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目の前で悪口をいう彼①
しおりを挟む小学校で頭のシラミの検査がされたとき。
結果はもちろん、公表されなかったが、どうしてか、クラスメイトの女子、駒沢さんが「引っかかったらしい」との噂が。
情報が漏れたわけではなく、彼女が人一倍、髪の毛が多く、縮れてもいて、ふだんから目立っていたに「シラミいそう」と思われたらしい。
そのころから空想癖がひどく、こういう世事にに無頓着だった俺は、噂を聞いたからとて、どうとも思わず。
というわけには、いかなかった。
放課後、図書室にしばらく滞在して「そろそろ帰ろう」とランドセルをとりに教室にいったところ。
「もっと、遠ざけろって!」
「これ見たら、あの子、どんな顔するかなあ?」
四人のクラスメイトが、額を寄せあって、こそこそくすくす。
なんとなく近寄りがたく、その場から覗いてみると、どうやら、机を放しているよう。
そう、シラミの噂がある駒沢さんの机と、隣の机を。
「KYな空想くん」があだ名の俺も、さすがに、ぴんときた。
と、同時に驚きすぎて、放心。
ふだん空想に浸りがちとあって、こんなにも生生しい人の悪意を目の当たりにしたのは、初めてだったから。
そのうち、四人がこちらに気づいたものの「やだあ、見られちゃったあ」「だって、シラミうつされたくねえもんなあ」とへらへら。
「焦りもしないのか」と変に感心しつつ、不思議にも思ったもので。
だって、この四人の誰も、駒沢さんの隣の席ではないし。
なんなら、近くの席でもく。
まあ、翌日、学校にきたら、机はもとにもどっていたし、口止めされずとも、俺はだんまりだったから、この一件は闇に葬られて。
が、三か月後くらいに、このことに関連した、さらに驚きのデキゴトが。
シラミの噂がされなくなったころ、授業で駒沢さんと俺と、あのときの一人が、同じグループに。
「シラミがうつるー」とヨケイなお世話に机を放したほどだから、駒沢さんをバカにしているか、キラっているのかと思いきや。
猫を借りてきたように、卑屈に笑うだけで、ろくに口をきかず、もじもじ。
この態度の豹変ぶりを見て「こんな人間になりたくない」と心底、思って。
「相手に面とむかって悪口を云える人間になりたい」とも決意。
で、高校生になって、有言実行するときが。
授業中、背中になにかが当たり、見回すと、足元に畳んだ紙が。
「トモダチ同士、手紙を投げあっているのか」と思いつつ、ちょうど紙が開いて、文字が覗けてしまい。
「はやく、死んでくれよ。
そうじゃないと、俺が賭けに負けるだろ」
思わず、椅子を尻で蹴って、立ちあがった。
先生を含め、皆がぽかんとして注目するなか、二人だけがチガウ反応。
一人は鎌田くん。
うつむいたまま、かすかに肩を震わせている。
もう一人は千葉くん。
心持、ふんぞりかえって、にやついている。
俄然、つかつかとつめ寄り、千葉くんの机を、紙切れを持つ手で叩きつけた。
「笑いながら人を傷つけて、死に追いやろうとするなんて、最低だな。
おまえのほうが、俺は死んでほしいよ」
高校生になっても空想癖継続中。
おかげで、今までイジメに気づかなかったし、クラスメイトの名前と顔は覚えつつ、友人以外の、その性格や特徴、人間関係は、今一つかめていない。
千葉くんも然り。
メモの内容からして、かなり、あくどいイジメっ子のようだが、後先のことは考えなかった。
とにかく、悪口は面とむかって云うべきだと、信念を通したかったから。
まあ、タダではすまないだろうと、覚悟はしていたけど。
「はあ?なに云ってんの?おまえ、頭、おかしーんじゃねえの?」と笑いとばし、俺をイカレ野郎にして、しばらっくれるか。
「死んでほしいだ!?おまえ、ナニサマだ!」と殴られて、ぼこぼこにされ、病院送りになるか。
「冤罪でーす。そんな紙、知らないし、謝ってくださーい」とこの場ではウヤムヤにしておき、あとでオシオキという、新たに俺をイジメのターゲットにするのか。
結果がどうなっても、面とむかって悪口をぶちまけたのを後悔しない!
との心がまえでいたところ。
「・・・そうだな。ごめん」
ぼんやりとしながらも、きちんと俺と目を合わせて、まさかの謝罪。
ずっこけそうなほど拍子抜け展開になったとはいえ、やや世間ずれしている俺は、胸がじーんとしたもので。
「なんだ、正面切ってぶつかれば、相手もすこしは考えてくれるもんだな」と。
「俺こそ、死んでほしいなんて云って、ごめん」
まだ睨みを利かせつつ、その点については、こちらも謝り、自分の席へと。
俺としては、すっきりさっぱりしたのが「今のなに?」とすっかり皆、置いてけぼりで、教室の空気は迷子。
そのうち「蒸しかえしたら、収拾がつかなさそうだし・・・」と全力スルーすることに、暗黙の了解がされたようで「え、まあ、じゃあ、教科書の六十五ページを」と授業再開。
一斉に、ページをめくる音がして、だれも「おおい!」とツッコむことなく。
「イジメ!ダメ!ゼッタイ!」は揺るぎない共通認識なれど、できるだけ、公にせず、関わりたくないと思うのが、多くの人の本音。
授業が済んでも、クラスメイトは授業中の波乱について、だれも一言もコメントせず、なにごともなかったような雰囲気をかもしたものだが、ザンネンながら、もう一波乱が起こることに・・・。
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