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12月8日(土)
第31話
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水族館を出ると、ウインドウショッピングをしてみたり、プラネタリウムに立ち寄ったりしてみた。けれど、矢口はなんとなく浮かない顔のままで、俺から話しかけても上の空だった。
冬の空は夜も早い。街のイルミネーションが灯る頃には、矢口が予約してくれていた高層ビルにあるレストランの席についていた。
都会の夜景は、夜空の星々よりも眩しくて、地上を煌びやかに照らしていた。横文字が並ぶオシャレな料理。繊細で複雑な味。酒は控えるつもりだったけれど、せっかくなので白ワインを一杯だけ。
「これ美味しいな」
「ええ、そうですね」
矢口は心ここにあらずと言った感じで相づちを打った。食事もあまり進んでおらず、その表情は、やはり明るいとはいえなかった。
「矢口くん、あのさ……」
「あの……俺のこと、名前で呼んでもらえませんか」
少し目を伏せて、矢口はつぶやいた。
「あきと」
矢口暁斗は顔をあげて、薄く笑った。俺は今、会社の上司ではなく、彼の恋人としてここにいる。
「俺のことも、祐介でいいよ」
「祐介……さん」
「あはは、呼び捨てで構わないよ」
暁斗は「ゆうすけ」と、大事そうに言葉の響きを確認した。きっと、口に出さないだけで、心の中では何度も反芻してきたのだろう。たまに無意識に俺の名前を口にしていたことを思い出す。そう思うと、暁斗がいじらしく思えてくる。
「それで、やぐ……暁斗がしたかったデートって、これでよかったのか?」
「そうです。こういうのがしたかったんです。……でも、少し違っていたのかも」
暁斗は周囲を見渡して、困ったように笑う。きっと、若い女の子なら喜んでいただろうデートプラン。チラチラとこちらを見ていた女性たちが、暁斗と目が合うと色めき立った。暁斗が見目の良い男だからというだけではないのだろう。もしかすると、俺たちの関係を勘繰られているのかもしれない。
「今度は俺が行きたいところを考えてみるよ」
「次があるんですね」
「これでおしまいにするか?」
暁斗は、力なく笑った。
「あまり意地悪なことばかり、言わないでください」
冬の空は夜も早い。街のイルミネーションが灯る頃には、矢口が予約してくれていた高層ビルにあるレストランの席についていた。
都会の夜景は、夜空の星々よりも眩しくて、地上を煌びやかに照らしていた。横文字が並ぶオシャレな料理。繊細で複雑な味。酒は控えるつもりだったけれど、せっかくなので白ワインを一杯だけ。
「これ美味しいな」
「ええ、そうですね」
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「矢口くん、あのさ……」
「あの……俺のこと、名前で呼んでもらえませんか」
少し目を伏せて、矢口はつぶやいた。
「あきと」
矢口暁斗は顔をあげて、薄く笑った。俺は今、会社の上司ではなく、彼の恋人としてここにいる。
「俺のことも、祐介でいいよ」
「祐介……さん」
「あはは、呼び捨てで構わないよ」
暁斗は「ゆうすけ」と、大事そうに言葉の響きを確認した。きっと、口に出さないだけで、心の中では何度も反芻してきたのだろう。たまに無意識に俺の名前を口にしていたことを思い出す。そう思うと、暁斗がいじらしく思えてくる。
「それで、やぐ……暁斗がしたかったデートって、これでよかったのか?」
「そうです。こういうのがしたかったんです。……でも、少し違っていたのかも」
暁斗は周囲を見渡して、困ったように笑う。きっと、若い女の子なら喜んでいただろうデートプラン。チラチラとこちらを見ていた女性たちが、暁斗と目が合うと色めき立った。暁斗が見目の良い男だからというだけではないのだろう。もしかすると、俺たちの関係を勘繰られているのかもしれない。
「今度は俺が行きたいところを考えてみるよ」
「次があるんですね」
「これでおしまいにするか?」
暁斗は、力なく笑った。
「あまり意地悪なことばかり、言わないでください」
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