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メンヘラ幼なじみの種②
しおりを挟む※ここからホラーな展開で、すこしグロイ描写があります。R15なのでご注意を。
いつもの呼びだしで、慌てて幼なじみ宅に行ったものの、すでに息の根がなかったという。
死体の第一発見者となった玉木は、一応、警察の聴取を受け、お通夜と葬式にでたあと、しばらく休職することに。
しかたない。
長年「死んでやる」とさんざん脅され、人生を振りまわされた挙句、あっけなくあの世に逝かれたのだから。
それにしても、幼なじみのその動向には、やや疑問が。
話を聞く限り、玉木はいつものように急いで会いにいき、遅れることもなかったというに、どうして「よくも裏切ったな!」とばかり死に走ったのか。
なにが気に食わなかったのやら・・・。
まあ、いい。
幼なじみがこの世からいなくなったのにはチガイなく、悲しみに暮れる玉木には申し訳ないが、俺はせいせいとしていた。
幼なじみの寄生ぶりは病的だったに、さほど玉木にダメージなく、引きはがせてよかったと。
いや、玉木の心は深く傷ついたとはいえ、もともと実直な常識人だ。
メンヘラの寄生により、狂わされていた思考や感覚は、時間をかけて、俺のようなマトモな人と接するうちに修復されていくはず。
幼なじみの呪縛から解き放たれたなら、前以上に、人生を自由闊達に謳歌できるかもしれない。
あらたな人生を歩みはじめるとき、隣にいるのは幼なじみではなく、俺だ。
亡くなった人をあれこれ云いたくはないが、俺は幼なじみを哀れまないし、同情もしない。
「自業自得だ!」とまで思わないとはいえ、自分の欲を優先させ、思い慕う相手を踏みにじりばかりで、すこしも尊重しようとしなかったことの、当然の結果のように思えた。
俺は、おまえとチガって、不安ではなく安心を与えて、玉木をつなぎとめるからな。
そうして、死ぬまで友情を育みながら人生をともに歩むのを、雲の上から悔しがって見てろ。
そう胸の内で幼なじみに宣言をし、憔悴しきった玉木を献身的にサポート。
道のりは長いものと心得ていたに、未練がましく幼なじみについて語ったとしても、イヤな顔をせず、うんうんと聞いてやった。
それが、どれだけ現実ばなれした、荒唐無稽なものでも。
玉木がよく語ったのは、過去ではなく、死後のこと。
なんでも葬式のあと、幼なじみの母親から「自分になにかあったら、玉木くんにこれを渡してほしいと頼まれて」と種を渡されたという。
アーモンドのようなそれを遺言で「植えて育ててほしい」と。
その言葉に従ったところ、三日にして植木鉢から腕の半分くらいの茎が生えて。
茎の先っぽには、拳ほどのツボミというか、食虫植物の頭?のようなもの。
「育つの早いなあ」としげしげと眺めていたら、ぱっかり口を開けて「俺だよ」と発声したとか。
「一般の成人男性より高めで癖のある、あいつの声にまちがえなかった。
そりゃあ、驚いたとはいえ、よくよく聞くと『生前、いいのこしたことを伝えたい。語りつくしたら、消えるから』っていうから、しばらく、つきあってやろうと思うんだ。
仕事を休んでいるのに・・・ってちょっと考えるけど、おまえは、どう思う?」
「いいんじゃないか」とあっさり応じつつ、もちろん真に受けていなかった。
回復するには、罪悪感の負荷を軽減させなければならず、こうした妄想をするプロセスがヒツヨウなのだろうと、客観的に判断してのこと。
だから、幼なじみの種については放任して、変らず世話を見つづけた、そのやり方は正解だったようで、思った以上に、みるみる順調に玉木の顔色はよくなっていき。
あとすこしで、復職ができるだろうとう段階まできて、ずっと絶っていたゲームもするように。
このときは、玉木の家に毎日、通いながらも、もう泊まることなく、夜は自宅にもどっていたに、休みまえなんか、二人してネットでゲームをしたり。
ヘッドマイクをつけ、話ながらプレイをしていたのが、おひらきになった、その日。
玉木がログアウトしても、まだゲームをつづけようと、ヘッドマイクをつけたままでいたら。
「どうした?」とイヤホンから聞こえた。
声が小さく、かすれているから、テーブルに置いたヘッドマイクが拾ったものだろう。
それにしても一人暮らしのはずで、俺以外に、話しかける相手が、どこにいるというのか?
