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第78幕
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河島隼人は、自身のベッドに寝転んでいた。
薄暗い部屋には、スマホの青い明かりだけが灯り、隼人の顔を照らしている。隼人は、しばらくスマホの画面を眺めていたが、溜め息を溢して画面を消すと、枕元に置いて、寝返りを打った。
隣の空っぽのベッドに視線をやると、やるせない気持ちが沸き上がる。それでも、電話越しで聞いた薫の涼やかな声が、隼人を慰めていた。
明後日には、薫の顔を見ることができるかもしれない。
薫は、部活に打ち込む隼人のことを応援していたし、隼人がいい結果を叩き出せば「隼人はやっぱり、すごいな」と頬を紅潮させて見上げてきた。
だから、隼人はこの大会に懸けている。薫に己の勇姿を見せることだけを心の支えに練習に打ち込んでいた。
隼人は瞼を閉じた。
狭いベッドに、薫と向かい合って横たわる。目前で、静かな寝息を立てている薫に手を伸ばした。薫の頬に触れ、目元の黒子をそっと撫でる。閉じていた瞼が持ち上がり、黒い硝子玉のような瞳が光る。
薫は、隼人を見上げて、小さく微笑む。
『今日は、してもいいよ。』
布団の中で一回り小さな手が、隼人の股間に触れる。既に軽く勃起したペニスを感じて、薫は可笑しそうに口角を持ち上げる。
隼人も薫のペニスに手の甲で触れてみるが、まだ柔らかい。手の甲で擦り付けるようにすれば、薫は瞼を閉じて、眉を少し寄せる。手の甲の感触は、次第に熱く、固くなり始める。
『……ん、』
鼻にかかった悩ましげな吐息に、目の前の薄く開いた唇に、唇を重ねたくなって、そっと顔を近づける。唇が触れるか触れないかの距離で、長い睫毛の瞼がゆっくりと開く。
熱っぽく潤んだ瞳と浅い息遣い。
薫は薄く笑う。
布団の中で、隼人のペニスを擦っていた手が離れ、薫のペニスを弄っていた手に重ねられる。薫の好きにさせていれば、指と指を絡めて、そっと布団から引き出される。
薫が、隼人の手の甲に唇を押し当てる。
それから、人差指を唇を這わせて、熱い吐息を吹きかけて、口内に招き入れた。薫の口の中は、蕩けるように熱く、指に絡みついてくる舌は官能的で、じゅるじゅると水音を立てながら、しゃぶりつかれれば、隼人はそれだけで、股間が熱くなり、勃起したペニスは反り返る。
薫は様子を窺うように、隼人を上目遣いで見つめ、ベータでもわかるような仄かに甘い匂いを漂わせた。隼人はうっとりと薫の愛撫に酔いしれる。
薫は舐め上げるように、舌先で人差指をなぞって、隼人の手から唇を離した。薫の唾液で濡れた指と唇の間に、糸が引く。
隼人の手首を掴んで、薫は布団の中に潜り込ませていく。いつの間に下着を下ろしたのか、濡れた指で、薫の半勃ちのペニスに直に触れれば、薫はぴくんと肩を揺らした。
軽く扱くと、ふっと吐息を溢して、少し身動いだ。隼人の手首を更に滑らせれば、尻の割れ目に指が潜り込む。
薫は、隼人の耳元で熱っぽく囁いた。
『こっちも、』
隼人の濡れた指先が、控え目な穴に宛がわれる。
『……ぁ、』
ゆっくりと押し込んでいけば、薫の唇から甘い鳴き声が漏れた。薫の中は、熱く蠢き、じんわりと愛液が溢れだしてくる。
コンコンと扉をノックする音が響いた。
隼人は、ふっと息を吐いて、瞼を開いた。いつかの夜の、甘美で卑猥な想い出から、無理やり現実に引き戻される。下着の中に潜り込ませていた手を離して、なんとか滾り始めたペニスを治めようと、深呼吸を繰り返す。
再度、急かすようにドアが叩かれる。
隼人は気だるげに身体を起こすと、扉に向かう。深夜に訪ねてくるような非常識な人間に、文句の一つも言いたくなった。
扉を開くと、そこには麗しい青年が立っていた。暗がりの中でも、際立つ美貌に息を飲む。
「……どうしたんですか、」
隼人は一瞬、怯んだ。非常識な来訪者は、隼人の胸を押し退けると、当然のように部屋に踏み込んだ。
「薫はどこだ?」
