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12月8日(土)
第32話
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レストランでのディナーを終えると、互いに無言で歩き出した。自然と向かう先は、ネオンが輝くホテル街。ギラギラとした欲望が蠢く喧騒の中、男が二人で歩いていれば、黒服のキャッチが幾人も声をかけてくる。暁斗は迷惑そうに無視を決め込み、歩く速度もあがっていくものだから、俺はその後ろを追いかけるしかない。
物騒な裏路地を入っていけば、暁斗が急に立ち止まり、ホテルの看板を見上げた。その横顔が、男のもので、急にこわくなる。背後から追い抜かして行く人影に、びくりと肩が震えてしまった。
「あ、あの、やっぱり……」
急に足がすくんだ。後ろめたさに堪えられず、ここから逃げ出してしまいたい。
「こんなところまで来て、正気になんかならないでください」
強い力で腕を掴まれる。暁斗の潤んだ瞳に、胸が締め付けられた。
「それに、立ち止まってると、余計に目立ちますよ」
腕を掴んでいる手が僅かに震えている。俺だけが怖じ気づいているわけではないのだと、少し安堵した。固まっていた足が動き出す。ホテルの玄関を通過すると、途端に外界から守られたような気になれた。
部屋のパネルを見ながら、暁斗は適当に空いている部屋を選んだ。部屋のパネルの上には監視カメラがぶら下がり、カメラの奥で従業員が確認しているのだと思うと、少し気持ちがザワついてしまう。
「ここ、大丈夫なのか?」
「男同士でも大丈夫なはずです」
足早に廊下を通過して、部屋の番号を確認する。暁斗が扉を開いたので、促されるままに部屋に入った。扉が閉まるのと、ほぼ同時に暁斗に後頭部を押さえられて、キスされる。想定外の驚きと、待ちわびた体温に、身体中が震えてしまう。
「すみません」
何に対する謝罪なのだろう。暁斗の震える唇が、切なくて、堪らなくなる。奪合う唇が、絡まる舌が、心と体を発情させる。見つめ合う瞳は涙で潤み、上気した頬は赤く染まる。キスだけでこんなに興奮するなんて、俺たちは、おかしくなっているに違いなかった。
暁斗がコート越しに俺の臀部に触れた。
「お前のはさすがに挿れられないけど……指だけでいいなら、試してみるか?」
「いいんですか?」
暁斗は目を見開いて、それからカァッと顔を赤くした。俺の方が恥ずかしいはずなのに、暁斗の方が照れていることに、なんだか可笑しくなった。楽しい思い出つくり。暁斗の喜びそうなことを考えて、思い付いたのがコレというのも情けない話ではあるが。
「いっとくけど、たぶん俺はそっちの才能はない。試してみたけど違和感しかなかったんだ。だから、あんまり期待するなよ」
「え、自分で試したんですか……」
しまった、と思ったけれど今さら誤魔化しようもない。
「とにかく、準備するから」
自らのマフラーを抜き取って、逃げるようにトイレに駆け込んだ。不安げに「手伝いましょうか」と扉の向こうから声がかかって、早まったかもしれない、と沸々と後悔し始めていた。
物騒な裏路地を入っていけば、暁斗が急に立ち止まり、ホテルの看板を見上げた。その横顔が、男のもので、急にこわくなる。背後から追い抜かして行く人影に、びくりと肩が震えてしまった。
「あ、あの、やっぱり……」
急に足がすくんだ。後ろめたさに堪えられず、ここから逃げ出してしまいたい。
「こんなところまで来て、正気になんかならないでください」
強い力で腕を掴まれる。暁斗の潤んだ瞳に、胸が締め付けられた。
「それに、立ち止まってると、余計に目立ちますよ」
腕を掴んでいる手が僅かに震えている。俺だけが怖じ気づいているわけではないのだと、少し安堵した。固まっていた足が動き出す。ホテルの玄関を通過すると、途端に外界から守られたような気になれた。
部屋のパネルを見ながら、暁斗は適当に空いている部屋を選んだ。部屋のパネルの上には監視カメラがぶら下がり、カメラの奥で従業員が確認しているのだと思うと、少し気持ちがザワついてしまう。
「ここ、大丈夫なのか?」
「男同士でも大丈夫なはずです」
足早に廊下を通過して、部屋の番号を確認する。暁斗が扉を開いたので、促されるままに部屋に入った。扉が閉まるのと、ほぼ同時に暁斗に後頭部を押さえられて、キスされる。想定外の驚きと、待ちわびた体温に、身体中が震えてしまう。
「すみません」
何に対する謝罪なのだろう。暁斗の震える唇が、切なくて、堪らなくなる。奪合う唇が、絡まる舌が、心と体を発情させる。見つめ合う瞳は涙で潤み、上気した頬は赤く染まる。キスだけでこんなに興奮するなんて、俺たちは、おかしくなっているに違いなかった。
暁斗がコート越しに俺の臀部に触れた。
「お前のはさすがに挿れられないけど……指だけでいいなら、試してみるか?」
「いいんですか?」
暁斗は目を見開いて、それからカァッと顔を赤くした。俺の方が恥ずかしいはずなのに、暁斗の方が照れていることに、なんだか可笑しくなった。楽しい思い出つくり。暁斗の喜びそうなことを考えて、思い付いたのがコレというのも情けない話ではあるが。
「いっとくけど、たぶん俺はそっちの才能はない。試してみたけど違和感しかなかったんだ。だから、あんまり期待するなよ」
「え、自分で試したんですか……」
しまった、と思ったけれど今さら誤魔化しようもない。
「とにかく、準備するから」
自らのマフラーを抜き取って、逃げるようにトイレに駆け込んだ。不安げに「手伝いましょうか」と扉の向こうから声がかかって、早まったかもしれない、と沸々と後悔し始めていた。
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