頭をひねる間もなく「一ヵ月、つきあってくれて、ありがとう」と応じる声が。
「おまえと腹を割って、とことん話せて、これでもう、心のこりはない。
ただ、最後にひとつ、願いを叶えてくれないか?」
玉木の低めの声音とちがい、男言葉を使う女子のよう。
玉木が一人芝居をしているように思えない。
「一般の成人男性より高めで癖のある、あいつの声にまちがえなかった」とまえに聞いたのを思いだし、ぞっとする。
そんな、まさか・・・。
「ずっと、おまえをスキだったのに、スナオに思いを伝えず、過ちを犯しつづけ、ついには罰が当たった俺を、すこしでも哀れんでくれるなら、こんな姿だけど、どうか・・・」
「・・・分かった」
「スキ」と耳にし、どうにもイヤな予感がして「やめろ!」と聞こえなくてもかまわず、叫んだところ。
イヤホンから身の毛もよだつ音が、どっと流れてきて。
例えるなら、でっかい骨つき肉にかぶりつき、骨を砕いて、血をすすりながら咀嚼しているような。
金縛りにあったように硬直することしばし。
急激に吐き気をもよおし、たまらず外したヘッドマイクを放って、口元を手で押さえながら、家を跳びだした。
喉までせりあがったものを、どうにか飲みこみ、玉木の家に急行。
昨日、マンションの泥掃除を手伝ったとかで、そのとき使ったショベルが玄関にあったのを、つかんで部屋へ。
扉を開け放つと、室内は隙間ないほど、血がちらばって、壁にこびりつき、生臭い匂いがぷんぷん。
そして、中央に置かれた植木鉢。
まえは腕の半分くらいの背丈だったのが、今や俺と身長が変わらず。
食虫植物の頭のようなそれは、人の顔の二倍ほどのサイズ。
口のまわりは血まみれで、ところどころ髪が引っかかって・・・。
玉木の身を案じるより、怖気が上まわって、扉を開けたまま、部屋に踏みこめず。
「どうして・・・」とかすかに呟けば、嘲笑うように「キャハハハハハハ!」と血まみれの口をでかでかと開ける食虫植物。
「どうしてって、当りまえじゃないか!
俺がいなくなったこの世で、おまえとシアワセに生きさせるかっつうの!」
「ざまあみろ!」とさらにケタタマシク笑われ、かっとなり「だったら、どうして!」と室内の血だまりに、足を突っこんだ。
「どうして、死に急いだんんだ!
自分が置いてけぼりになるのがイヤだったなら、どうして!」
そのままの勢いで食虫植物に迫ったのが「あいつが死んだのは、おまえのせいだ!」と叫ばれ、肩を跳ねストップ。
「あいつは、変らず従順でいるつもりだったろうが、俺には分かったからな!
あいつの心が俺から放れて、おまえに引きよせられているのが!
だから、奪いかえそうとして、また自殺未遂をしようとしたんだよ!
うっかり飲む量をマチガエて、ぽっくり逝っちまったったけどさ!
べつに死ななくても、いつかは心中してたろうさ!
おまえが、あいつの心を欲しがったせいでな!」
はじめは動揺したのが、途中から怒りに火がつき「だまれ!」と激高。
力強く踏みだし、ショベルを振りあげ、茎に叩きつけた。
悲鳴の代わりに「キャハハハハ!」と耳をつんざくように響いたのが、そりゃあ、おぞましかったものを、歯を食いしばって何回も叩きつけ、ついには頭部分を切り落とし、床にごろりと。
茎が折れたさい、噴きだした赤い液体を浴びながら、息を切らし、あらためて、それを見やる。
もう発声せずとも、笑ったまま硬直し、真っ赤な口内を覗かせて。
にわかに、ぶるりと震えたなら、なにかを吐きだした。
床にころがりでてきたのは、玉木の生首。
力なく血だまりに膝をつき、玉木の顔を抱きしめ、涙ながらに悔しさを噛みしめたもので。
もしメンヘラ幼なじみに目をつけられなければ、もっともっと長生きして、よりよき人生を歩めただろう、いいヤツだったのに・・・。
それにしても、泣きじゃくる俺の気も知らないで、なんと安らかな死に顔をしているものか。
幼なじみへの怒りや恨みを抱く以上に、そのことが、やるせなくてしかたなかった。
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