男は、空っぽのベッドを一瞥すると隼人に振り返った。彼の瞳は仄かに赤く、眉間に皺が寄せられている。
結城博己は、苛立っていた。
薄暗い部屋には、スマホの青い明かりだけが灯り、隼人の顔を照らしている。隼人は、しばらくスマホの画面を眺めていたが、溜め息を溢して画面を消すと、枕元に置いて、寝返りを打った。
隣の空っぽのベッドに視線をやると、やるせない気持ちが沸き上がる。それでも、電話越しで聞いた薫の涼やかな声が、隼人を慰めていた。
明後日には、薫の顔を見ることができるかもしれない。
薫は、部活に打ち込む隼人のことを応援していたし、隼人がいい結果を叩き出せば「隼人はやっぱり、すごいな」と頬を紅潮させて見上げてきた。
だから、隼人はこの大会に懸けている。薫に己の勇姿を見せることだけを心の支えに練習に打ち込んでいた。
隼人は瞼を閉じた。
狭いベッドに、薫と向かい合って横たわる。目前で、静かな寝息を立てている薫に手を伸ばした。薫の頬に触れ、目元の黒子をそっと撫でる。閉じていた瞼が持ち上がり、黒い硝子玉のような瞳が光る。
薫は、隼人を見上げて、小さく微笑む。
『今日は、してもいいよ。』
布団の中で一回り小さな手が、隼人の股間に触れる。既に軽く勃起したペニスを感じて、薫は可笑しそうに口角を持ち上げる。
隼人も薫のペニスに手の甲で触れてみるが、まだ柔らかい。手の甲で擦り付けるようにすれば、薫は瞼を閉じて、眉を少し寄せる。手の甲の感触は、次第に熱く、固くなり始める。
『……ん、』
鼻にかかった悩ましげな吐息に、目の前の薄く開いた唇に、唇を重ねたくなって、そっと顔を近づける。唇が触れるか触れないかの距離で、長い睫毛の瞼がゆっくりと開く。
熱っぽく潤んだ瞳と浅い息遣い。
薫は薄く笑う。
布団の中で、隼人のペニスを擦っていた手が離れ、薫のペニスを弄っていた手に重ねられる。薫の好きにさせていれば、指と指を絡めて、そっと布団から引き出される。
薫が、隼人の手の甲に唇を押し当てる。
それから、人差指を唇を這わせて、熱い吐息を吹きかけて、口内に招き入れた。薫の口の中は、蕩けるように熱く、指に絡みついてくる舌は官能的で、じゅるじゅると水音を立てながら、しゃぶりつかれれば、隼人はそれだけで、股間が熱くなり、勃起したペニスは反り返る。
薫は様子を窺うように、隼人を上目遣いで見つめ、ベータでもわかるような仄かに甘い匂いを漂わせた。隼人はうっとりと薫の愛撫に酔いしれる。
薫は舐め上げるように、舌先で人差指をなぞって、隼人の手から唇を離した。薫の唾液で濡れた指と唇の間に、糸が引く。
隼人の手首を掴んで、薫は布団の中に潜り込ませていく。いつの間に下着を下ろしたのか、濡れた指で、薫の半勃ちのペニスに直に触れれば、薫はぴくんと肩を揺らした。
軽く扱くと、ふっと吐息を溢して、少し身動いだ。隼人の手首を更に滑らせれば、尻の割れ目に指が潜り込む。
薫は、隼人の耳元で熱っぽく囁いた。
『こっちも、』
隼人の濡れた指先が、控え目な穴に宛がわれる。
『……ぁ、』
ゆっくりと押し込んでいけば、薫の唇から甘い鳴き声が漏れた。薫の中は、熱く蠢き、じんわりと愛液が溢れだしてくる。
コンコンと扉をノックする音が響いた。
隼人は、ふっと息を吐いて、瞼を開いた。いつかの夜の、甘美で卑猥な想い出から、無理やり現実に引き戻される。下着の中に潜り込ませていた手を離して、なんとか滾り始めたペニスを治めようと、深呼吸を繰り返す。
再度、急かすようにドアが叩かれる。
隼人は気だるげに身体を起こすと、扉に向かう。深夜に訪ねてくるような非常識な人間に、文句の一つも言いたくなった。
扉を開くと、そこには麗しい青年が立っていた。暗がりの中でも、際立つ美貌に息を飲む。
「……どうしたんですか、」
隼人は一瞬、怯んだ。非常識な来訪者は、隼人の胸を押し退けると、当然のように部屋に踏み込んだ。
「薫はどこだ?」
男は、空っぽのベッドを一瞥すると隼人に振り返った。彼の瞳は仄かに赤く、眉間に皺が寄せられている。
結城博己は、苛立っていた。
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