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京谷小雨の日常&Fall in the moonlight ジャンル:コメディ&ホラー
9月15日(2) 小雨
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翌朝、瞬のベッドで目覚めた私は、未だ覚めきらない頭をボリボリ掻きながら時計を確認した。
時刻は九時。
うわっ、やっべえ!
「ちょっと瞬! 瞬! 遅刻するよ!」
私は隣ですやすやと寝息を立てている瞬を叩き起こした。
「ええ、なに?」
「遅刻だよ遅刻!」
一応、対外的には真面目な子ということになっているはずの私にとって、遅刻は一大事である。別に一日ぐらい遅刻したってどうってことはないのかもしれないが、例えば、ピースが欠けたジグソーパズルを額に入れて飾ろうとは思わないだろう。そういう感じ。
瞬は大きく欠伸をしながら体を起こした。顔はまだ寝惚けているが、下半身の方は見事な朝立ちだ。男の子の体は面白い。
「……あれ? 今日一限休みじゃない?」
「……えっ?」
え〜と、今日は……火曜?
ああ……そうだった……。
「うわあ、マジだ。ごめん」
「いいよ……なんか、目が覚めたら腹が減ってきた……」
瞬は腹をさすっている。確かに昨夜はいつにも増してハードだった。
「ああ、じゃあ朝御飯作るね」
「昨日のカレーの残りでいいよ」
「あ、ほんと?」
私は、そのままエプロンだけを身に付けて、昨夜の残り、鍋に入ったままのカレーを温め始めた。
いかに普段裸族同然の生活をしているとはいえ、他人の家でこんな格好をするのは少し落ち着かないものだ。まあ、結局は何も着てないんだけどね。今この家には私と瞬しかいないんだし。だって暑いもん。
私に付き合ってかどうかは知らないが、二階の彼の部屋から一階にある食卓まで降りてきた瞬も、なんと全裸のままだった。下着ぐらい履けばいいのにとは思ったが、朝立ち的な問題で窮屈なのかもしれない。生えてないから知らんけど。
彼の両親が帰ってくる前に、この辺をざーっと掃除しなきゃな。ほら、毛が落ちてたらマズいからね。
暑い時期だから、一晩寝かせたカレーにはしっかり火を通さなければならない。もうひと煮立ちかな、とカレーをかき混ぜていると、突然、背後から伸びてきた瞬の指が首筋に触れる。
「んあっ……」
思わず変な声が出てしまった。しかし、昨夜から今朝にかけて私が発した言葉と声の統計をとると、明らかに今の声のほうがマジョリティである。そう考えると、強ちこれが変な声とは言えない。
あながち、って響きがなんかエロい。ああ、もう発想が完全にそっち方面に……。
振り返ると、瞬は指先で私の髪を優しく撫でていた。さっきのは意図的なものではなく、髪を触ろうとして首筋に当たってしまったものらしい。
彼は子供の頃、こうして私の髪を触るのが好きだった。手持ち無沙汰になると、物欲しそうな目で
『髪の毛、触ってもいい?』
って言いだすのがたまらなく可愛かったんだけど、照れくさがってしなくなったのは、いつの頃からだろう……。多分、小学校高学年ぐらいのことではないだろうか。せっかく瞬のために伸ばしていたのに。
構ってもらえなくなって馬鹿くさくなった私は、少しずつ髪を短くするようになった。『触らないならなくなっちゃうぞ~』と、半ば脅す意味もあったのだが、全く通用せず。肩にも届かなくなったのは高校生の頃だったはずだ。
また髪を伸ばし始めたのは大体半年ぐらい前。まあ最近ようやく撫でられるぐらいの長さになってきたところだ。
つまり、こうして髪を撫でられるのは数年ぶりだったということ。あれぇ、こんなにくすぐったかったっけ……。
性感帯のすぐ近くをこんなに執拗にいじられて、子供の頃の私はよく平気でいられたものだと思う……いや、おかしいのは今の私の方か。首筋は重点的に開発が進められた地域なのだ。
首筋をまさぐっていた指先が、少しずつ下へ移動してゆく。肩、胸、腰……。
なんだなんだ、随分積極的じゃないか。裸エプロンの威力は絶大である。
煮立った鍋をひっくり返さないよう、指先の動きに神経を集中させて必死でこらえているというのに、瞬はあろうことか、手薄になった耳への攻撃を開始する。
「んぅっ……」
耳たぶを弄ぶ瞬の舌の感触と熱い吐息によって、私はついに真っ直ぐ立っていられなくなった。たまらずに身を捩ると、臀部に彼の朝立ちが、ぴとっ、と触れる。
ああ……もう、無理。
結局、カレーは黒焦げになってしまい、朝食は白米だけになった。
時刻は九時。
うわっ、やっべえ!
