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第4章
その34 『蒼き大地(ティエラ・デ・アスール)』~エナンデリア大陸略史~
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34
青き大地(ティエラ・デ・アスール)と呼ばれている、この世界について記す。
この世界における最大の大陸はエナンデリア大陸である。
他には大小の島々が位置するものの、人間の住む土地は、エナンデリア大陸だけだ。
この世界には、たとえば古文書にあるような『船』は存在しないために、人々は大陸を離れることはなかった。
そして海に乗り出すことは最大の『禁忌』であった。
大陸北部には、アステル王国がある。
国土は狭く、冬の寒さは厳しく夏は短い。
最古の国であり、小国ではあるものの、アステル王家には各国の王たちが敬意を払っている。
アステル王国近隣には戦士の国ガルガンドが位置する。
この国の人々はプラチナブロンドの髪と淡いブルーの目などから、精霊族(セレナン)に似ていると称され『精霊枝族(セ・エレメンティア)』とも呼ばれている。
さらに北の果てには修道士たちが開拓し、失われつつあった古記録を保持している古代聖堂がある。この古代聖堂と呼ばれる施設は、大陸各地に広まっている宗教組織「聖堂」の原型である。
まさにこの地において、真月の女神イル・リリヤに守られし「咎人」たちとこの青き清浄なる大地の精霊の御使いたる第一世代の精霊(セレナン)たちとの邂逅があり、約束が交わされたのだ。
咎人たちは、かつて遙か彼方で滅びた世界《古き園、蒼き大地》より、イル・リリヤの腕に抱かれ、虚海を越えてやってきた、繭から生まれ出たものたちである。
新しい世界《セレナン、青き大地(ティエラ・デ・アスール)》へ。
人は精霊の領分である海へは乗り出さぬことを誓い、精霊の魂である「精霊火」には充分な敬意を払うと約束して、セレナンの大地に降り立ち、始まりの地アステルより、エナンデリア大陸全体へと広がっていったのである。
大陸中央部にはかつてノスタルヒアス王国と呼ばれた大国があった。現在では、東部はレギオン王国、西部はエルレーン公国領土に分割されている。
大陸歴1000年度。レギオン国王に双子の王子が誕生した際、この王子たちの成人と共に、領土を二つに分け統治するのが最善であると、『聖堂』の最高位にある『教王』が、世界の大いなる意思よりの託宣として公布した。
国王は代々、初代の「善き王」フィリクス・レギオンの名前を継承していた。エルレーン公国においても同様であり、王の名としてフィリクスは好まれ、家名はレギオンと決まっていた。
各国の王、貴族達は、女神イル・リリヤが最初に繭から目覚めさせた者たち「始まりの千家族」の後継者たちである。
キスピ、クーナ、アマソナ、ファド、モルガナ等々の小国。
だが時代が下るにつれ正確な記録は失われ散逸していく。
王制を廃止する国も現れた。
南部の大国、サウダージ共和国である。この国は精霊と魔法を忌み、禁忌となし罰則を科した。このことによって、魔力を生まれ持った人材は他国に流出し、逆に、魔力を持たないか、わずかしか保有しない者はサウダージ共和国に移住した。
禁断の技術《科学》を発展させた国である。
そしてまた、新たに国を興した者もあった。
レギオン国王の叔父にして『聖堂』最高位の、教王。ガルデル・バルケス・ロカ・レギオン。この者は生まれつき粗暴にして残忍。
長じて『教王』となって二十年後に、親族と妻子すべてを殺して『魔の月』に捧げ、禁断の力を手に入れて、南へ逃げた。
サウダージ共和国に隣接するキスピ王国の領土をかすめ取り、グーリア神聖帝国を興した。自らは神聖皇帝、または神祖と呼ばせた。
この際、サウダージ共和国を統治する女性大統領との間で、武器の提供などの密約が交わされていたと推測される。
ミリヤと呼ばれる、この女性大統領もまた、常に十四、五歳ほどの少女の姿をしていたという伝説があり、謎の多い人物である。その詳細については後述する。 ※注釈1※
グーリア帝国国民は、地の底から湧いて出た、とも、天空の『魔の月』より地上に下されたとも伝承されている。
他国の民に比べ異常な性質を持つのは、これを原因とするのであると。
たとえば、寿命の長さ。
成人し老いるにつれて皮膚が固くなり竜のように鎧われて、動くことにも不自由するのに反して寿命は二百年以上になるという。
他国では、まれに出現する、強大な魔力を生まれ持つ『魔法使い』にしか現れない性質である。
神祖ガルデルは生涯独身を通し、不老不死のまま、今も帝国におけるただ一人の皇帝として君臨し続けている。
《蒼き大地》 ~エナンデリア大陸略史~ より抜粋。
