子が映っていた。神馬くんがエレキギターを肩に掛けている様子が見える。隣にはマイクを持って笑っている男の子がいて二人の後ろにはピースサインと白い歯を見せて笑ってる男子が映っていた。
『今日、バンド名が決まったぜ!バンド名は「FIRE BALL(ファイアーボール)」にしたぜ!』
ファイアーボール。火の玉。なかなかいいバンド名だなと思った。
『ギター担当はおれ。おれのとなりにいるのはボーカルの佐藤。左後ろにいるのはキーボードの牧に右後ろはドラムの伴。今から曲作りに入るところ。もしかすると、しばらくは一緒に帰れないかも・・・。でも、手伝いはできるから安心して!それと、もしよかったら遊びにおいで!』
とても楽しそう。ぼくは少し神馬くんが羨ましくなった。でも、NIJIの正体は秘密で人前で歌うのは苦手だからさすがにバンドを作る勇気はない。でも、応援はする。写真を見てぼくはすぐ神馬くんに返事のメッセージを送った。

夜、ベッドの上に寝転びながらぼくはTwitterのタイムラインを眺めていた。検索したらとズラッとぼくの話題がたくさん書きこまれていた。写真やぼくの録音音声の映像が見れるアドレスを添付してツイートされたりNIJI(ぼく)についてどう思っているのかたくさん書き記されていた。中にはぼくを特集したネット記事もあった。ネットもERH(アース)もTwitterも全てのSNSがぼくのことでたくさん書かれている。しかも、中にはNIJIの正体は誰なのか予想をしている書き込みもあった。小学生だと分かっていてもまさか、NIJIの正体がルックスもかっこよさも全く無い顔も普通などこにでもいるごく普通の男の子だと思っているだろう。そう簡単に正体を見つけ出すのは無理だろうと高を括ったがバレないよう気をつけようと心が得る。音楽の授業はいつも通り、なかなか声が出ないフリをすれば正体はバレずに済むと思う。
ぼくはスマホの電源を切りベッドから降りて部屋のドアを開けた。
喉乾いたので1階の台所へ向かおうとした時、リビングの方からおじいちゃんとおばあちゃんの話声が聞こえた。
ぼくは二人に気づかれないようリビングの影に身を隠した。
「お父さん。やっぱり、8月頃に行われる二人の納骨、こーちゃんを連れて行くのはよした方がいいんじゃ・・・」
何やらぼくのことで話しているみたいだ。
「あの子、翼くんと結子の骨壺を見たらますます悲しんでしまうんじゃないかと思うの。特に翼くんとはとても仲が良かったからまた、あの時のことを思い出してしまうんじゃないのかしら」
どうやら、おじいちゃんとおばあちゃんは8月ぐらいに東京でお母さんと兄ちゃんの遺骨をお墓に納めに行く話をしているみたいだ。おばあちゃんは、ぼくを東京に連れて行くのをやめといた方がいいのではないかと話しているらしい。
すると、おじいちゃんの声が聞こえてきた。
