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第5章
その7 危険な三人娘
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7
しばらくして、異変が起こった。
ミハイルは、がっくりと膝をつき、倒れそうになっていた。
「どういうことだ。身体が……ぴりぴりと痺れて」
「そうだろうとも! このスリアゴの先端には、しびれ薬を塗っておいたのだ! かすり傷でもつければ、こっちのものだ」
胸を張るカントゥータ。
すでに倒された求婚者たちは、唖然とした。
実際には、彼らに対してこの危険な武器が奮われることはなかった。
ミハイルに対して使ったと言うことは、彼の実力を評価したということである。
「そんなものをどこから」
「アトク兄にもらったのだ!」
更に胸を張る。自慢げだ。
「そこ自慢するとこかよ!」
呆れる弟、クイブロである。
「アトク兄は卑怯な戦いが得意なのだ!」
「いやいや、それ誤解されるから、やめてくれ妹よ」
そこにツッコミを入れた人物がいる。
肩までの長さの金髪を、うなじで一つに束ねている。
長身の、凜々しい青年だった。
先ほどまで銀竜(アルゲントゥム・ドラコー)と共に『輝く雪と氷の祭り』の見守りを受け持っていたアトクである。
祭りは滞りなく進み、山頂へ向かう、ウククと呼ばれる『神がかりの7人』を見送ったアトクは、あとを銀竜に託して、この『欠けた月の村』へと戻ってきたのだった。
「そこはせめて、頭が良いとか、知略に長けているとか、他に言いようがあるだろう」
「アトク兄!」
「おれも生まれ変わって少しは頭が良くなったんだからな」
そのとき、黄色い歓声があがった。
「キャー! すてきっ、カントゥータ姉さま!」
「どんな手を使っても勝つ!」
「さすが! 『欠けた月』の村一番の戦士! 素晴らしいわ!」
「アトク兄も! 昔よりずうっとすてきっ!」
村の少女たちが乱入してきたのだった。
ティカ、スルプイ、ラプラ。
クイブロやカルナックと同年代、十代の前半だ。
これくらいの年頃の少女たちは、得てして少年たちよりも身体の発育も早く精神的にも大人びているものである。
「やっほー! カル坊、みんなで来ちゃった!」
一番年かさのラプラ(翼)が、快活に笑って手を振り、カルナックのそばにやってきて取り囲む。頭を撫でたり、抱き合ったり。
「ラプラ、『カル坊』って呼ぶのはやめて。はずかしいよ」
カルナックは頬を赤くして抗議した。
「だってレフィス兄様が、そう呼んでるじゃない。だから、うちらも」
と、けんかっ早いラプラ。
「カル坊はホントに可愛いもの!」
髪が赤っぽい巻き毛のティカ(花)。
「小さい男の子みたいな感じで。恥ずかしがってすぐ赤くなるのも、たまらない~」
名前こそ、高原に咲き乱れる可憐な薄紫色の花からとったというのに、おとなしさなど微塵も無いスルプイ。
欠けた月の村で『腕に覚えのある子は誰か』と問えば必ず、三人の名前があがるだろう。カントゥータの一番弟子と自負する無敵少女軍団。
そしてこの三人だけではない。村の少女たちは皆、カルナックを大いに気に入り可愛がっていた。……彼女たちなりに。
「カル坊はこんなに良い子なのに! どうしてクイブロみたいなお子様に引っかかっちゃったの?」
「だって、すてき……だから。みんなは、クイブロのこと、気にならないの? どう思ってるの?」
不安そうにカルナックが少女達に問う。
すぐに、どっと笑い声が上がった。
「村の男の子なんて誰も、たいしたことないわ(腕っぷしでは)あたしたちのほうが強いもの。だからみんな成人の儀の後は、すぐに出稼ぎに行っちゃうのよ」
胸を張るスルプイ。欠けた月の村の子供たち全員による腕相撲大会で、少年達を尻目に、いつも優勝するのは、彼女である。