「ちょっと瞬! 瞬! 遅刻するよ!」
私は隣ですやすやと寝息を立てている瞬を叩き起こした。
「ええ、なに?」
「遅刻だよ遅刻!」
一応、対外的には真面目な子ということになっているはずの私にとって、遅刻は一大事である。別に一日ぐらい遅刻したってどうってことはないのかもしれないが、例えば、ピースが欠けたジグソーパズルを額に入れて飾ろうとは思わないだろう。そういう感じ。
瞬は大きく欠伸をしながら体を起こした。顔はまだ寝惚けているが、下半身の方は見事な朝立ちだ。男の子の体は面白い。
「……あれ? 今日一限休みじゃない?」
「……えっ?」
え〜と、今日は……火曜?
ああ……そうだった……。
「うわあ、マジだ。ごめん」
「いいよ……なんか、目が覚めたら腹が減ってきた……」
瞬は腹をさすっている。確かに昨夜はいつにも増してハードだった。
「ああ、じゃあ朝御飯作るね」
「昨日のカレーの残りでいいよ」
「あ、ほんと?」
私は、そのままエプロンだけを身に付けて、昨夜の残り、鍋に入ったままのカレーを温め始めた。
いかに普段裸族同然の生活をしているとはいえ、他人の家でこんな格好をするのは少し落ち着かないものだ。まあ、結局は何も着てないんだけどね。今この家には私と瞬しかいないんだし。だって暑いもん。
私に付き合ってかどうかは知らないが、二階の彼の部屋から一階にある食卓まで降りてきた瞬も、なんと全裸のままだった。下着ぐらい履けばいいのにとは思ったが、朝立ち的な問題で窮屈なのかもしれない。生えてないから知らんけど。
彼の両親が帰ってくる前に、この辺をざーっと掃除しなきゃな。ほら、毛が落ちてたらマズいからね。
暑い時期だから、一晩寝かせたカレーにはしっかり火を通さなければならない。もうひと煮立ちかな、とカレーをかき混ぜていると、突然、背後から伸びてきた瞬の指が首筋に触れる。
「んあっ……」
思わず変な声が出てしまった。しかし、昨夜から今朝にかけて私が発した言葉と声の統計をとると、明らかに今の声のほうがマジョリティである。そう考えると、強ちこれが変な声とは言えない。
あながち、って響きがなんかエロい。ああ、もう発想が完全にそっち方面に……。
振り返ると、瞬は指先で私の髪を優しく撫でていた。さっきのは意図的なものではなく、髪を触ろうとして首筋に当たってしまったものらしい。
彼は子供の頃、こうして私の髪を触るのが好きだった。手持ち無沙汰になると、物欲しそうな目で
『髪の毛、触ってもいい?』
って言いだすのがたまらなく可愛かったんだけど、照れくさがってしなくなったのは、いつの頃からだろう……。多分、小学校高学年ぐらいのことではないだろうか。せっかく瞬のために伸ばしていたのに。
構ってもらえなくなって馬鹿くさくなった私は、少しずつ髪を短くするようになった。『触らないならなくなっちゃうぞ~』と、半ば脅す意味もあったのだが、全く通用せず。肩にも届かなくなったのは高校生の頃だったはずだ。
また髪を伸ばし始めたのは大体半年ぐらい前。まあ最近ようやく撫でられるぐらいの長さになってきたところだ。
つまり、こうして髪を撫でられるのは数年ぶりだったということ。あれぇ、こんなにくすぐったかったっけ……。
性感帯のすぐ近くをこんなに執拗にいじられて、子供の頃の私はよく平気でいられたものだと思う……いや、おかしいのは今の私の方か。首筋は重点的に開発が進められた地域なのだ。
首筋をまさぐっていた指先が、少しずつ下へ移動してゆく。肩、胸、腰……。
なんだなんだ、随分積極的じゃないか。裸エプロンの威力は絶大である。
煮立った鍋をひっくり返さないよう、指先の動きに神経を集中させて必死でこらえているというのに、瞬はあろうことか、手薄になった耳への攻撃を開始する。
「んぅっ……」
耳たぶを弄ぶ瞬の舌の感触と熱い吐息によって、私はついに真っ直ぐ立っていられなくなった。たまらずに身を捩ると、臀部に彼の朝立ちが、ぴとっ、と触れる。
ああ……もう、無理。
結局、カレーは黒焦げになってしまい、朝食は白米だけになった。
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