著・編者、魔導師協会長レニウス・バルケス・ロカ・レギオン
発行・全大陸魔導師協会事務局
青き大地(ティエラ・デ・アスール)と呼ばれている、この世界について記す。
この世界における最大の大陸はエナンデリア大陸である。
他には大小の島々が位置するものの、人間の住む土地は、エナンデリア大陸だけだ。
この世界には、たとえば古文書にあるような『船』は存在しないために、人々は大陸を離れることはなかった。
そして海に乗り出すことは最大の『禁忌』であった。
大陸北部には、アステル王国がある。
国土は狭く、冬の寒さは厳しく夏は短い。
最古の国であり、小国ではあるものの、アステル王家には各国の王たちが敬意を払っている。
アステル王国近隣には戦士の国ガルガンドが位置する。
この国の人々はプラチナブロンドの髪と淡いブルーの目などから、精霊族(セレナン)に似ていると称され『精霊枝族(セ・エレメンティア)』とも呼ばれている。
さらに北の果てには修道士たちが開拓し、失われつつあった古記録を保持している古代聖堂がある。この古代聖堂と呼ばれる施設は、大陸各地に広まっている宗教組織「聖堂」の原型である。
まさにこの地において、真月の女神イル・リリヤに守られし「咎人」たちとこの青き清浄なる大地の精霊の御使いたる第一世代の精霊(セレナン)たちとの邂逅があり、約束が交わされたのだ。
咎人たちは、かつて遙か彼方で滅びた世界《古き園、蒼き大地》より、イル・リリヤの腕に抱かれ、虚海を越えてやってきた、繭から生まれ出たものたちである。
新しい世界《セレナン、青き大地(ティエラ・デ・アスール)》へ。
人は精霊の領分である海へは乗り出さぬことを誓い、精霊の魂である「精霊火」には充分な敬意を払うと約束して、セレナンの大地に降り立ち、始まりの地アステルより、エナンデリア大陸全体へと広がっていったのである。
大陸中央部にはかつてノスタルヒアス王国と呼ばれた大国があった。現在では、東部はレギオン王国、西部はエルレーン公国領土に分割されている。
大陸歴1000年度。レギオン国王に双子の王子が誕生した際、この王子たちの成人と共に、領土を二つに分け統治するのが最善であると、『聖堂』の最高位にある『教王』が、世界の大いなる意思よりの託宣として公布した。
国王は代々、初代の「善き王」フィリクス・レギオンの名前を継承していた。エルレーン公国においても同様であり、王の名としてフィリクスは好まれ、家名はレギオンと決まっていた。
各国の王、貴族達は、女神イル・リリヤが最初に繭から目覚めさせた者たち「始まりの千家族」の後継者たちである。
キスピ、クーナ、アマソナ、ファド、モルガナ等々の小国。
だが時代が下るにつれ正確な記録は失われ散逸していく。
王制を廃止する国も現れた。
南部の大国、サウダージ共和国である。この国は精霊と魔法を忌み、禁忌となし罰則を科した。このことによって、魔力を生まれ持った人材は他国に流出し、逆に、魔力を持たないか、わずかしか保有しない者はサウダージ共和国に移住した。
禁断の技術《科学》を発展させた国である。
そしてまた、新たに国を興した者もあった。
レギオン国王の叔父にして『聖堂』最高位の、教王。ガルデル・バルケス・ロカ・レギオン。この者は生まれつき粗暴にして残忍。
長じて『教王』となって二十年後に、親族と妻子すべてを殺して『魔の月』に捧げ、禁断の力を手に入れて、南へ逃げた。
サウダージ共和国に隣接するキスピ王国の領土をかすめ取り、グーリア神聖帝国を興した。自らは神聖皇帝、または神祖と呼ばせた。
この際、サウダージ共和国を統治する女性大統領との間で、武器の提供などの密約が交わされていたと推測される。
ミリヤと呼ばれる、この女性大統領もまた、常に十四、五歳ほどの少女の姿をしていたという伝説があり、謎の多い人物である。その詳細については後述する。 ※注釈1※
グーリア帝国国民は、地の底から湧いて出た、とも、天空の『魔の月』より地上に下されたとも伝承されている。
他国の民に比べ異常な性質を持つのは、これを原因とするのであると。
たとえば、寿命の長さ。
成人し老いるにつれて皮膚が固くなり竜のように鎧われて、動くことにも不自由するのに反して寿命は二百年以上になるという。
他国では、まれに出現する、強大な魔力を生まれ持つ『魔法使い』にしか現れない性質である。
神祖ガルデルは生涯独身を通し、不老不死のまま、今も帝国におけるただ一人の皇帝として君臨し続けている。
《蒼き大地》 ~エナンデリア大陸略史~ より抜粋。
著・編者、魔導師協会長レニウス・バルケス・ロカ・レギオン
発行・全大陸魔導師協会事務局
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