「リサス兄様は違ってたわ。強いし優しいし面倒見が良いし。でもガルガンドに出稼ぎに行っちゃって残念」
ぼやいたのはティカ。(花)
するとラプラが食いつく。
「そういえばアトク兄様も、野性的で良くない? 特に帰ってきてから」
「ええ? ラプラ、狙ってるの? アトク兄様は、銀竜様のお弟子になって、神様の仲間入りしちゃったんでしょ?」
「そこがいいのよ。村の守り神様になってからは『ちょい悪アニキ』って感じで。ねえ、アトク兄様!」
ラプラは他の少女達より頭一つ大きい。すばやく集団を抜け出してアトクの側にやってきた。
「え? 『ちょい悪オヤジ』じゃなくて?」
反射的に応えてしまったアトクは、ぎくりとした。
「やっぱりアトク兄様、『先祖還り』だったんだ」
ラプラの目が、猛禽類を思わせる鋭さで、ぎらりと光ったような気がしたのだ。
「そんなことどうでもいいだろう。おれはもう人間じゃない。おまえたちの相手をしている場合でもないんでな」
アトクは気まずそうに目線を外した。
自慢ではないが女にモテた体験など一度も無いアトクである。カントゥータの下の世代の少女たちの逞しさと積極性には、ちょっと引いてしまうのだった。
「……意地悪。でも、時間はまだ、あるもん。あたしは、もっともっといい女になって、振り向かせてみせるから」
ラプラは呟いた。
……だってアトク兄様は、年取らないもんね。
やがてラプラは、他の少女たち、ティカとスルプイがカルナックを囲んで質問攻めにしている輪の中に入っていった。
「婚約の披露宴で聞くのもなんだけど。どこがイイのクイブロの」
「まだまだガキんちょじゃない」
「カル坊なら、ぜったい、引く手あまたよ! クイブロなんかで妥協しちゃだめ!」
少女たちに囲まれるのは嫌いでは無いカルナックである。
クイブロは気が気ではなかったが、少女達に牽制されて近づけない。村の大人たちは、上機嫌で、「仲が良くていいのう」などと言い合っている。
「助けてくれたの。クイブロと最初に会ったとき、おれはコンドルモドキに襲われてて」
「でも、助けてもらったからって理由で誰でも好きになったりしないでしょ。どこにピンときたの?」
「あのね……顔が、すき。声が、すき。なんだか、よくわからないけど、なつかしいの。それから……」
赤くなり、頭から湯気が出そうになって、カルナックは応える。
「すぐ、ちゅーしたり抱っこしたり、やらしいこと言うけど。それはがまんできるから」
「ええ!?」
「それは問題だな!」
「どんなこと言われたの?」
顔を寄せ合う三人娘。カルナックは、小さな声で、うちあける。
「……とか。……って」
「うっわ~~サイテ~~!」
「セクハラよ!」
「有罪ね!」
「おまえら! おれの嫁にヘンなこと吹き込むな! セクハラってなんだよ!」
酒飲みのおじさんたちを振り切り、カントゥータとミハイルの試合も気になるがそれも後回しにして、クイブロが走ってきた。
「知らないけど、それって重罪なのよ」
「そうよ。『先祖還り』の間じゃ有名よ」
「カル坊が世間知らずだからって、いいようにするのは許さないんだからっ」
三人娘はカルナックを囲んで、かわるがわる、可愛がるのだった。
「あたしらは」
「うちらは」
「カル坊の親衛隊なの!」
声を合わせる三人娘。
「はっきり言うと『カル坊・守り隊』! 精霊様、レフィス・トール様やラト・ナ・ルア様が心配なさってるような危険な目にはあわせないんだから!」
「どういう意味だよ」
「婚約披露したからって、さっそく、いやらしいことしないように、ってこと」
「カル坊は十三くらいでしょ」
「あんたロリコンなのキチクなの!?」
「やめてくれ!」
頭を抱えるクイブロである。
しかし、そんな心の弱ったクイブロに、カルナックは少女達の輪から離れて駆け寄っていく。