「結子が死んでから5年経ち翼が死んでもう3年も経つ。あの子にとって二人は一緒に暮してきた家族でもあったからな」
「ええ。特に翼くんとは結子と愉さんより長く一緒にいましたからね。翼くんが亡くなったのは最近だから今でもきっとまだショックを受けているかもしれないわ」
おばあちゃんはとても心配そうな顔をしていた。おばあちゃんは今、ぼくがまだ兄ちゃんとお母さんを亡くした心の傷を負っていると思っているんだろう。もし、兄ちゃんとお母さんの骨が入っている骨壺を見てしまったらますます悲しんでしまうんじゃないかと不安でならなかった。
でも、おじいちゃんは迷うこともなく心配しているおばあちゃんにしっかりとした口調で話した。
「そうかもしれんな。だが、そろそろ立ち直ってもいいぐらいだと俺は思う。虹にはすまないが、いつまでも過去を引きずりながら生きていたら、国と家族を守り瀕死だった兵士を助ける為に命懸けの戦地へ行った結子と翼は嬉しく思わないと俺は思う。二人の納骨を見届けに行くか行かないか決めるのは虹だ。俺達がどうこう言う必要はないだろう」
おじいちゃんは、ぼくがそろそろ二人の死を乗り越えてほしいと思っていたのだ。その言葉を初めて聞いてぼくは気づいた。もしかすると、ぼくが歌を歌えるようになるずっと前からおじいちゃんはぼくが元気を取り戻す日が来るのを信じて敢えて自分の口から出さず思い留めてくれたのだ。戦争が終わった時から二人の分までちゃんと生きて前に進んでほしいと願っていたに違いない。
でも、二人はぼくがもう家族の死を乗り越えたことをまだ知らない。今、ここで言うべきかと思った時、おばあちゃんの話声が聞こえた。
「そうね。私が心配しすぎたのかもしれない。私達が選択することはないものね。しばらくは、こーちゃんに任せましょう」
話がまとまったかのようにそうだな、とおじいちゃんは頷いた。リビングの影に隠れていたぼくは台所にはいかずそのまま部屋へ戻った。
おじいちゃんとおばあちゃんの話を聞きぼくは仰向けになって体を倒した。8月にお兄ちゃんとお母さんの遺骨をお墓に納める。家族の一人としてそれを見届けなければならない。二人が入るお墓には死刑にされたお父さんの骨が入っている。お父さんを一人ぼっちにさせないようにと父方の祖父母が考えたのだろう。将来、ぼくもあのお墓に入るのだろう。できれば、早めに答えた方が手っ取り早いかも知れない。でも、今はどうするか考えていて正式な答えは出ていない。おばあちゃんが言っていたとおりもし、二人の遺骨が入っている骨壺を見たら彼らの顔を思い出し悲しんでまた過去を引きずってしまうのではないか。ぼくのことだからそうなるかもしれない。行くかないことにしようかと思うが、どうするかはまだ決まらない。考える時間はたくさんあるがなるべく早めに答えようと思った。
とりあえず、今は考えるのをやめてぼくはアラームをちゃんと設定しているか確認しスマホを充電器を繋げ部屋の電気を消し眠った。

