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「おまえに抱かれたのは一生の恥だ!」との叫びに彼はほくそ笑む
しおりを挟む学食で友人と昼食をとりながら談笑していたところ。
「おまえに抱かれたのは一生の恥だ!」
野太い声で叫ばれ、俺はカレーを服に落としてしまった。
黄ばんだTシャツにかまわず、口を開けたまま、去っていく男をお見送り。
彼が座っていただろう席の向かいには、優男がしょんぼりと。
友人と向きなおり「あれ、なに?」とひそひそ。
「じつは怒ったほうの男、大村は飼い犬のポメを溺愛していてな。
ポメは保護した犬で、すごい人間不信。
大村以外には懐かない。
それが、散歩のとき、もう一人の男、風間と会ったらポメが尻尾をぶんぶん跳びついて。
思わず風間が抱いたもんだから大村が激怒したってわけ」
「はあ?」と眉をしかめれば「まあ、話を聞け」と真面目くさったままつづきを。
「あの二人には因縁がある。
もともと二人は仲がよかったんだけど、大村と交際していた彼女が、風間を好きになったからって、別れを切りだしたんだ。
でも、結局、彼女は風間にフラれてしまって。
べつに風間はわるくないけど、大村はいい気分でないだろ?
おかげで、関係がぎくしゃくしていたところに、人間不信のポメが風間に抱かれてしまうというハプニングが起きた。
ポメはメスだったし、大村は恋の傷心を飼い犬で癒していたところがあるからさ。
傷口に塩を塗られたようで、変な錯覚に陥ったんじゃない?
『風間にまた彼女を寝とられた!』って。
で、さっきの発言になったわけ」
「えーと冗談ではなく?」と半笑いをするも「その言葉、殺気立つ大村のまえで口にできるか?」と返されて言葉につまる。
事情に詳しいらしい友人は「風間はいいやつだからさ」とため息を。
「ポメを抱いただけなのに、人の彼女を寝取ったかのように責められて謝っているし、仲直りしたいらしいよ。
ああして、なんとか話しあおうとするけど、毎度、あの決まり文句で怒鳴られる。
八つ当たりの極みのうえ、まわりに誤解されるような絶叫をされてさあ、それでも『いつか許してくれる』って、哀れだけど健気だよなあー」
友人が涙ぐむのに、俺は今一、ぴんとこず。
「自分に非がないことで許しを乞うって逆にこわくないか?」とらりと風間を見たところ。
まわりがざわついて注目するなか、うつむきつつ、かすかに口角をあげたような。
それを見た瞬間、思ってしまった。
まわりの耳にはいるよう、わざと問題発言をさせているのでは?と。
どうして聞かせたいのか、その理由は考えないほうが身のためだろう。
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