「クイブロ。ほんとに、おれが嫁でいいの?」
「な、なに言ってんだ?」
「みんな、強くて凜々しくて健康だよ。子どもも授かれるよ。おれと違って……もしかしたらクイブロも、こんなにひよわな、おれなんかじゃなくて……ほかの女の子とのほうが幸せになれるんじゃないの?」
「……バカだな」
クイブロはカルナックを抱きしめた。
「おれが一生を添い遂げたいのは、他の誰でもない。おまえだけだ」
「バカは、おまえだ……村には、こんなすてきな女の子達がいっぱいいるのに」
「おまえしか目に入らなかった」
「クイブロったら、今ごろ求婚してるわよ!」
「まったく手が早いんだか奥手なんだか! ちゅーしてるわよ!」
「さすがエロ魔王ね! いずれ変身して空を飛ぶにちがいないわ」
「その可能性は100%ねえわ!」
カルナックを抱きしめながら思わず叫んだクイブロだったが。
……はて100%とは何だったろうかと、ちらりと心の片隅で考えたのだった。
※
クイブロとカルナックの求婚と三人娘の騒ぎをよそに、カントゥータとミハイルの戦いは、勝負がついていた。
カントゥータの操る飛び道具スリアゴの、金属の先端に塗られていたしびれ薬にやられて倒れたミハイルは、もはや動くこともかなわない。
「よし。おまえに決めた!」
「「「「え~?」」」」
何人もの青年達の叫びが重なった。
「なぜ!」
「僕たちと同じで、彼も負けたのにっ!」
「顔がいい」
平然と言い放つカントゥータである。
「あと、筋肉の鍛え方も、良い感じだ!」
それに、とカントゥータは、ほのかに頬を上気させた。
「なにより髪の色と目の色が、いい」
ミハイルは精霊族と似た銀髪と青い目をしていたのだった。
「それが本音だったか!」
試合を見守っていたコマラパは嘆息した。
「手間をかけ、顔もよく腕に自信のある若者をエルレーン中から募ったというのに、まったく誰一人としてカントゥータに敵わなかったとは……」
しばらくして、異変が起こった。
ミハイルは、がっくりと膝をつき、倒れそうになっていた。
「どういうことだ。身体が……ぴりぴりと痺れて」
「そうだろうとも! このスリアゴの先端には、しびれ薬を塗っておいたのだ! かすり傷でもつければ、こっちのものだ」
胸を張るカントゥータ。
すでに倒された求婚者たちは、唖然とした。
実際には、彼らに対してこの危険な武器が奮われることはなかった。
ミハイルに対して使ったと言うことは、彼の実力を評価したということである。
「そんなものをどこから」
「アトク兄にもらったのだ!」
更に胸を張る。自慢げだ。
「そこ自慢するとこかよ!」
呆れる弟、クイブロである。
「アトク兄は卑怯な戦いが得意なのだ!」
「いやいや、それ誤解されるから、やめてくれ妹よ」
そこにツッコミを入れた人物がいる。
肩までの長さの金髪を、うなじで一つに束ねている。
長身の、凜々しい青年だった。
先ほどまで銀竜(アルゲントゥム・ドラコー)と共に『輝く雪と氷の祭り』の見守りを受け持っていたアトクである。
祭りは滞りなく進み、山頂へ向かう、ウククと呼ばれる『神がかりの7人』を見送ったアトクは、あとを銀竜に託して、この『欠けた月の村』へと戻ってきたのだった。
「そこはせめて、頭が良いとか、知略に長けているとか、他に言いようがあるだろう」
「アトク兄!」
「おれも生まれ変わって少しは頭が良くなったんだからな」
そのとき、黄色い歓声があがった。
「キャー! すてきっ、カントゥータ姉さま!」
「どんな手を使っても勝つ!」
「さすが! 『欠けた月』の村一番の戦士! 素晴らしいわ!」
「アトク兄も! 昔よりずうっとすてきっ!」
村の少女たちが乱入してきたのだった。
ティカ、スルプイ、ラプラ。
クイブロやカルナックと同年代、十代の前半だ。