〈昨日、世界中が最も使われている大人気インターネットアプリ「Edens Recreation Heaven」通称ERH(アース)に突如現れ今も日本だけではなく世界中が大注目されているアバターがいます。その注目を浴びているのが「NIJI」というアバターです〉
朝のニュース番組にNIJI(ぼく)のことが特集されていた。モニター画面には顔立ちが良く目がキラキラで明るいイケメン男子の姿をしたアバター「NIJI」の顔が映っていた。30代半ばの女性アナウンサーはモニターの前に立ってアナウンスを続けた。
〈NIJIは日本在住の10歳の男の子で繊細さと力強さ、迫力のある10歳の子供とは思えない歌声に世界中が絶賛の嵐を巻き起こしています。最初に投稿されたのは昔、歯科医師と両立しながらも多くの楽曲を手書き歌い続けてきた男性4人組ボーカルグループ GReeeNの「アカリ」をアカペラでカバーした録音音声です。こちらの録音音声を投稿した次の日にたった一日で467万以上という異例の再生回数を出しERH(アース)のワールド・ソング・チャート カバーソング部門1位とERH・ワールド・ミュージック・チャート ルーキー部門1位を取得し2冠達成という異例が起こり史上最年少で二冠達成するのは史上初でフォロワー数が3200万人超えをするなど大きな話題を呼びEHR(アース)で活躍する多くの著名人にも注目を浴びています〉
テレビに顔写真だけしか写っていないNIJI(ぼく)が「アカリ」のサビ部分だけ歌い上げている映像が流れた後、画面が切り替わり女性の隣に立っている50代ぐらいの小太りな男性アナウンサーが感想を述べ席に座っているコメンテーターの人達に訊ねた。
〈いや~、10歳とは思えない素晴らしい歌声ですね。僕はまだEHR(アース)をやっていなくて詳しくありませんがこの繊細さかつ力強い歌声を10歳の男の子が出しているとは驚きましたね。みなさんは、今の映像をご覧になってどう思いますか?〉
長いテーブルには4人のコメンテーターがいて一番左側に座っている経済専門の40代後半の男性解説者が話し出した。
〈実は僕、彼の歌を聴いたんですよね。初めて聴いた時はびっくりして調べてみたら二日前に始めたばかりの子じゃないですか。しかも、たった一日で二つの部門賞を取得し再生率はもちろん、3200万人以上のフォロワーを手に入れるなんて滅多にないことですよ。いや~、すごいですよね〉
男性解説者の隣の席に座っている20代後半のタレント女優はしっかりとしたコメントを出した。
〈あたしも彼の音声映像を観た時はすっごいビックリしました!あたしが初めてEHR(アース)を始めた時は2万人ぐらいだったんです。それなのに、たった一日で3200万人以上のフォロワーを叩き出すなんて異例中の異例ですね。しかも、アカペラなのでなんというかとても心に響きましたね〉
すると、タレント女優の隣に座っていた40代前半のフリーライターが口を挟むかのように喋り出した。
〈でも、中にはボイスチェンジャーを使っているとか10代と見せかけて年齢詐称しているとかでいろいろ噂になっているんですよね〉
男性アナウンサーは訊ねた。
〈EHR(アース)のアバターは自由に作れるんですか?〉
その質問に答えたのは、女性フリーライターの隣に座っていた50代前半の男性ジャーナリストだ。
〈いいえ。EHR(アース)のアバターは、素顔を隠したいと思っている人だけが使える機能が備わっているんです。そのアバターを作っているのがEHR(アース)のアナウンスなどをやっているAdamという自立型AIなんです〉
〈なるほど。素顔を隠している利用者はかなり多いんですか?〉
〈多いですね。あまり素顔を見せたくないと思っている人がEHR(アース)の利用者の中にいます。でも、素顔を公開したければ設定で自由に変更できます〉
男性ジャーナリストの解説が終わると女性アナウンサーは話を進めた。
〈たった一日で一気に有名になりましたNIJIですが、彼の歌を聴いた著名人の中からこのようなコメントが寄せられています〉
テレビに映っているスタジオが別のコーナーへと切り替わった。
最初に映ったのは、現実世界の芸能界だけでなくEHR(アース)でも作詞作曲を作り多くのアーティストに楽曲提供している有名なミュージシャンの顔が映った。もちろん、素顔でかっこいいサングラスを掛けていてロングヘアーでエナメルの服を着こなし耳にプラチナのピアスを付けているいかにもプロに見える人だ。名前は、「RYUJIN」という日本の音楽家で40代ぐらいだった。彼の素顔写真にコメントが添付している。

