そのエラーはハンドリングできません

nao@そのエラー完結

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12月11日(火)

第38話

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 時刻は八時を回ったところだった。明日からの出張に向けて、ノートパソコンの施錠を外して、周辺機器を片付ける。まとめた資料の束も、ビジネスバッグに詰めていく。

「お疲れ様です」
「あ、ああ、お疲れ様」

 隣に立つ男が、照れたように微笑んで、ぺこりと頭を下げた。あまり挨拶をしない佐々木にしては珍しい。

「佐々木さん、どうしたんですかね」

 フロアに人の気配がなくなると、矢口に不思議そうに訊ねられた。

「今朝も少し話かけられたんですよ。佐々木さんって俺のこと、うざがってるのかと思ってたんですが……」

 なるほど。矢口は矢口なりに気を使って、佐々木に相談することを遠慮していたのかもしれない。

「佐々木くんは、矢口くんのことをうざいなんて思ってないよ」
「どうしてそんなことがいえるんですか?」
「そうだな。上司の勘ってやつかな?」

 疑わしそうに眉を寄せられる。相談内容を他のメンバーに話すのはタブーだ。「矢口に頼られたい」という佐々木の気持ちを伝えれば、矢口も対応を変えるだろうが、それは先輩の立場である彼の本意ではないだろう。佐々木の方から、なんとか歩み寄らせてやりたい。

 身支度を終えて、壁に貼り付いているホワイトボードに向かう。「瀬川」の札の横に「神戸~12/14 出社予定」と外出予定をマーカーで走り書きする。と、書き終わった右手を後ろから掴まれた。

「明日から、会えないんですね」

 暁斗が肩口に額を乗せて、甘えるような声を出した。柑橘系の匂いに、腹の奥がきゅっと締まる。コートを捲って、左手が尻を撫でてくるものだから、驚いて悪戯な手を払い除けた。

「出張のことは、知っていただろ?」
「知っていましたけど、なんだか、ちょっと……堪らなくなってしまって……」

 左手が腰に回される。意味深な手つきで太腿を撫でて、股間に指をかけられる。

「ここじゃダメだよ……」
「それ、昨日トイレで煽りまくってた人が言いますか?」

 左手を掴むが上手く剥がせない。右手に持っていたマーカーが手から滑り落ちた。ホワイトボードに手を着くと、暁斗の右手が重なり、押さえつけられる。

「あ、あきと……」

 股間を優しく愛撫していた左手が、しごくような動きに変わる。前屈みになって、手から逃げようとしようにも、背後の男の体に密着されて、耳元で浅い息遣いを感じると、理性よりも快楽に負けてしまいそうになる。フロアでこんなことをしている背徳感と、誰かに見られてしまったというスリルに、ゾクゾクと背筋が粟立つようで。
 ファスナーが下げられて、指が入り込んでくれば、びくりと腰が引けた。下着の上から、熱く滾ったそれを指でなぞられた。内股が小刻みに震え出す。
 耳元で浅い息を吐いていた唇が、耳たぶを甘く噛んでくる。

「もう少しだけ」

 熱っぽい囁きに、腰が蕩けるように甘く疼いた。漏れそうになる吐息を唇を噛んでやり過ごして、男を押し退ける。俺はこんなにも快楽に流されやすかっただろうか。

「出張から帰ってきたら、な……」
「待ってますよ」

 暁斗が喉の奥で、くすりと笑った。


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