これくらいの年頃の少女たちは、得てして少年たちよりも身体の発育も早く精神的にも大人びているものである。
「やっほー! カル坊、みんなで来ちゃった!」
一番年かさのラプラ(翼)が、快活に笑って手を振り、カルナックのそばにやってきて取り囲む。頭を撫でたり、抱き合ったり。
「ラプラ、『カル坊』って呼ぶのはやめて。はずかしいよ」
カルナックは頬を赤くして抗議した。
「だってレフィス兄様が、そう呼んでるじゃない。だから、うちらも」
と、けんかっ早いラプラ。
「カル坊はホントに可愛いもの!」
髪が赤っぽい巻き毛のティカ(花)。
「小さい男の子みたいな感じで。恥ずかしがってすぐ赤くなるのも、たまらない~」
名前こそ、高原に咲き乱れる可憐な薄紫色の花からとったというのに、おとなしさなど微塵も無いスルプイ。
欠けた月の村で『腕に覚えのある子は誰か』と問えば必ず、三人の名前があがるだろう。カントゥータの一番弟子と自負する無敵少女軍団。
そしてこの三人だけではない。村の少女たちは皆、カルナックを大いに気に入り可愛がっていた。……彼女たちなりに。
「カル坊はこんなに良い子なのに! どうしてクイブロみたいなお子様に引っかかっちゃったの?」
「だって、すてき……だから。みんなは、クイブロのこと、気にならないの? どう思ってるの?」
不安そうにカルナックが少女達に問う。
すぐに、どっと笑い声が上がった。
「村の男の子なんて誰も、たいしたことないわ(腕っぷしでは)あたしたちのほうが強いもの。だからみんな成人の儀の後は、すぐに出稼ぎに行っちゃうのよ」
胸を張るスルプイ。欠けた月の村の子供たち全員による腕相撲大会で、少年達を尻目に、いつも優勝するのは、彼女である。
「リサス兄様は違ってたわ。強いし優しいし面倒見が良いし。でもガルガンドに出稼ぎに行っちゃって残念」
ぼやいたのはティカ。(花)
するとラプラが食いつく。
「そういえばアトク兄様も、野性的で良くない? 特に帰ってきてから」
「ええ? ラプラ、狙ってるの? アトク兄様は、銀竜様のお弟子になって、神様の仲間入りしちゃったんでしょ?」
「そこがいいのよ。村の守り神様になってからは『ちょい悪アニキ』って感じで。ねえ、アトク兄様!」
ラプラは他の少女達より頭一つ大きい。すばやく集団を抜け出してアトクの側にやってきた。
「え? 『ちょい悪オヤジ』じゃなくて?」
反射的に応えてしまったアトクは、ぎくりとした。
「やっぱりアトク兄様、『先祖還り』だったんだ」
ラプラの目が、猛禽類を思わせる鋭さで、ぎらりと光ったような気がしたのだ。
「そんなことどうでもいいだろう。おれはもう人間じゃない。おまえたちの相手をしている場合でもないんでな」
アトクは気まずそうに目線を外した。
自慢ではないが女にモテた体験など一度も無いアトクである。カントゥータの下の世代の少女たちの逞しさと積極性には、ちょっと引いてしまうのだった。
「……意地悪。でも、時間はまだ、あるもん。あたしは、もっともっといい女になって、振り向かせてみせるから」
ラプラは呟いた。
……だってアトク兄様は、年取らないもんね。
やがてラプラは、他の少女たち、ティカとスルプイがカルナックを囲んで質問攻めにしている輪の中に入っていった。
「婚約の披露宴で聞くのもなんだけど。どこがイイのクイブロの」
「まだまだガキんちょじゃない」
「カル坊なら、ぜったい、引く手あまたよ! クイブロなんかで妥協しちゃだめ!」
少女たちに囲まれるのは嫌いでは無いカルナックである。
クイブロは気が気ではなかったが、少女達に牽制されて近づけない。村の大人たちは、上機嫌で、「仲が良くていいのう」などと言い合っている。
「助けてくれたの。クイブロと最初に会ったとき、おれはコンドルモドキに襲われてて」
