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料理かよ
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軽く言われたその言葉に、ぞっとした。
僕たちをつけてくる? つまり、後ろに誰がいる? 私たちをずっと見ていた??
丁度二階にたどり着いたところで三人足を止める。暁人さんが振り返った。
「あーあれ? まあ、ちょっと力強そうか」
「危害を及ぼすってレベルじゃないと思うけど、執着されても気分が悪いよ」
二人の会話がどこか遠くに感じた。心臓が痛い。
指摘されれば、背後に何か視線を感じる気がした。誰かがじっとこちらを見ている、そんな気がする。振り返ってみようか、でも怖い、見ない方がいいかもしれない。
でも好奇心というものも、私の中には存在している。暁人さんが追い払うという姿を見てみたい。
暁人さんが一人階段を降り始める。そこでついに、私は思い切って振り返ってみた。
何もいない。
がらんとした階段が見えるだけで、他の存在は見当たらない。必死に懐中電灯を動かしてみるが、私には捉えることが出来ない。
だが暁人さんはまっすぐ階段の中央まで足を運び、そこで立ち止まった。そしてポケットから何かを取り出す。じいっとそれを見つめていると、出てきたのは小さな瓶だった。中に白い物が入っているのが見える。
あれはもしや、霊を祓うといわれている塩では……と一瞬気分が高揚したが、暁人さんが握っている小瓶が、見覚えのある形をしていたのできょとんとした。あれは私の実家にも置いてある、食卓塩ではないか。
そして彼は、その瓶のふたを開けると、その場にぱっぱっと軽くかけたのだ。まるで味が薄かったので料理にかけました、そんな様子で。ほんの少量が舞い散り床に塩が落ちる。それだけ行うと、彼は蓋をしながらこちらに歩み寄ってきたので、つい大きな声を上げてしまった。
「え、除霊ってそんなんですか!? 食卓塩かけるの? 料理じゃあるまいし!」
私がそんな風に驚くと、隣で柊一さんがお腹を抱えて笑った。いや、笑い事じゃない。お経を読むとか、その場にそれっぽく手をかざしてみるとか、塩を撒くにも、もうちょっとやり方があるだろう。
柊一さんが笑いながら言う。
「あの瓶が持ち運びするのにちょうどいい大きさだったんだよ。中身はちゃんと僕たちが準備した塩だから、特別なものなんだよ」
「そ、そうなんですか。でもあんな軽くかけただけで?」
「今いた霊はそこまで強くなかったから、あれで十分。念のため追い払っただけだから。もっと強くなるとああはいかないよ」
「はあ、そんなもんですか……」
「見えなかったの?」
聞かれて強く頷き、顔で柊一さんに言う。
「私は見えませんでした! やっぱり見えない体質なのかも。さっきの赤いやつだって見間違いで」
「まだ分からないよ。霊の中には力の強さの差が大きい。それに相性というものもあるからね、今の奴が見えなかったからと言って、他の霊も見えないとは限らない」
きっぱり断言されてしまい、肩を落とす。自分はみえない人間だってわかれば、少しは恐怖心が和らぐかと思ったのだが、そう簡単には分からないようだ。
私たちに追いついた暁人さんが柊一さんに言う。
「脅すなよ、柊一」
「あ、ごめん、そんなつもりはなかったんだよ。見えても大丈夫、僕たちがいればね」
申し訳なさそうに言ってくる彼に力なく微笑んでみせ、私たちはまた階段を上り始めた。
僕たちをつけてくる? つまり、後ろに誰がいる? 私たちをずっと見ていた??
丁度二階にたどり着いたところで三人足を止める。暁人さんが振り返った。
「あーあれ? まあ、ちょっと力強そうか」
「危害を及ぼすってレベルじゃないと思うけど、執着されても気分が悪いよ」
二人の会話がどこか遠くに感じた。心臓が痛い。
指摘されれば、背後に何か視線を感じる気がした。誰かがじっとこちらを見ている、そんな気がする。振り返ってみようか、でも怖い、見ない方がいいかもしれない。
でも好奇心というものも、私の中には存在している。暁人さんが追い払うという姿を見てみたい。
暁人さんが一人階段を降り始める。そこでついに、私は思い切って振り返ってみた。
何もいない。
がらんとした階段が見えるだけで、他の存在は見当たらない。必死に懐中電灯を動かしてみるが、私には捉えることが出来ない。
だが暁人さんはまっすぐ階段の中央まで足を運び、そこで立ち止まった。そしてポケットから何かを取り出す。じいっとそれを見つめていると、出てきたのは小さな瓶だった。中に白い物が入っているのが見える。
あれはもしや、霊を祓うといわれている塩では……と一瞬気分が高揚したが、暁人さんが握っている小瓶が、見覚えのある形をしていたのできょとんとした。あれは私の実家にも置いてある、食卓塩ではないか。
そして彼は、その瓶のふたを開けると、その場にぱっぱっと軽くかけたのだ。まるで味が薄かったので料理にかけました、そんな様子で。ほんの少量が舞い散り床に塩が落ちる。それだけ行うと、彼は蓋をしながらこちらに歩み寄ってきたので、つい大きな声を上げてしまった。
「え、除霊ってそんなんですか!? 食卓塩かけるの? 料理じゃあるまいし!」
私がそんな風に驚くと、隣で柊一さんがお腹を抱えて笑った。いや、笑い事じゃない。お経を読むとか、その場にそれっぽく手をかざしてみるとか、塩を撒くにも、もうちょっとやり方があるだろう。
柊一さんが笑いながら言う。
「あの瓶が持ち運びするのにちょうどいい大きさだったんだよ。中身はちゃんと僕たちが準備した塩だから、特別なものなんだよ」
「そ、そうなんですか。でもあんな軽くかけただけで?」
「今いた霊はそこまで強くなかったから、あれで十分。念のため追い払っただけだから。もっと強くなるとああはいかないよ」
「はあ、そんなもんですか……」
「見えなかったの?」
聞かれて強く頷き、顔で柊一さんに言う。
「私は見えませんでした! やっぱり見えない体質なのかも。さっきの赤いやつだって見間違いで」
「まだ分からないよ。霊の中には力の強さの差が大きい。それに相性というものもあるからね、今の奴が見えなかったからと言って、他の霊も見えないとは限らない」
きっぱり断言されてしまい、肩を落とす。自分はみえない人間だってわかれば、少しは恐怖心が和らぐかと思ったのだが、そう簡単には分からないようだ。
私たちに追いついた暁人さんが柊一さんに言う。
「脅すなよ、柊一」
「あ、ごめん、そんなつもりはなかったんだよ。見えても大丈夫、僕たちがいればね」
申し訳なさそうに言ってくる彼に力なく微笑んでみせ、私たちはまた階段を上り始めた。
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