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メンヘラ幼なじみの種①
しおりを挟む会社の同期の玉木は、今まで知りあった人のなかでイチバン、馬が合った。
仕事だろうと、飲み会だろうと、できるだけ長くイッショにいし、同じ趣味のゲームに、時間の許す限り二人して興じていたい。
が、いつもジャマがはいる。
残業にしろ、酒飲みにしろ、遊びにしろ、テンションが最高潮になったところで、カナラズ電話が。
玉木の幼なじみの男からだ。
着信音が鳴ると、間髪いれず電話にでて「分かった」とうなずき、毎度毎度、玉木は後ろ髪を引かれるようなことなく、とっとと帰ってしまう。
そりゃあ「俺より、幼なじみのほうが大切なのか!」と地団駄を踏んで「キー!」と涙目にハンカチを噛みしめるほど悔しがったが、引っかかってもいた。
だって、幼なじみの(予定にない急な)呼びだしを食らう玉木の態度に、ぶれがなかったから。
どんな状況だろうと、断らないのはもちろん、すこしも渋ったり、迷うことなく、かといって、胸を弾ませるようでもなく、真顔で粛々と帰宅するさまは、使命感や義務感に駆られているようで。
その絶対服従ぶりを見て、やや心配になったのと、おじゃま虫な幼なじみが気に食わなかったのとで、思いきって聞いてみた。
「こたえたくなかったら、聞き流してくれていいから」と前置きして。
「どうして、そんなに幼なじみの電話を気にかけるんだ?」
俺に責めるつもりはなかったが、いつも途中で抜けだすのに、負い目を抱いていたのだろう。
「いつも、ごめんな」と云って、事情を明かしてくれた。
「中学生のころ、急にあいつから電話がかかってきて『今すぐ会いたい』って。
でも、俺、友人とカラオケの最中だったから、断ったんだ。
そしたら、その直後、あいつ自殺したんだよ。
一命はとりとめたけど、後遺症で車椅子生活することになって、今も・・・。
まわりは『おまえはワルクない』って云ってくれるとはいえ、考えてしまうんだ。
あのとき俺が会いにいっていたら、あいつは健康体のままでいられたんじゃないかって。
どうしても後悔を捨てきれないし、また断ったら、今度こそ死なれるんじゃないかって、コワくて・・・」
俺の正直な感想は「うっわーヤッカイ極まりない病的かまってちゃんだなー」。
いや、そりゃあ胸の内にとどめたとはいえ、眉間に皺を寄せないよう堪えるのが大変も大変。
話を聞いて「そっか、だったら、しかたないな」とうなずけるどころか、なおのこと幼なじみを憎たらしく思ったから。
(当てつけに自殺したのだろうから、持たなくていい)罪悪感につけこんで「真っ先に俺のところにこないと、死ぬぞ」と俺の愛しの玉木を脅してやがってえええええ!と。
かといって、へたに口ダシや介入をしないほうがいいだろう。
「おまえは、狂ったヤツに依存をされてダマサレテいるんだ!」と諭したり、ムリに二人の仲を引き裂こうとすれば、病的かまってちゃんが、どんな暴挙にでるともしれない。
そう、メンヘラ幼なじみの寄生から脱却させるには、時間をかけて、すこしずつ導いていかないと。
俺との交流を通して、健全な人づきあいを知ってもらい、玉木自らの意志で「このままではダメだ」と決断できるように。
そう考えて「事情は分かったよ。これからも、俺のこと気にせず、幼なじみのもとに行ってやってくれ」としばらくは、距離を置き見守るかまえ。
その上で、せめて、俺といるときは、なんの気がねなくリラックスして、笑ってもらえるよう心がけて。
幼なじみのヒステリーで、すべてがオジャンになるので、刺激しないよう、その点をとくに気をつけていたのが、呼びだしはエスカレート。
ついには忙しい仕事真っ最中にも、電話がかかってくるようになり、やっぱり突っぱれない玉木は、どんどん途中で退勤することが増えて、さらに朝からの呼びだしで、休むことも・・・。
さすがに放っておけずに、つぎに電話がかかってきたら、玉木を押さえつけてでもスマホを奪いとり「いい加減にしろ!」と一喝。
「云っておくけど、俺は玉木ほど、お優しくないからな!?」と恫喝するように説教をかましてやろうと意気こんでいたものを。
ちょうど玉木が一人でトイレに行ったところで、呼びだしがあったらしく、その日は空ぶり。
「まあ、急ぐことはない」と歯噛みしつつ、一目散に帰る背中を見送ったのだが、いつもとチガイ、一時間後、連絡が。
胸騒ぎがして「どうした!」と電話に跳びつけば、俺が騒ぎたてるのに、なかなか応えようとせず。
長く間を空けてから、呆けたように呟いたもので。
「あいつ、あいつが、とうとう死んでしまった・・・・」と。
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