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蜂
七
しおりを挟む「なるほど、庄右衛門は生きていたか……」
暗い部屋。上座に胡座をかいて呟く男が一人。
白髪が混じった髪を一纏めにした、細身の壮年。柔和な顔つきだが、目が一切笑っていない。
片膝をついて下座にいる忍びが答える。
「我々は閏間雪丸を追っていたが、その者の傍に大男がいた。
あの図体から想像がつかないほど鮮やかな手法で姿を眩ませ……信じられないとは思っているものの、あれは間違いなく浅桜庄右衛門の姿だった」
男はしばらく考えて立ち上がると、すぐに別の忍びの者が五人集まった。
片膝をついて言葉を待つ忍びたちに、椿山兵次郎は命じた。
「浅桜庄右衛門を速やかに捕らえ、ここに連れてこい。私が手を下してやる」
忍びたちは素早く部屋を後にした。下座にいた忍びの者は、兵次郎が自分の言葉を信じてくれたことに驚きつつ、自分たちの獲物を求めて立ち去る。
「どうりで晒していた首が消えていたわけだ。何故甦ったかはわからんが……」
兵次郎の白くて細い手を、大ぶりの蜂が這う。
「こうして人智を超えた存在がいるのだから、人が甦ることくらい難しくはないのかもしれないな……」
手を這っていた蜂は、兵次郎の首元に戻っていく。
「庄右衛門、今度こそ、殺してあげるよ……」
兵次郎はそう呟き、にやりと笑った。
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