『10歳でしかも、たった一日で二つの部門にトップ入りするのはすごいことだ。彼のカバーソングを聴いてみたが、プロ顔負けの素晴らしい歌声だった。こんなすごい歌声を出せる子供はあんまり見かけない。感情を込めるだけでなくビブラートやこぶしをうまく使いこなしている。NIJIは星の下で生まれた天才児かもしれない』

続いて、現実世界ので活躍している日本だけでなく世界中でもすごい人気を持つバンドグループ「PUNCTURE TO BIRD」のボーカル HIDEKIの写真が映りだした。黒いマッシュウルフの髪型をしていて骨格が細くロゴが入ったTシャツの上に黒いレザージャケットを羽織りスリムパンツを履いてかっこよくキメている姿が映っていた。

『丁寧に歌っていて繊細さと力強さのある歌声に惚れ惚れした。こんな素晴らしい声を持つ子供はそうはいない。彼がアカペラで歌った「アカリ」は希望に満ち溢れていて守りたい助けたい人がいる、そして相手に勇気を与えているかのような感情と気持ちがこもっていて聴いた時、体中に電流が走ったかのようなとても素晴らしく感動した』

一般人の中に芸能界で活躍する著名人が自分の録音音声を聴いてコメントしてくれるなんて思ってもみなかった。昨日、バスの中で一つ一つコメントを読んでいるとぼくが知っている著名人もいれば知らない著名人からのコメントがたくさん着ていて驚いたが動揺はしなかった。
今日はテレビでNIJI(ぼく)のことを紹介されたが、ブログやSNSでは昨日からずっとNIJI(ぼく)の話題が続いていた。例えば、NIJI(ぼく)の歌声は桁外れで子供だと装って実は大人だと疑う人もいればAdamが嘘のアバターを作るはずないと否定しNIJI(ぼく)は正真正銘の子供だと信じる人もいる。ある時は、ボイスチェンジャーを使ってズルしているとの声が上がれば、性能なボイスチェンジャーでもあんな声は作れないだろと意見を述べる人もいる。SNSやブログではNIJI(ぼく)の姿と歌声に関しての疑惑で揺れていた。そんな話題の中で少し炎上していたのが一つだけあった。それは、NIJI(ぼく)の正体についてだ。
SNSではぼくと同じ年頃で芸能界にいる男の子の写真が次々とピックアップされきっとこの子だ、と決めつける人も多い。
そして、NIJI(ぼく)の新しい音声映像がいつEHR(アース)に公開されるか待ちわびている声も多かった。
EHR(アース)のタイムラインやチャットには「#NIJI」を付けた多くのコメントが書かれていた。

日本人:女性 28歳《次はどんなカバーソングを歌うんだろ?》

日本人:男性 34歳《NIJIが歌った音声映像はまだ「アカリ」だけしかないんだよね。早く次の歌聴きたい》

フランス人:男性 17歳《Je veux écouter plus de chansons de NIJI(もっとNIJIの歌を聴きたい)》

ブルガリア人:女性 19歳《След като слушах тази песен, се влюбих в NIJI(あの歌を聴いてから私、NIJIが好きになった)》

ベトナム人:女性 48歳《Tôi chắc rằng anh ấy có thể là ca sĩ giỏi nhất thế giới trong EHR(きっと、彼はEHRの中で世界一の歌手になれるわ)》

ブラジル人:男性57歳《Estou curioso sobre sua identidade, mas agora quero ouvir sua música. Estou ansioso para saber que tipo de nova música será lançada a seguir(彼の正体は気になるが今は、彼の歌が聴きたい。次はどんな新しいカバーソングが出るのか楽しみ)》

中国人:男性 39歳《很期待他以后的活动(彼の今後の活動が楽しみだな)》

シンガポール人:女性 《நான் நிஜியின் பாடலைக் கேட்டேன், உடனடியாக அதைப் பின்பற்றினேன்! ஒருவேளை நீங்கள் பார்க் யே-ஜுனுக்கு இணையாக ஒரு பிரபல பாடகராக இருப்பீர்கள்!(NIJIの歌を聴いてすぐフォローした!もしかしたら、パク・イエジュンと肩を並べるほどの有名歌手になるかも!)》

