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異世界行ったら、魔王の城の中でした。
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「人間……そろそろ起きぬか?その、そろそろ妾も我慢の限界なのだが……」
心地よい、澄んだ女性の声が聞こえてくる。
女性の言葉から察するに、どうもさっき見た光景は夢だったようだ。まあ、それもそうだろう。
異世界行ったら、いきなりラスボスの魔王が目の前にいるなんて、召喚者がいるとしたら頭がおかしいとしか思えない。ゲームで言ったら、オープニングのお次はいきなりラストバトル!……どんなクソゲーだよ。
俺の異世界ライフは、夢オチという最悪の形で始まったが、気を取り直して頑張ろう。
「む?やっとのお目覚めか。お主人間にしては怠けすぎではないか?」
「いやぁ、人間なんてみんな怠け……」
俺の言葉はそこで止まった。
理由は簡単だ。声の主の姿があまりにも美しかったのだ。
燃え盛る炎のような真っ赤な髪と二つの瞳。全体的にスラッとしていて線は細いのに、出るところは出ていて、絞るところは絞られている。具体的に言うと、おっぱいとお尻は大きくて、ウエストが細いナイスボディ。
真っ白な柔肌は、対照的な漆黒のドレスに包まれており、胸元に髪や瞳と同じ赤い宝石が輝いていた。
そして、体は大人びているのに幼げな顔立ちをしており、可愛い少女のようにも美しい女性のようにも見える。
その姿に俺の心臓は、鷲掴みどころか握りつぶされていた。
すると、すぐ右隣から聞き覚えのある低い声が響いた。
「人間よ、魔王さまに見とれるのはいいが……挨拶が先だろう?」
「魔王ってなぁ……ああいうのはさっきの夢に出てきた……」
俺は、あんなに綺麗な人を魔王だなんて言う、アホンタラの顔を見た。……見てしまった
「ま、ままま魔王だーーー!!!」
「だから、私は壁などでは……ん?違う!魔王さまではない!」
隣にいたアホンタラは、俺の夢に出てきた魔王だった。
「お、おおお前が魔王じゃない訳ないだろ!」
「さまをつけんかさまを!それと、私は魔王さまではない!」
「じゃあ、誰が魔王なんだよ!」
俺がチビりそうになりながら魔王と対峙していると、笑い声が部屋に響いた。
「アッハッハ!お主たちのやり取りは面白いの!本当に今日始めて会ったのか?息ピッタリではないか」
キレイな女の人は、腹を押さえながら大笑いしていた。ちなみに、笑った顔は可愛かった。
すると、魔王は片膝を地面に付け、女の人に頭を垂れた。
「私は、この人間とは地下室で会ったのが始めてです」
「カロス、敬語はよせ。お主の方が妾よりずっと年上だろうが、何だかお主に敬語を使われるとムズ痒くて仕方がない。それと、お主は真面目過ぎるぞ?」
「真面目さが私の取り柄ですから……コホンッ、取り柄なもので」
「カロス……言い換えれてないぞ」
「あの~、ちょっと質問いいですか?」
俺が小さく手を挙げると、二人の視線が俺に向いた。
俺は一度、大きく深呼吸をしてから続きを話した。
「えっと、ここって魔王の城であってます?」
「そうだの、妾の城だから魔王の城であっとるな」
「それで、このいかにも魔王みたいなカロスさんは……」
俺が全部言い切るよりも前に、女の人が口を開いた。
「うむ。カロスは妾の手下だ。まあ、幹部だの」
「ですよね。……俺、宇津木詩乃って言います。どうぞよろしくお願いします」
「うつ……?シノでよいな!妾は、リーリア=イスキローティ=サタナだ。よろしく、頼むぞシノ」
「長いんで、リアでいいですか?」
「おまっ、人間!魔王さまに……」
「よい、妾が許す」
魔王=リアの静止によって、今にも俺を掴む勢いのカロスが止まる。(……ヤバい!カロスまじ怖い!こんなのに掴みかかられたら、俺即死もんだよ!……)
俺は恐怖で、カロスは我慢をして、体を震わしていた。
「リア……そんな風に妾を呼んだのは、シノ。お主が始めてだぞ。異世界の人間がこんなに面白いとは思わなかったの~」
リアは上機嫌で笑っており、カロスは地面に膝をつけたままだ。二人とも完全に油断している。
俺に残された選択肢は少ない……一つは、このまま逃げれそうな機会を待つ。ただ、これはいつそんな機会が来るかも分からないし、下手したら一生こない。
もう一つは、魔王と戦う。ぶっちゃけ、これは無い。もしかしたら、俺にチート能力があるかもしれないが、こんな強そうなのに勝てる気がしない。特にカロス……とにかく、怖い。
そして、最後に一つ。それは……
「カロス、お主もシノが面白いとは思わぬか?」
(……まだだ、まだ早い……)
「私は、まだなんとも……」
「カロスは人付き合いが苦手だからの~」
(……今だ!……)
