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第1章
その13 呪術師の流儀。「私が攻めてもいいのだな」
しおりを挟む13
「カルナック。あんたも、おれの嫁だろ? この四年間、忘れたことはなかった。会いたかった!」
おれは必死で訴えかけた。
ここで離れたら、いつまた会えるかわからない。
ちょっと困ったのは、今は呪術師(ブルッホ)と名乗っているカルナックが、別れていた間に育っていて、おれより背が高いことだった。
仕方ないので背伸びをして抱きついた。
「ルナ。カルナック。おれは、おまえをまるごと全部、愛してる。誰も手放したりしない。おまえを取り戻したい」
「……この、私を含めてか?」
呪術師(ブルッホ)カルナックは、ひんやりとつめたい声で囁いて。
そのしなやかな腕で、おれを、強く抱きしめた。
「前もって言っておく。私の人格は、成人男性体だ。この私、呪術師が意識の主導権を握っているときは、そうなる。それでも構わないというのなら……」
意外に筋肉質な腕でおれを抱いて、軽々と持ち上げて。
顔を近づけてきた。
「証明してみせて」
おれに被さってきた、薄い、唇は。
それはひどく冷たかった。
あれ?
もしかしてこれって。
おれが、されてる……!?
触れている唇が、なんだか、だんだん熱を帯びてきたのを感じる。
むさぼられているというか。なんというか。
しかしだ。おれときたら、キスしているときは呼吸ができないという感覚を身をもって味わっていて、くらくらしてきた。
呼吸できなかったのは、おれだけではなかったのか、カルナックも、しばらくしてようやく唇を離して、ふうっと深く息を吸って。
酷薄に、微笑んだ。
「では、私のほうが、攻めてもいいのだな?」
獲物を狙う肉食獣の目つきじゃないだろうか、これは。
牙(スアール)と夜(ノーチェ)を横目で見たが、二頭とも、のんびりくつろいでいて、起き上がる気配もない。
わかってるよ。スアールとノーチェが助けてくれるとか、期待なんかしてねえよ。
「え。そそそそそそ、それって! まさか」
おれが、される方ってこと?
「やっぱり、いやか。そうだよな。普通は……」
物憂げに目を伏せる。
「ち、ちがうよ。もちろん、いいさ! おれたちは伴侶なんだから」
ぎゃああ~!
おれってば。
なんで? こういうこと言っちゃった?
「あっ、でででででも、おれまだ、男とやったことないから! 心の準備をする時間も、ちょっとは欲しいかも!」
「安心しろ。私は知っているから。……優しくしてやる」
なんだこれ!
どういう展開だよ!
おれどうなっちゃうんだよ!
でも、引き下がれない。
「うん、わかった。おれは、もう二度とカルナックを、ルナを、カオリを、失いたくない。そのためなら、なんでもするよ」
「へーえ。いい、覚悟だな」
カルナックが、おれの耳元で囁いた。
「私の伴侶。『小さい鷹(クイブロ)』。おまえを他の誰にも渡さない。独占欲は、おまえだけが持っているものじゃない。私だって」
やられた!?
銀竜様(アルちゃん)の加護(スキル)か!
ほんとだこれマジやばい。ぴくりとも動けなくなる。
押し倒された!
自分より背が高い成人男性である呪術師(ブルッホ)カルナックに。
最初に寝かされていたクッションに、押さえ込まれたのだ。
そしてキスされた。
深いキスだ。ひどく熱い。
魂まで絡め取られてしまうような。
仕方ない。
おれは覚悟を決めた。
カルナックを失うことに比べたら、怖いものなんかあるわけない。
全身の力を抜いた。
も、もう、どうにでもなれだ!
すると、すぐに。
「ぷっ」
と、カルナックが、吹きだした。
「あはははははっ! おかしい! クイブロ、おまえ、嘘が下手だな! そんなに、緊張して。怖かったのか? あっははははは!」
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