パク・イエジュンとは、EHR(アース)で一躍有名になり現実世界の芸能界ではアイドルだけでなく俳優もやっていて数々の映画やドラマにも出ている今でもすごい人気を誇る男性韓国人。現実世界だけでなくSNSやEHR(アース)でも活動し続けており韓国だけでなく全てのアジア各国にも彼のファンが多い。全アジア国のライブツアーになると現地の人達が空港で待機し歓迎するほど愛されているのだ。もちろん、アジア各国の中に日本も含まれている。韓国のアイドル・俳優パク・イエジュンはかなりの美男子で常に体を鍛えていて筋肉はすごいしガッチリした体でありながらもスマートで肌は白く小顔でありながら凛々しい瞳で女性ファンを釘付けにする。そして、ファッションセンスが高くいろんな服を兼ね揃えて着て来ることもある。そして、彼は4カ国語を話せるうえ、特に日本が好き。5年前にロシア軍と交戦する為、兵士として戦場に出兵された経験もある。
好きな食べ物は日本食とトッポギ。現在30歳。彼はEHR(アース)のミュージック・チャートランキング、オリコンチャートなど全てのランキングで2~4位までの上位に入っている。もちろん、彼もNIJIが歌ったカバーソングを聴いた。
今、EHR(アース)だけしか観れないタイのトーク番組「มหัศจรรย์(ワンダフル)」でタイ人司会者がゲスト出演しているイエジュンに今、世界で話題を呼んでいるNIJIの歌を聴いてどう思っているのか訊ねるとイエジュンはタイ語で流暢に話す。
「ฉันรู้สึกประหลาดใจกับเสียงร้องที่ไม่คิดว่าเป็นเด็กปกติ ฉันไม่คิดว่ามันง่ายเลยที่จะร้องเพลงได้ตอนอายุ 10 ขวบ ฉันซ่อนใบหน้าของฉันด้วยรูปประจำตัว แต่ฉันสามารถบอกได้เพียงแค่ฟังว่าเขาแสดงออกและร้องเพลงอย่างไรด้วยเสียงของเขา นอกจากนี้ มีคนบอกว่าเสียงร้องของ NIJI เป็นเสียงปลอมที่ประมวลผลโดยโปรแกรมเปลี่ยนเสียง แต่ขอพูดให้ชัดเจน เสียงร้องเพลงของเขาเป็นจริงและเป็นจริง ฉันเข้าใจ. ฉันรอคอยจริงๆว่าเขาจะทำอะไรในอนาคต(普通の子供とは思えない歌声で驚いたよ。10歳であの歌声を出せるなんてそう簡単にはいないと思うな。アバターで素顔を隠しているけど、声だけで彼がどんな風に表現して歌っているのか聴いただけで分かるよ。それに、世間ではNIJIの歌声はボイスチェンジャーで加工した偽物の声だと言っているけど、はっきり言わせてもらう。彼の歌声は正真正銘、本物の声だ。ぼくには分かる。今後、彼がどんな活躍をしてくれるのかとても楽しみだよ。)」
彼のインタビューに番組を観ているリスナー達は

韓国人:女性 25歳《이에쥰, NIJI 노래 듣고구나「イエジュン、NIJIの歌聴いたんだね」》

日本人:女性 29歳《歌のプリンス。NIJIを称賛!!》

インドネシア人:女性21歳《Yejun, hari ini juga keren!(イエジュン、今日もかっこいい!)》

タイ人:女性27歳《NIJI อิจฉาที่ Yejun . ยกย่อง(イエジュンに褒められるなんてNIJIが羨ましい)》

インド人:男性41歳《मैं फिर से विश्व भ्रमण देखने जाना चाहता हूँ(またワールドツアー観に行きたいな)》

パク・イエジュンのインタビューに多くの視聴者達が送信したコメントの嵐は一切止む様子がない。
どのEHR(アース)のオリジナル番組にもNIJIのことについていろいろ訊き出す場面が世界中のゲスト達がNIJIの感想を言うのが多かった。その感想の中でゲスト達が口を揃えて言ったのは、NIJIが今後、どんなカバーソングを歌い活躍するのか楽しみだという期待の声が一番多かった。世界中の著名人達から期待されたらすごいプレッシャーだが、とても嬉しい。日本だけでなく世界中がぼくの歌を聴いてくれてたことでぼくは幸せ者だと思えてくる。有頂天になってもおかしくない。
でも、称賛してくれるゲスト達の中にNIJIの歌を否定する人がいた。とある日本番組にインタビューを受けている日本の女性シンガーソングライターが嘲笑いながらNIJIに対して皮肉な言葉を出す。その日本の女性シンガーソングライターはNIJIと同じ素顔を隠すアバターだった。ポニーテールで茶髪を束ねスラッとした長い足を組みモデル並みの体型で滑らかな手に指は細く目元に黒いアイラインが引き唇はブラウン系の口紅で塗られ耳に小さなダイヤのイヤリングを付けている。クールな衣装で番組スタジオに出ている彼女は、2年前の8月頃にEHR(アース)で歌手デビューしたシンガーソングライター。名前は「ぺニーズ」。気が強そうな彼女だがファンを大切にしていて若者達から人気がある。
ぺニーズは番組のインタビューでこう述べた。
「NIJIって最近、話題になっている子でしょ?カバーソングで有名になったとか。もちろん。少しだけど聴きました。歌はうまかったけど、あたしほどではありませんでしたよ。聞けば普通の子供でしかも、10歳であんな歌声を出せるなんてありえませんよ。今じゃ彼はボイスチェンジャーを使ったとかで疑われているんでしょ?ボイスチェンジャーを使ってまでそんなに有名になりたいのですかね?まぁ、あの子が疑われている気持ちは分からなくもないわ。みんなは、あの子を称賛しているみたいだけど、このEHR(アース)で一番最高なのはこのあたしですよ。あの子なんかよりあたしの方が上だし歌にはすごい自信ありますからね。ポッとでの新人ごときがあたしの実力を超えるはずがない」
彼女の強気なコメントに番組を観た視聴者達が