俺はタイミングを計り、全速力で逃げた。
……そう、最後の選択肢。それは、とにかく今全力で逃げることだった。
心地よい、澄んだ女性の声が聞こえてくる。
女性の言葉から察するに、どうもさっき見た光景は夢だったようだ。まあ、それもそうだろう。
異世界行ったら、いきなりラスボスの魔王が目の前にいるなんて、召喚者がいるとしたら頭がおかしいとしか思えない。ゲームで言ったら、オープニングのお次はいきなりラストバトル!……どんなクソゲーだよ。
俺の異世界ライフは、夢オチという最悪の形で始まったが、気を取り直して頑張ろう。
「む?やっとのお目覚めか。お主人間にしては怠けすぎではないか?」
「いやぁ、人間なんてみんな怠け……」
俺の言葉はそこで止まった。
理由は簡単だ。声の主の姿があまりにも美しかったのだ。
燃え盛る炎のような真っ赤な髪と二つの瞳。全体的にスラッとしていて線は細いのに、出るところは出ていて、絞るところは絞られている。具体的に言うと、おっぱいとお尻は大きくて、ウエストが細いナイスボディ。
真っ白な柔肌は、対照的な漆黒のドレスに包まれており、胸元に髪や瞳と同じ赤い宝石が輝いていた。
そして、体は大人びているのに幼げな顔立ちをしており、可愛い少女のようにも美しい女性のようにも見える。
その姿に俺の心臓は、鷲掴みどころか握りつぶされていた。
すると、すぐ右隣から聞き覚えのある低い声が響いた。
「人間よ、魔王さまに見とれるのはいいが……挨拶が先だろう?」
「魔王ってなぁ……ああいうのはさっきの夢に出てきた……」
俺は、あんなに綺麗な人を魔王だなんて言う、アホンタラの顔を見た。……見てしまった
「ま、ままま魔王だーーー!!!」
「だから、私は壁などでは……ん?違う!魔王さまではない!」
隣にいたアホンタラは、俺の夢に出てきた魔王だった。
「お、おおお前が魔王じゃない訳ないだろ!」
「さまをつけんかさまを!それと、私は魔王さまではない!」
「じゃあ、誰が魔王なんだよ!」
俺がチビりそうになりながら魔王と対峙していると、笑い声が部屋に響いた。
「アッハッハ!お主たちのやり取りは面白いの!本当に今日始めて会ったのか?息ピッタリではないか」
キレイな女の人は、腹を押さえながら大笑いしていた。ちなみに、笑った顔は可愛かった。
すると、魔王は片膝を地面に付け、女の人に頭を垂れた。
「私は、この人間とは地下室で会ったのが始めてです」
「カロス、敬語はよせ。お主の方が妾よりずっと年上だろうが、何だかお主に敬語を使われるとムズ痒くて仕方がない。それと、お主は真面目過ぎるぞ?」
「真面目さが私の取り柄ですから……コホンッ、取り柄なもので」
「カロス……言い換えれてないぞ」
「あの~、ちょっと質問いいですか?」
俺が小さく手を挙げると、二人の視線が俺に向いた。
俺は一度、大きく深呼吸をしてから続きを話した。
「えっと、ここって魔王の城であってます?」
「そうだの、妾の城だから魔王の城であっとるな」
「それで、このいかにも魔王みたいなカロスさんは……」
俺が全部言い切るよりも前に、女の人が口を開いた。
「うむ。カロスは妾の手下だ。まあ、幹部だの」
「ですよね。……俺、宇津木詩乃って言います。どうぞよろしくお願いします」
「うつ……?シノでよいな!妾は、リーリア=イスキローティ=サタナだ。よろしく、頼むぞシノ」
「長いんで、リアでいいですか?」
「おまっ、人間!魔王さまに……」
「よい、妾が許す」
魔王=リアの静止によって、今にも俺を掴む勢いのカロスが止まる。(……ヤバい!カロスまじ怖い!こんなのに掴みかかられたら、俺即死もんだよ!……)
俺は恐怖で、カロスは我慢をして、体を震わしていた。
「リア……そんな風に妾を呼んだのは、シノ。お主が始めてだぞ。異世界の人間がこんなに面白いとは思わなかったの~」
リアは上機嫌で笑っており、カロスは地面に膝をつけたままだ。二人とも完全に油断している。
俺に残された選択肢は少ない……一つは、このまま逃げれそうな機会を待つ。ただ、これはいつそんな機会が来るかも分からないし、下手したら一生こない。
もう一つは、魔王と戦う。ぶっちゃけ、これは無い。もしかしたら、俺にチート能力があるかもしれないが、こんな強そうなのに勝てる気がしない。特にカロス……とにかく、怖い。
そして、最後に一つ。それは……
「カロス、お主もシノが面白いとは思わぬか?」
(……まだだ、まだ早い……)
「私は、まだなんとも……」
「カロスは人付き合いが苦手だからの~」
(……今だ!……)
俺はタイミングを計り、全速力で逃げた。
……そう、最後の選択肢。それは、とにかく今全力で逃げることだった。
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