こんなわたしでもいいですか?

五月七日 外

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彼の怠惰な夏休み

彼の怠惰な夏休み③

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「お兄ちゃんゲームしよう!」
「悪いが子ども相手でも手加減しないぞ~!」
「絶対に負けないもん!」
 俺はリビングに入ってから、ともちゃんとゲームで遊ぶことになった。ちなみに栞は台所でお茶の用意をしている。……アイツ、エプロン姿も似合うなぁ……
「お兄ちゃん早く~」
 俺が少し栞の方を見ていると、ともちゃんがテレビの前で待っていた。
「ふふ、ヒーローは遅れて登場するものだからな……」
「ヒーロー格好わるい~」
 ……ともちゃんにはまだこの格好よさが分からないかぁ……

「この紅茶うめえ!」
 ゲームも一段落し栞の入れた紅茶を飲んだのだが、驚くほどおいしかった。
「照れますな~」
 栞は少しだけ顔を赤くしながらパタパタしていた。
「クッキーも美味しいよ!」
 ともちゃんはそう言って俺にクッキーを取ってくれた。……なんていい子なんだ……
「おお!クッキーもうめえ!これはいいお嫁さんになるなぁ~」
「…………」
 栞は顔を真っ赤にして俯いてる。……普段コイツ変なことしかしないからなぁ、ちょっとこういう反応見れるの楽しいな……
 俺がそんなことを考えていると、ともちゃんが肩をトントンと叩いてきた。
「ん?ともちゃんどうした?」
「お兄ちゃんはいつ栞お姉ちゃんと結婚するの?」
「ぶふっ!」
 俺がクッキーと紅茶を楽しんでいると、ともちゃんがとんでもないことを聞いてきた。
「お兄ちゃん汚い~」
「急に吹き出してどうしたんですか~?ちなみにお姉ちゃんたちは二十歳になったら結婚しますよ~」
 栞はもう復活したのか平然と俺が吹き出してしまった紅茶を拭いている。……え?何でともちゃんの質問に驚かないの?というより何しれっと結婚することにしてんだよ!さっきまでの恥ずかしそうにしていたお前はどこにいったの!?……
「コホン!……ともちゃん、悪いけど俺はお姉ちゃんとけ……」
「ただいま~!噂の彼氏が来てるって本当~?」
「あっ!ママだ~!」
 俺が結婚する予定は無いと言おうとすると栞の母親が帰ってきた。ともちゃんはお母さんを迎えにいくために玄関に走っていってしまった。……ともちゃんは元気がいいなぁ、あれ?今お母さん何て言いました?……
 俺が何か言いたげな顔で栞を見ていると
「ああ~!さっきお母さんに連絡したんですよ~」
 栞はそんなことを言って俺にスマホの画面を見せてくれた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今日の夜ご飯は何がいい?」
「そんなことよりお母さん!ダーリンが家に来てるよ~!」
「本当!?じゃあ今日はお赤飯ね!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なあ……」
「どうしました~?」
「もしかしてお前両親にも俺がダーリンなんて言ってないよな?」
「え?ダメでした?」
 栞はキョトンとしている。
「何で付き合ってもないのに両親にダーリンなんて言えるんだよ~!!!」
「まあまあ、その内付き合う予定じゃないですか~」
「お前の頭どうなってるんだよ!予定でそんなこと両親に言わないだろ!てか、お前と付き合う可能性はさっき消えたしな……俺、お前の母さんに何て言えばいんだよ……」
「え~と、娘さんを僕にくださいとか?」
「余計ややこしくなるわ!」
 俺がそう叫んでいると何故か栞がニヤリと笑った。
「ふっふっふ……これが本当の外堀から埋めろ作戦ですよ、どうです?流石の飛翔さんもこれでわたしと結婚するしかないでしょう!……まあ、これで無理なら既成事実を作るだけですけどね~」
 ……無駄に頭のいい変態ほど怖いものはないなぁ……
「だが甘いな、この程度で俺が諦めると思ったか!お母さんには申し訳ないが事実を伝えてやる!俺の鋼のメンタルなめんなよ!」
「なに!?」
 栞が驚いていると、栞のお母さんがリビングに入ってきた。
「こんにちわ~あなたが飛翔君ね!栞のことをよろしくお願いね~」
「あ、あ……こんにちわ……」
栞のお母さんは出るところはしっかりと出ていて、しまるところはきっちりしまっているモデルのような体型で仕事帰りだからだろうかスーツを着ていた。栞のお母さんだから美人だろうとは思っていたが、想像以上の美人で俺はちょっと声を詰まらせてしまっていた。
 ……くそ~、スーツにポニーテールで普通ならキリッとした印象を持つのに顔つきが少し幼いせいで何だかのんびりした印象も持てるこの絶妙なバランスはなんなんだ~!この人に実は俺、彼氏でもなくて只の友達なんです~とか言わないといけないのか……これは、俺の豆腐メンタルじゃあ厳しいなぁ、間違った鋼のメンタルだった……
俺は本を借りに来ただけなのに何だか大変なことになってしまった。
 
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