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昨日と今日と明日
代わりなんて、いくらでもいるさ
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「どうしたんだい、ジェイ?」
エムが手を離し、ハンカチを出して、ぼくの涙を拭おうとした。ぼくはそれを振り払い、自分の指で目を擦った。
「目にゴミが入っただけだよ」
「目を擦るのは、よくないぞ」
「よくないのは、あなただ」
「わたしの何がだ?」
「あなたと話すために、ずっと、上を向いていたから、ゴミが目に入ったんだ」
「それは、すまなかったな」
見え透いた言いがかりにも拘わらず、エムは素直に謝って、また手を握ってきた。その温かい手とぼくを見つめる眼差しに、拭った涙がまた溢れそうになった。
あなたの手は温かすぎる。ぼくの手は、こんなにも冷たいのに。
それが、逃れようもないぼくとあなたの行く末を暗示している。
ぼくを見ているあなたの目は、病室のベッドで寝ている今のぼくを通り越し、もっと先の時間にいるぼくも見ていた。
一ヶ月先か、一年先か、三年先かに必ず訪れる死の淵で横たわるぼくを見ていた。そのときには、ぼくの手は更に冷たくなって、あなたの手がどれだけ温かくても、ぼくには、もうそれがわからないのだ。
怖いのか悲しいのかわからなくなって、ぼくは話を元に戻した。「看護師には、男もいるんだぞ。何が『Mr.エムのファンクラブ』なんだよ」
「また、そっちの話題に戻るのか、困ったベイビーだな」エムは声を出して笑った。「Ms.ディが、『女性有志が集まって』と言っていたのを聞いていたんじゃないのかい」
「うるさい、パパ」
ぼくを見るエムの視線が和らいだ。ホッとはしたものの、なぜだか頰が上気してきた。
それに気付いたエムが身を屈め、ぼくに唇を寄せてくる。
「わたしのベイビーたちは、困った子ばかりだ」
頰はますます上気して、ぼくはキスの経験さえ浅いうぶな少年のように目を閉じた。
唇が離れると、ぼくはエムの顔をまともに見ていられず、さっきより露骨に顔を背けた。
「なんで、ベイビーが複数なんだよ」
「おてんばなにかと、わがままジェイだからさ」
「アッシュとぼくかと思ったよ」
エムがビクッとして、上体を起こした。アッシュの名は、ぼくらの間では禁句だった。ぼくの口から突然飛び出した予想外の名前に、エムは明らかに動揺していた。
エムが手を離し、ハンカチを出して、ぼくの涙を拭おうとした。ぼくはそれを振り払い、自分の指で目を擦った。
「目にゴミが入っただけだよ」
「目を擦るのは、よくないぞ」
「よくないのは、あなただ」
「わたしの何がだ?」
「あなたと話すために、ずっと、上を向いていたから、ゴミが目に入ったんだ」
「それは、すまなかったな」
見え透いた言いがかりにも拘わらず、エムは素直に謝って、また手を握ってきた。その温かい手とぼくを見つめる眼差しに、拭った涙がまた溢れそうになった。
あなたの手は温かすぎる。ぼくの手は、こんなにも冷たいのに。
それが、逃れようもないぼくとあなたの行く末を暗示している。
ぼくを見ているあなたの目は、病室のベッドで寝ている今のぼくを通り越し、もっと先の時間にいるぼくも見ていた。
一ヶ月先か、一年先か、三年先かに必ず訪れる死の淵で横たわるぼくを見ていた。そのときには、ぼくの手は更に冷たくなって、あなたの手がどれだけ温かくても、ぼくには、もうそれがわからないのだ。
怖いのか悲しいのかわからなくなって、ぼくは話を元に戻した。「看護師には、男もいるんだぞ。何が『Mr.エムのファンクラブ』なんだよ」
「また、そっちの話題に戻るのか、困ったベイビーだな」エムは声を出して笑った。「Ms.ディが、『女性有志が集まって』と言っていたのを聞いていたんじゃないのかい」
「うるさい、パパ」
ぼくを見るエムの視線が和らいだ。ホッとはしたものの、なぜだか頰が上気してきた。
それに気付いたエムが身を屈め、ぼくに唇を寄せてくる。
「わたしのベイビーたちは、困った子ばかりだ」
頰はますます上気して、ぼくはキスの経験さえ浅いうぶな少年のように目を閉じた。
唇が離れると、ぼくはエムの顔をまともに見ていられず、さっきより露骨に顔を背けた。
「なんで、ベイビーが複数なんだよ」
「おてんばなにかと、わがままジェイだからさ」
「アッシュとぼくかと思ったよ」
エムがビクッとして、上体を起こした。アッシュの名は、ぼくらの間では禁句だった。ぼくの口から突然飛び出した予想外の名前に、エムは明らかに動揺していた。
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