「でも、助けてもらったからって理由で誰でも好きになったりしないでしょ。どこにピンときたの?」
「あのね……顔が、すき。声が、すき。なんだか、よくわからないけど、なつかしいの。それから……」
赤くなり、頭から湯気が出そうになって、カルナックは応える。
「すぐ、ちゅーしたり抱っこしたり、やらしいこと言うけど。それはがまんできるから」
「ええ!?」
「それは問題だな!」
「どんなこと言われたの?」
顔を寄せ合う三人娘。カルナックは、小さな声で、うちあける。
「……とか。……って」
「うっわ~~サイテ~~!」
「セクハラよ!」
「有罪ね!」
「おまえら! おれの嫁にヘンなこと吹き込むな! セクハラってなんだよ!」
酒飲みのおじさんたちを振り切り、カントゥータとミハイルの試合も気になるがそれも後回しにして、クイブロが走ってきた。
「知らないけど、それって重罪なのよ」
「そうよ。『先祖還り』の間じゃ有名よ」
「カル坊が世間知らずだからって、いいようにするのは許さないんだからっ」
三人娘はカルナックを囲んで、かわるがわる、可愛がるのだった。
「あたしらは」
「うちらは」
「カル坊の親衛隊なの!」
声を合わせる三人娘。
「はっきり言うと『カル坊・守り隊』! 精霊様、レフィス・トール様やラト・ナ・ルア様が心配なさってるような危険な目にはあわせないんだから!」
「どういう意味だよ」
「婚約披露したからって、さっそく、いやらしいことしないように、ってこと」
「カル坊は十三くらいでしょ」
「あんたロリコンなのキチクなの!?」
「やめてくれ!」
頭を抱えるクイブロである。
しかし、そんな心の弱ったクイブロに、カルナックは少女達の輪から離れて駆け寄っていく。
「クイブロ。ほんとに、おれが嫁でいいの?」
「な、なに言ってんだ?」
「みんな、強くて凜々しくて健康だよ。子どもも授かれるよ。おれと違って……もしかしたらクイブロも、こんなにひよわな、おれなんかじゃなくて……ほかの女の子とのほうが幸せになれるんじゃないの?」
「……バカだな」
クイブロはカルナックを抱きしめた。
「おれが一生を添い遂げたいのは、他の誰でもない。おまえだけだ」
「バカは、おまえだ……村には、こんなすてきな女の子達がいっぱいいるのに」
「おまえしか目に入らなかった」
「クイブロったら、今ごろ求婚してるわよ!」
「まったく手が早いんだか奥手なんだか! ちゅーしてるわよ!」
「さすがエロ魔王ね! いずれ変身して空を飛ぶにちがいないわ」
「その可能性は100%ねえわ!」
カルナックを抱きしめながら思わず叫んだクイブロだったが。
……はて100%とは何だったろうかと、ちらりと心の片隅で考えたのだった。
※
クイブロとカルナックの求婚と三人娘の騒ぎをよそに、カントゥータとミハイルの戦いは、勝負がついていた。
カントゥータの操る飛び道具スリアゴの、金属の先端に塗られていたしびれ薬にやられて倒れたミハイルは、もはや動くこともかなわない。
「よし。おまえに決めた!」
「「「「え~?」」」」
何人もの青年達の叫びが重なった。
「なぜ!」
「僕たちと同じで、彼も負けたのにっ!」
「顔がいい」
平然と言い放つカントゥータである。
「あと、筋肉の鍛え方も、良い感じだ!」
それに、とカントゥータは、ほのかに頬を上気させた。
「なにより髪の色と目の色が、いい」
ミハイルは精霊族と似た銀髪と青い目をしていたのだった。
「それが本音だったか!」
試合を見守っていたコマラパは嘆息した。
「手間をかけ、顔もよく腕に自信のある若者をエルレーン中から募ったというのに、まったく誰一人としてカントゥータに敵わなかったとは……」
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