日本人:男性 23歳《そうだそうだ!》

中国人:男性 22歳《正如预期的那样,NIJI 无法超越 Pennies(さすがにNIJIはぺニーズを超えられないよな)》

日本人:女性 31歳《NIJIはボイスチェンジャーの疑いがあるからね》

イタリア人:女性 27歳《Penny è il migliore!(ぺニーズは最高!)》

イラン人:男性 39歳《با وجود اینکه یک آواتار است ، پنی هنوز زیبا است(アバターとはいえ、ぺニーズはやっぱり可愛い)》

などなどNIJIを認めていないユーザーもいて彼女の言葉に同感している人も多かった。でも、不評の声はほんの一部で他はNIJIを認め評価する声がとても多かった。不評の声は、一瞬にしてかき消され高評価の声に埋め尽くされた。
ネットの世界は本当に広い。地球よりすごく広いんじゃないんだろうか。たった一つだけの音声動画で日本中はもちろん、海を越えて世界中まで広まりぼくの歌を聴いていろんな言語でたくさんのメッセージを送ってくれる。つい最近までは、戦争があって険悪ムードだったのに今はもう友達感覚みたいで平和になった。ネット上ではNIJIの噂や話題が続くうえで次は何を歌うのか楽しみにしている人も多かった。一人の子供が世界中の人達の心を掴み広まり期待や噂が飛び交いNIJIの話題性がますますヒートアップしてくる。兄ちゃんはぼくの歌声を「神様からの贈り物」と言っていたがそうかもしれない。ぼくの歌声はみんなの心を掴み感動させ気分を昂らせる。EHR(アース)がNIJI(ぼく)の名を世界中に広めてくれる。NIJI(ぼく)は子供とは思えないほどの歌唱力を持っているので誰が何と言われようともぼくはNIJIとして歌い続ける。
もっとたくさん、世界中の人にぼくの歌を聴かせてあげたい。
次は何を歌おうか。何を歌うかいろいろ検索しながら探す。よさそうな歌を見つけたら歌詞を覚えて録音音声を使ってアカペラで歌う。アカペラで歌ったカバーソングの録音音声をアップロードする。「いいね」の数と「よくないね」の数とコメントの数が増える。もちろん、「いいね」の数の方が圧倒的に多い。そして、リスナー達から期待と応援のコメントがたくさん届いた。コメント欄を埋め尽くしてしまうほどNIJI(ぼく)を高評価しているコメントがたくさん届いた。コメントには、期待と応援のメッセージが書いてあった。しばしば届いていた中傷や反対などの声を上げる不評コメントは高評価の嵐に飲み込まれて消滅した。
学校の登下校で音楽を聴き気に入った歌があったらこれをカバーしようと決めバスが降りて人気の少ない道の真ん中で歌う。時には一緒に下校している神馬くんに聴かせながら録音することもあった。歌い終え録音した音声をアップロードするとまたまた嬉しいコメントが届いた。「いいね」の数もだんだん増え不評コメントは来なくなった。カバーソング(アカペラver.)の音声映像を公開する度にミュージック・コンテンツのランキング順位が上昇しまた1位を獲ったりSNSでNIJI(ぼく)の音声映像を拡散されたりしていた。
3200万人以上いるぼくのフォロワーは少しずつ増え中には有名人にフォローしてもらうことが多くなった。
アカペラでカバーソングを録音しながら歌い、音声をEHR(アース)のミュージック・コンテンツにアップロードする。
その繰り返しを続けていたら、気づけばもう6月は終わり夏の時季が始まっていた。
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