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二日目・調査パート⑤

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例の塾に通っていた人は、思ったより多くいて、聞いているうちに次から次へと証言者が寄ってきた。

おかげで多くの情報を得られたが、彼女たちの語りにうんうん聞きながら、頭の隅で「この学校は進学校じゃないけどな?」と不思議に。

まだ(転生して転校して?)一日だけとはいえ、授業を受けた印象では学校のレベルは中の中くらい。
俺がまえに通っていた男子校と同等だと思う。

平均よりすこし上の成績をとれれば入れる、ふつーの子供が通う、ふつーの公立校。

不良のたまり場のような学校と比べれば、断然ましながら、学歴至上主義からすると「お話にならない」と鼻で笑うようなところだ。

だのに、塾に行けるほど裕福な意識高い系の家庭の子、その多くが無難な学校におさまったのは、どうしてか?

聞きこみをするうちに、なんとなく分かってきた。

夜逃げみたいなことをしたに、まともな塾でなさそうとは思っていたが、想像以上にその実態はきな臭いもの。
塾だけでなく、塾を中心とした周辺も、お隣の国の影響下にあったようで。

いや、たしかに、転生するまえの俺の家の近くにも、南米の人が集まる、異国情緒あふれる町はあった。
が、彼らはお国柄を全面にだしたうえで、たまに郷土料理をふるまう、伝統芸能をお披露目するなどして、俺らと交流を深めていたもので。

例の塾の先生のように、日本人になりすましたり、おそらく協力者の日本人を操ったり。
日本もどきの町づくりをし、下手ななパクリの店の看板を掲げたり、半端に真似た料理をだしたり、南米の人たちは決してしなかった。

ましてや、自国の歴史を宗教化し、その教えを子供に押しつけなかったし、親せきや知りあいの職業を聞きだすほど
過干渉でなかったし。

日本に出稼ぎにくるとかで、同じ国の人がコミュニティをつくることはあっても、塾と周辺は、目的がちがうのは明らか。
異国の地で、寂しさをまぎらわすため、日本人との関係を良好に保つため、ではなさそう。

まあ、学歴至上主義なら「塾講師が怪しい外国人だろうと、成績があがり、有名進学校に入れればいい」と割りきるかもしれないところ。
「キョ―サンシュギシャがいる」との噂は聞き捨てならなかったのだと思う。

この時代の親世代は「学生運動」なるものを目撃、または経験。
なにより一九七○年代には、まさに時代を象徴する凶悪犯罪「あさま山荘事件」が起きたばかり、となれば。

俺も詳しくは知らないが、どちらとも「キョ―サンシュギシャ」が関わったと聞いたような。

噂を裏づけるように、歴史の授業内容が異常だったから、親は胸騒ぎがした。
で、急に塾が消失して、授業代を持ち逃げされたのを怒るより、町全体が夜逃げしたような状況に、あらためて肝を冷やして。

「相手が逃げたようだからいいものの、塾に通わせつづけていたら、子供の身が危なかったのでは・・・」

いくら、子供を人生の勝ち組にしたくても、その途中で、かつての「学生運動」「あさま山荘事件」のような犯罪に巻きこまれては元も子もない。

目が覚めたような親は、また塾に通わさるのを恐れて、妥協というか。
自分の目が届くところに子供をいさせようと、近くの平均的な公立校にいれたのかも。

その選択が子供の将来のためになるとは限らないものの、すくなくとも、聞きこみをした相手は「人生もう終わりだ!」と嘆いていなく。

「勉強らくしょーだし、ほかのことに時間をつかえてたのし―」と学校のレベルを下げたからこその、青春真っ盛りな学生生活を満喫しているよう。

裏がありそうな塾に子供はとりこまれなかったし、学歴至上主義の世の流れから親は抜けだせたし、結果、万々歳なのが「あれ?」とまたもや不思議に。

「口裂け女のおかげじゃね?」と。

「キョ―サンシュギシャ」の噂が、子供を塾から遠ざける決定打になったとはいえ、とっかかりは口裂け女への恐怖。

なかには、口裂け女の噂が広がった時点で「親とか、送り迎えしてくれる大人いがないから」と塾通いを諦めた子もいるし。

なるほど、ユキオも云ったように、口裂け女が塾と周辺を壊滅したかのような。
云いかえれば、悪者がことを起こすまえに、やっつけて追っぱらったなんて印象を受ける。

まえの山道の醜女も、人に危害をくわえるとは噂されていなかったが、今回に至っては、受験ブームに翻弄される親子を救ったと云えなくもない。

いやいや、そうそう、一つだけ、関連があるような、まがまがしい事件が。

塾について聞きこみ最中「そういえば、塾の近くで火事があったよね」と横やりが。

どうも小規模なガス爆発が起こり、アパートが全焼したらしい。

アパートの住人はほとんど、夜から朝にかけて勤務。
午後の八時くらいには、ほとんど外出していたのが、女の子が一人、留守番をしていて・・・。

アパートの焼け跡からは、全身真っ黒の小さな亡骸が。

事故に巻きこまれた哀れな女の子。
「なんと痛ましい」と嘆くだけでは済まなかった。

女の子と住んでいた女、母親は行方不明。
母親について調べるも、出生届がなければ、娘の戸籍もなしと、女の子も正体不明。

「でさ、この火事が起きたのが、塾がどろんする前日の夜だったの。
塾は休みだったし、塾のはいったビルが焼けることはなかったけど、なーんか気になるんだよね・・・」

教えてくれた子は「まあ、ぜんぜん塾とは関係ないかも」と笑っていたものの、ゲーム的には立派なフラグだ。

山道の醜女だって、まさかの正体が行方不明の女子高生だったように。
関連づけが難しい塾と火事も、切っても切れない因果がある可能性大。

また、全体を通して「お隣の国」つながりも気になる。

電話で怒鳴っていた家政婦も、山道で女子高生を拉致しようとした男らも、そのお国の人っぽい。

まあ、それはさておき、今回の探索パートでは塾と周辺だけではなく、放置されたままというアパートの焼跡にも足を向けないと。

十分な聞きこみをし、放課後までには、フラグを立てて目的地を定めることができた。

ゲーム的に、二日目となれば、昨日より手間暇がかかったのは仕方なし。
余裕があったら、日記に書かれた藩主「観月家」について調べたかったが、まあ、エンドー先生は学会出席で不在というし。

図書館で郷土の歴史の本を読むなどの手もあるとはいえ、悩んだ末、その調査を持ちこし、放課後はすぐに学校をでた。

もちろん、探索パートにむけて、事前調査や準備をするため。

また、昨日は通りすぎただけの駄菓子屋を、じっくり眺めて、存分に買い物をしたかったから。




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